米国半導体規制&流動的な半導体関税に対する米国内外の反応&影響関連
AI半導体に続いて電子設計自動化(EDA)ソフトウェアの中国に対する輸出規制の強化が米国政府から課されて、米欧はじめ半導体業界に加わる波乱である。さらに半導体関税の動向に注視せざるを得ないということで、米国内外のさまざまな反応および影響が見られている。米国と中国の貿易交渉は、首脳会談の必要が打開に向けて迫られるなか、主要半導体メーカーから米国政府に対して半導体関税をむしろ米国のハイテク・リーダーシップを損なうものといった警告が発せられ、合わせて、中国市場におけるビジネス機会の損失が訴えられている。米国政府のエスカレートするスタンスに対して、中国とEUが接近を図る動きが見られるなど、現時点の関連を取り上げている。
≪経済安全保障の確保に向けて≫
関税の半導体業界への影響について、論評が見られている。
◇The effects of tariffs on the semiconductor industry (5月27日付け McKinsey & Company)
→地政学的緊張とエスカレートする関税-一部は100%を超える-がグローバル半導体サプライチェーンを再構築している。各国がチップの安全性を優先する中、業界のプレーヤーはコスト上昇に直面し、競争力を維持するために関税を吸収するか消費者に転嫁するかを検討しなければならない。
世界各国・地域、そして主要半導体メーカーの動き&取り組みを、以下分けて見ていく。
[台湾]
◇Lai calls for chip supply chain unity amid dumping (5月24日付け Taipei Times)
→1)レジリエンス:台湾、日本、米国および欧州の協力がサプライチェーンの中断を防ぎ、世界経済の安全を保証する、と日本の特使が述べた。
2)台湾のWilliam Lai総統は、中国による半導体ダンピングに対抗するためのグローバルな協力を促し、イノベーションとサプライチェーンを危険にさらすと警告した。同氏は、台湾のリーダーシップを強調し、より強い国際関係、人材育成、および弾力的な技術パートナーシップを後押ししている。
TSMCの米国政府に対する警告である。
◇TSMC warns US of consequences of chip tariffs (5月26日付け Taipei Times)
→1)透明性を求めて:ワシントンは'既存の半導体投資'に不確実性をもたらす措置を採用すべきではない、とTSMCが米国でのUS$1650 billionに言及している。
2)TSMCが、台湾半導体への関税提案は需要を削り、Arizonaの投資計画を混乱させ、米国のハイテクleadershipを損なう恐れがあると米国に警告した。該チップメーカーは、$1650 billionのArizona半導体拡張を守るために関税免除を強く求めている。
[中国]
◇Chinese tech giants reveal how they’re dealing with U.S. chip curbs to stay in the AI race (5月26日付け CNBC)
→1)*中国のハイテク大手であるTencentとBaiduは、米国が主要半導体に対する規制を強化する中でも、世界的なAI競争を維持する方法を明らかにした。
*その方法とは、チップの備蓄、AIモデルの効率化、さらには国産半導体の使用などである。
*ワシントンは、中国がAI用にNvidiaとAMDのチップを入手することを制限し続けている。
2)テンセントとバイドゥは、GPUsの備蓄、ソフトウェアの最適化、AIモデルの小型化、および国産半導体の採用によって、米国のチップ輸出規制に対抗している。両社とも、チップへのアクセスが制限されているにもかかわらずAI開発を維持する鍵として、効率性と革新性を強調している。
中国とEUの間の動きである。
◇China may relax rare earth export curbs for some chip companies―Report: China may ease rare earth export controls for chipmakers (5月28日付け Reuters)
→中国は、中国と欧州の半導体企業およびそのサプライチェーンにある他の企業に対して、レアアースの輸出規制を緩和する可能性があると、国営メディアが水曜28日に伝えた。
中国は4月、7種類のレアアースと関連製品を輸出規制リストに掲載し、海外顧客の国籍に関係なく、すべての輸出業者にライセンス申請を義務付けている。
◇Chinese, EU semiconductor firms discuss supply-chain security amid ‘bullying’ (5月28日付け South China Morning Post)
→1)40社以上が北京でサプライチェーンの弾力性を高める政府主催の会合に参加、レアアースについて議論
