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大攻勢を仕掛けるグローバルファウンドリーズ

新しく出来たファウンドリ会社であるグローバルファウンドリーズが攻勢を強めて来た。同社の技術担当ディレクタのジョン・ペレリン氏は記者発表をこの7月に行っている。その内容は以下に述べるように驚くべきものだ。内容はWebに詳しい。

先ず22 nmノードのLSI開発を既に進めている。ハイライトはeSiCと略称するEmbedded Silicon Carbideを使って結晶にストレスを印加すること。もうひとつはTSV、即ち結線のためにシリコンに縦穴を開ける技術を使う。但し、低誘電率を実現するエアギャップの技術は使用しない方針とのことだ。eSiCはシリコンウェーハに炭素原子Cを濃くドープして作る。この炭素原子はSubstitution即ちシリコン原子を置換するように配置されるべくプロセス条件を定める。周期律表では炭素は6番でシリコンはその下の14番であり炭素原子は一回り小さいので結晶が縮む方向にストレスが発生し22 nm n-FETの電子移動度を向上させるものだ。炭素ドープに際して5族の燐原子Pを同時に使用するのがノウハウであることも明かしている。こうすると電子移動度は25%上がる。p-FETは良く知られているSiGe技術を使いストレスを加えてホール移動度を上げる。

また、TSVはSOI層に作る高速DRAMチップとロジックチップを結線するのに用いる。エアギャップは使用しないがlow-kにするために誘電体には、あるポーラスな材料を用いる。その結果、誘電率は前の技術の3.0から2.4に下がった。ちなみに古典的なSiO2では誘電率は3.9であることを考えると相当の差があることがわかる。こうして作製するSOI eDRAMはより高速な回路になる、としている。製品の設計が完了するとMPUとGPU即ちグラフィックプロッセッサの2チップを縦に積んで構成するSystem-In-Package (SIP) を目指しているように見える。これらの斬新な技術はIBMが基礎を作りアプライドマテリアルズ社(AMAT)も開発に加わり装置を完成させた。このようにペレリン氏はいろいろと情報を述べており相当な自信を示している。

一方、グローバルファウンドリーズは300mmウェーハ向けのファブの建設を米本土で始めた。Fab 2と呼びその場所はニューヨーク州で人口10万人足らずの州都オールバニの24マイル北でMaltaという村の近辺である。敷地は230エーカーの広さで換算すれば90万平方メートル、28万坪になる。雇用は正社員1,400人、周辺産業の雇用も加えると5,000人にも及ぶらしい。米本土でこれだけ大きなFabを新設する真剣な計画だ。そして2012年後半に量産開始を目指している。

この会社は注目企業の一つといえるだろう。会社はどのような経緯で発足したのか。ホームページによるとAMDと Advanced Technology Investment Company (ATIC)との合弁会社である。ATICは中東のアブダビに本拠地を有するオイルマネーの会社でアブダビ政府が100%出資しており世界のハイテク事業に投資するのがその業務だ。両社は昨年の10月に交渉を始め今年の3月に正式に発足している。AMDの狙いは、現在32 nmでインテルに遅れているので22 nmノードの時代にインテルに追いつくことである、とペレリン氏は明言している。

Fab 2幹部のアーマー氏はLSIビジネスが米国からアジアにシフトして行くのを長い間見て来たが今こそ流れを変えたい、としている。Malta村の人件費はもう一つの競争会社TSMCより大分高いので人件費では競争に負ける。よってTSMCに勝つにはイノベーションしかない。だからFab 2にも新しいアイデアを入れる必要がある。一つはゼロフットプリント保管だ。これは工程途中のウェーハ保管庫を装置の上に構築して使うもので高価なFabの床面積は使用せずにすませる、即ちゼロにする方法だ。

グローバルファウンドリーズはこのようにしてインテルとTSMCをライバルとしてはっきりと意識している。今わかっている差別化ポリシーのひとつは顧客政策である。顧客は世界ランクのトップ20社しか相手にしない、というものだ。そうすれば注文は大型化し注文ロットサイズも大型になるはずだ。個々の小さいロットを大量に流すのはあまり生産性に寄与しない。

こうして見て来るとグローバルファウンドリーズは他社の力をうまく借りている。先ずIBMとAMATにプロセス開発と装置の協力を得ている。この2社はプロセス開発と装置に於いて世界でもトップを走る。そして大事な資金はオイルマネーのアラブ首長国連邦のアブダビ首長国の協力を得た。アブダビ側から見れば有限でいつかなくなる石油の後をにらんでの施策である。

そして、今日本の状況を考えると上のシナリオは日本で出来ない話はほとんどない。日本には工業団地が余っている。人材も多くノウハウもある。仮に人材が足りなければお金を使って世界からスカウトすればよい。お金はないが外交の力でオイルマネーをお願いする点は同じだ。問題はやる気があるリーダーがいない、そして日本の偉い人は誰もリスクを負わない、責任をとりたくないのだ。偉い人は決断するスピードも大変に遅い。筆者の体験では仮に日本の若い青年実業家が日本でグローバルファウンドリーズと似たような構想を出して各方面にプレゼンしたらネガティブな意見だけが20-30は直ぐに出て来るだろう、と思われる。そして挙句の果てにつぶしてしまう。このネガティブなメンタリティを抑えないと日本にグローバルファウンドリーズのような会社を作ることはできない。
  

エイデム 代表取締役 大和田 敦之

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