2)中国および欧州の半導体リーダーが、米国の技術抑制がエスカレートする中、協力およびsupply-chainの安定性を高めるべく北京で会合した。40社を超える企業が政府当局に加わり、貿易圧力に対抗、レアアース輸出を合理化、そしてAIチップ開発を強化していく。
[東南アジア]
◇東南ア、トランプ関税で対中輸入2割増 米へ駆け込み輸出で部品調達 (5月26日付け 日経 電子版 05:00)
→トランプ関税の影響をうけ、東南アジアの中国からの輸入が拡大している。4月は米国への出荷が落ち込んだ中国製のパソコンやスマートフォンが流入した。東南アジアでは米相互関税の一部停止中に駆け込みで対米輸出を伸ばす動きがあり、それに合わせて中国からの部品調達が増えた。中国税関総署によると、4月の東南アジア諸国連合(ASEAN)向け輸出はドル建てで前年同月比21%増加した。
[米国]
主要半導体メーカーからの警告が、以下の通りである。
◇Chip Industry Warns U.S. Tariffs, Bans Could Halt Growth (5月27日付け EE Times)
→1)米国で新しい半導体工場を建設している大手チップメーカー各社が、ドナルド・トランプ米大統領政権に対し、国内産業の復権を促し、米国のハイテク産業のリーダーシップを弱める可能性のある建設急増を止める可能性のある新たな関税の賦課を警告した。
TSMC、IntelおよびMicronなどのチップメーカーは5月、チップや半導体製造装置(SME)およびその派生製品の輸入が国家安全保障に与える影響に関する米商務省の調査に対し、公式に回答した。米国は1962年通商拡大法232条に基づき調査を開始した。
2)大手chipメーカー、TSMC、IntelおよびMicronが、輸入chip製造装置への関税提案は米国のfabプロジェクトを頓挫させ、コストを引き上げ、そして米国の半導体目標を損なう恐れがあるとTrump政権に警告、代わりに免除と安定した通商政策を求めている。
◇Tesla Warns Trump to Tread Carefully on Chip Tariffs (5月27日付け Yahoo! Tech)
→Teslaは、Trump政権に対し、急ぎすぎた半導体関税を回避するよう促しており、グローバルサプライチェーンを混乱させ、AIイノベーションを遅らせる恐れがあると警告している。Teslaは書簡の中で、積み重ねられた関税や政策の不確実性よりも、業界協議や成長促進戦略を強調している。
◇U.S. Chip Tariffs Self-Inflicted Economic Damage―Assessing the impact of tariffs on American economy and tech leadership. (5月28日付け EE Times)
→米国の輸入半導体に対する関税案は、経済成長を損ない、価格を上昇させ、そして技術のリーダーシップを弱める可能性があると業界リーダーが警告している。広範で破壊的な貿易制限ではなく、的を絞った戦略的な代替案を求めている。
Nvidiaは、特にJensen Huang CEOが中国の台頭を次のように警告している。
◇Nvidia CEO Warns That Chinese AI Rivals Are Now ‘Formidable’―Huang: China is evolving with US companies barred (5月28日付け MSN/Bloomberg)
→NvidiaのJensen Huang CEOは、中国のAI技術、特にファーウェイ・テクノロジーズが、米国のサプライヤーの撤退によって空いた穴を埋めるために、「かなり手ごわい」競争相手になっていると警告している。「中国市場の重要性を過小評価することはできない。」とHuang氏。「ここは世界最大のAI研究者人口の本拠地なのだ。」
Nvidiaの中国向けAI半導体である。
◇NVIDIAの中国向け廉価AI半導体、価格3割安 ロイター報道 (5月28日付け 日経 電子版 04:15)
→ロイター通信は27日までに米エヌビディアが中国向けに廉価版のAI半導体を発売する計画だと報じた。4月に米政府が輸出規制の対象に加えた「H20」の代替品となる。米規制に合わせて性能を落とし、従来の中国向けの主力品と比べ価格を3割程度安くした。6月にも量産を始める予定だという。
[インド]
iPhoneの生産状況について、以下の状況である。
◇India’s iPhone exports to the U.S. soared an estimated 76%. But Trump, Beijing won’t make further growth easy (5月27日付け CNBC)
→1)*現在Omdiaの傘下にあるCanalysのデータによると、4月にインドから出荷された米国のiPhoneは約76%増の300万台に達した。
*同期間の中国からの出荷台数が前年比約76%減の90万台にとどまったのとは対照的だ。
2)中国からの輸入品に対する関税に対抗するため、アップルが「メイド・イン・インディア」戦略を加速させているため、インドから米国へのiPhone出荷台数は4月に76%急増した。アナリストは、このシフトはトランプと北京の両方から反発を受けるリスクがあると警告している。
◇iPhoneの米国向け出荷、インドが中国抜く CNBC報道 (5月28日付け 日経 電子版 05:08)
→米アップルが米国で販売するスマートフォン「iPhone」について、インドからの出荷分が3月に中国を上回ったことが分かった。米CNBCが報じた。アップルはトランプ米政権の対中追加関税を避けるため、中国からインドへと急ピッチで組み立てをシフトしている。
CNBCが27日、シンガポールの調査会社カナリスの試算として報じた。
[欧州]
ASMLが、中国市場での打撃を訴えている。
◇China and tariffs have wiped off $130 billion from critical chip firm ASML since peak value (5月28日付け CNBC)
→1)*ASMLは1年足らずで$130 billion以上の価値を失った。
*多くのチップ企業と同様、同社も中国への輸出規制と米国の関税不安によって打撃を受けている。
*多くのアナリストがASMLに強気なのは、半導体のサプライチェーンの重要な部分を支配しているからだ。
2)ASMLは、米国の対中輸出規制と関税の不確実性の中で、$130 billion以上の価値を失った。ASMLは次世代チップツールの開発を進めているため、市場の変動や中国での販売不振にもかかわらず、アナリストは強気の見方を崩しておらず、17%の上昇を予想している。
[中東]
米国との間でAI連携が打ち上げられたばかりである。
◇The U.S.′ AI love affair with the UAE isn’t just about access - it’s about dominance (5月28日付け CNBC)
→1)*米国は現在、世界最先端の半導体チップを製造しており、UAEは巨大なAIデータセンターに電力を供給する安価なエネルギーを豊富に有している。
*両国のAI提携は、すでにNvidia、マイクロソフト、OpenAI、そしてUAEのG42、MubadalaおよびMGXといった企業の間で、数千億ドル規模の投資が行われている。
*このパートナーシップは、世界的なAI競争、国家安全保障、地政学的パワー、および中国との競争にとって大きな意味を持つ。
2)米国とUAEはAIに関して緊密に連携し、米国の技術リーダーシップと湾岸のエネルギーを活用して、グローバルなAIエコシステムを構築しようとしている。$500BのスターゲイトAIキャンパスを含む大規模な投資は、中国に対抗し、新興市場をリードすることを目的としている。
半導体電子設計自動化(EDA)ソフトウェアを巡る動きが、以下の通りである。
◇Chip software stocks sink on report Trump ordered halt to China sales (5月28日付け CNBC)
→1)*ケイデンスとシノプシスは、米商務省の一部門が中国の組織への販売停止を指示したとの『フィナンシャル・タイムズ』紙の報道を受け、株価を下げた。
*同連邦機関は今月初め、中国のファーウェイ製AIチップの使用について米企業に警告を発していた。
2)ホワイトハウスが中国の顧客への販売停止を命じたとの報道を受けて、ケイデンス社とシノプシス社の株価は急落した。この指令は、より広範な米国のチップ輸出取り締まりの一環であり、投資家の不安に火をつけ、中国から鋭い批判を浴びた。
さらに具体的な中国への輸出規制強化が行われている。
◇U.S. Restricts EDA Software Sales to China―The directive requires EDA software firms, including Cadence, Synopsys, and Siemens EDA, to seek licenses for all sales to China. ―Curbs on design software escalate tech war and hit western firms. (5月30日付け EE Times)
→米商務省は、米国および欧州の主要なEDAソフトウェア・サプライヤーに対し、輸出許可を得ずに中国への販売を停止するよう指示したと報じられている。この動きは、中国の技術進歩、特に先端半導体の開発を阻害しようとするワシントンの取り組みが大幅にエスカレートしたことを意味する。
◇Chip designers latest casualties in US-China trade war―US export controls target chip design software to China―Cadence Systems, Synopsys, and Siemens among those subject to export licenses targeting Middle Kingdom (5月30日付け The Register (UK))
→米国は、国家安全保障上の懸念を理由に、中国向けEDAソフトウェアに新たな輸出規制を課した。Siemens, Cadence Design SystemsおよびSynopsysが影響を受け、販売には米国の輸出ライセンスが必要となる。該各社はこのニュースに対処し、次の対策を練っている。一方、ファーウェイやX-Epicなどの中国企業は独自のEDAツールを開発していると報じられている。
◇US imposes new rules to curb semiconductor design software sales to China (5月30日付け TechCrunch)
→トランプ政権は、中国の高度なAIチップの製造・使用能力をさらに損なおうと、チップ設計ソフトウェアに新たな輸出規制を課したようだ。シーメンスEDA、ケイデンス・デザイン・システムズ、およびシノプシスの3社はいずれも、中国向けEDAソフトウェアの新たな輸出規制に関する通知を米商務省から受け取ったことを確認した。
米国政府との世界的な分断はじめさまざまな動きが、日々刻刻あらわれてきている現時点である。特に半導体の視点で、引き続きの注目である。
激動の世界の概況について、以下日々の政治経済の動きの記事からの抽出であり、発信日で示している。
□5月25日(日)
トランプ政権の関税を巡る動きが以下続いていく。
◇ASEAN、トランプ関税対策で協調探る 26日から首脳会議 (日経 電子版 20:22)
→ASEANは26日からマレーシアで首脳会議を開く。各国はトランプ米政権による相互関税で高税率を課されており、経済への悪影響を抑える協調策などを議題とする見通しだ。27日は中東6カ国で構成する湾岸協力会議(GCC)と中国も参加し、地域を超えた経済連携を話し合う。
□5月27日(火)
EUとは、関税発動時期が7月9日まで先延ばしされている。
◇EU countries push for swift trade deal with Donald Trump―EU accelerates trade talks with US to avoid tariff war (Financial Times)
→欧州連合(EU)は貿易戦争を防ぐため、米国との貿易交渉を加速させることで合意した。この決定は、ドナルド・トランプ大統領とウルスラ・フォン・デア・ライエン欧州委員会委員長との電話会談を受けたもので、トランプ大統領は交渉時間を確保するため、EUに50%の関税を課す期限を7月9日まで延長することで合意した。
□5月28日(水)
Memorial Dayがあって4日の取引、関税の動向に敏感に反応、インフレ懸念後退など上げが優勢な、今週の米国株式市場である。
◇NY株が大幅反発、740ドル高 EUへの関税発動延期で (日経 電子版 06:06)
→27日の米株式市場でダウ工業株30種平均は5営業日ぶりに反発し、3連休前の前週末23日に比べ740ドル58セント(1.78%)高の4万2343ドル65セントで終えた。トランプ米大統領がEUに対する追加関税の発動時期の延期を表明し、貿易摩擦への過度な懸念が後退した。米経済指標の改善も株買いを後押しした。
◇Trump’s Global Tariffs Deemed Illegal, Blocked by Trade Court―Trade court rules reciprocal tariffs unconstitutional (Bloomberg)
→米国の通商裁判所は、ドナルド・トランプ大統領が国際緊急経済権限法(International Emergency Economic Powers Act)を用いて世界規模の関税を課したことは違憲であるとの判決を下した。この判決は政権側が上訴する予定だが、通商交渉を混乱に陥れ、米国の通商政策を再編成する可能性がある。株式先物は市場前取引で上昇したが、その後上昇分を戻した。
□5月29日(木)
◇NYダウ反落、244ドル安 NVIDIA決算前に持ち高調整 (日経 電子版 06:13)
→28日の米株式市場でダウ工業株30種平均は反落し、前日比244ドル95セント(0.57%)安の4万2098ドル70セントで終えた。28日の取引終了後にエヌビディアが2025年2〜4月期決算を発表するのを控えて持ち高調整の売りが主力株に出た。米連邦準備理事会(FRB)の利下げが目先は見込みにくいとの観測も株価の重荷だった。
エヌビディアの決算では、AI向け半導体の需要や中国への輸出規制の影響に市場の関心が集まっている。
◇トランプ関税に差し止め命令 米国際貿易裁判所「大統領権限を逸脱」 (日経 電子版 10:53)
→トランプ関税は違憲だとして米国内の中小企業などが起こした訴訟で、米国際貿易裁判所は28日、トランプ関税の差し止めを命じた。法律に反しているとして、10日以内に関税を停止するための行政命令を出すようトランプ米政権に命じた。
□5月30日(金)
一転した裁判判断である。
◇トランプ関税の差し止め「一時停止」 米控訴裁が判断 (日経 電子版 05:13)
→米国際貿易裁判所がトランプ関税の大部分を違法とした一審判決をめぐって、二審にあたる米連邦巡回区控訴裁判所は29日、判決を一時的に停止することを命じた。関税の差し止め命令も当面は発効しないことになる。米国際貿易裁は28日、トランプ政権による相互関税とカナダとメキシコ、中国への追加関税を無効と判断し、差し止め命令を出した。10日以内に徴収を止めるよう命じていた。
◇NYダウ反発、117ドル高 NVIDIA株3%高が支え (日経 電子版 06:57)
→29日の米株式市場でダウ工業株30種平均は反発し、前日比117ドル03セント(0.27%)高の4万2215ドル73セントで終えた。前日夕に四半期決算を発表したエヌビディアが上昇し、相場を支えた。
米裁判所が28日にトランプ政権が導入した関税の一部差し止めを命じ、米関税引き上げへの警戒が後退したとの見方があった。一方、関税政策への不透明感がかえって強まったとの声もあり、上値は重かった。
米中の協議が行き詰まっている。
◇US-China tariff talks 'a bit stalled,' needs Trump, Xi input, Bessent says―Bessent says US-China talks have "stalled" (Reuters)
→米中貿易交渉は数週間にわたる協議の末に行き詰まり、Scott Bessent財務長官は行き詰まりを打開するため、トランプ大統領と習主席の直接対話を呼びかけた。協議はこれまで90日間の関税休戦に至っていたが、米国の技術制限や中国のレアアース政策をめぐって緊張が続いている。ベッセント氏は、今後数週間のうちにさらなる話し合いが行われることを期待し、両首脳は行き詰まりを解消するのに役立つ良好な協力関係にあると信じていると述べた。
□5月31日(土)
◇NYダウ小幅続伸、54ドル高 インフレ懸念の後退が支え (日経 電子版 06:50)
→30日の米株式市場でダウ工業株30種平均は続伸し、前日比54ドル34セント(0.12%)高の4万2270ドル07セントで終えた。同日発表の物価指標を受けてインフレ懸念が後退し、主力株に買いが入った。半面、米中の貿易を巡る緊張感は相場の重荷となり、ダウ平均は300ドルあまり下げる場面があった。
≪市場実態PickUp≫
【Nvidia関連】
AI半導体規制を巡る米国政府とNvidiaのCEO、Jensen Huang氏それぞれの動き、主張が伝えられるなか、2026年度第1四半期の同社の業績発表が行われている。波乱要因ありながら、過去最高の業績、と以下それぞれにあらわされている。
◇Nvidia working with data center partners to build 800V HVDC power systems―Nvidia leads collaboration on 800V HVDC for data centers―New architecture designed to support 1MW+ racks in AI data centers (5月23日付け DatacenterDynamics)
→エヌビディアは、STマイクロエレクトロニクス、インフィニオン・テクノロジーズおよびTIなどの企業と共同で、AIデータセンター向けの800ボルト高電圧直流電源システムを開発している。このシステムは、NvidiaのKyberラック・スケールシステムとともに2027年に本格的な生産が開始される予定で、配電を集中化し、GPUレベルで交流を直流に変換することで、1メガワットを超えるラックをサポートすることを目指している。
◇Nvidia RTX 5090 prototype surfaces with four 16-pin power connectors and additional VRMs―Nvidia's RTX 5090 prototype shows 4 16-pin power connectors plus VRMs ―Once a 2,400W GPU in the making? (5月26日付け Tom's Hardware)
→NvidiaのRTX 5090のプロトタイプとされるものが、Twitter/Xのユーザー、@yuuki_ansの提供により、4つの16ピン電源コネクタを特徴とするものとして公開された。おそらくこの特定のデザインは、Nvidiaまたはそのボードパートナーの1つがテスト目的で使用した初期のエンジニアリングサンプルだと思われる。写真に写っているユニットは半分に切断され破壊されているが、Nvidiaが最終的なデザインになる前にどのような作業を行っていたかを知ることができる。
◇Nvidia to boost AI server racks to megawatt scale, increasing power delivery by five times or more―Nvidia is working on new power system for AI server racks―The 800V HVDC can deliver 1 MW to a server rack. (5月28日付け Tom's Hardware)
→AIサーバーラックの電力需要の増大は、既存の54V DCシステムに課題を突きつけている。Nvidiaの800V HVDCアーキテクチャは、2027年までに準備が整うと予想され、より高い電力レベルをより効率的に処理し、銅の使用量を大幅に削減し、ラックスペースを解放することにより、データセンターの電気回路の過負荷のリスクを低減することを約束する。
◇Nvidia posts record $44 billion revenue, H20 export ban bites as gaming rises―Raking in more cash. (5月28日付け Tom's Hardware)
→エヌビディアは水曜28日、2026年度第1四半期の決算を発表し、売上高は$44.062 billionと過去最高の四半期となった。同社の売上高は、前四半期比でも前年同期比でもほぼ全面的に増加した。同社はBlackwell GPUsを増産し、ゲームとデータセンターの両方で売上高記録を更新した。しかし、最近の中国向けH20 GPUsの出荷禁止により、Nvidiaのマージンはかなり悪化した。
◇Nvidia beats on earnings and revenue as data center sales jump 73% (5月28日付け CNBC)
→1)*エヌビディアは水曜28日、同社の好況のデータセンター事業が前年比73%以上の成長を記録したことから、予想を上回る利益と収益を計上した。
*株価は取引時間を延長して約6%上昇した。
*全体の売上高は四半期中に69%増加し、AIチップと関連部品を含む同社のデータセンター部門の売上高は73%増加した。
2)エヌビディアは業績予想を打ち砕き、売上高が69%増の$26 billionに急増、データセンターAIチップ事業の73%増がその原動力となった。中国の輸出規制にもかかわらず、世界のAI需要が記録的な業績を牽引したため、純利益は26%急増した。
◇Nvidia Q1 up 69% y-o-y―Nvidia posts record quarterly revenue of $44.1B (5月29日付け Electronics Weekly (UK))
→1)Nvidiaの2025年4月27日に終了する四半期(Nvidiaの2026年度第1四半期)の売上高は$44.1 billionで、前四半期比12%増、前年同期比69%増となった。
2)中国からの輸出規制やライバルからの圧力の高まりをはねのけ、Nvidiaは$44.1 billionという過去最高の売上高を記録、前期比12%増、前年同期比69%増となった。同社がブラックウェル・チップに傾注しているため、データセンター部門とゲーム部門の記録が含まれている。
◇Nvidia once again beats Wall Street expectations (5月29日付け New Electronics (UK))
→エヌビディアは再びウォール街の予想を上回り、最新の4月締め四半期売上げは前年比69%増の$44.1bnに達した。
◇NVIDIA、2〜4月3割増益止まり 2年ぶり最高益更新できず (5月29日付け 日経 電子版 06:09)
→米半導体大手エヌビディアが28日発表した2025年2月〜4月期決算は売上高が前年同期比69%増の$44.062 billion(約6兆3900億円)、純利益は26%増の$18.775 billionだった。米政府の対中輸出規制に関連する在庫引当金などの費用を計上し、8四半期ぶりに過去最高益を更新できなかった。
売上高、純利益ともに市場予想を上回った。
◇Nvidia ‘considering’ new AI chip for China but rules out Hopper series due to US export ban (5月29日付け South China Morning Post)
→1)Nvidiaが4月中旬にH20の輸出禁止を明らかにした後、Huang CEOは同社が中国市場を重視していることを繰り返し示唆している。
2)Nvidiaは中国向けの新しいAIチップを検討しているが、米国の輸出禁止でH20製品ラインが停滞しているため、計画は確定していない。ジェンセン・フアンCEOは中国のAIの可能性を強調し、アナリストは代替の可能性から$3 billionの反発を予測している。
◇Nvidia results spark global chip rally (5月30日付け CNBC)
→1)*好決算を発表したエヌビディアの株価は急騰し、世界の半導体株の上昇に火をつけた。
*エヌビディアは投資家から、より広い半導体業界と人工知能関連銘柄の木鐸とみなされてきた。
*SKハイニックスやASMLなどの銘柄も高値で取引されている。
2)エヌビディアの株価は、米国の輸出規制により$4.5 billionの売れないチップを計上したにもかかわらず、業績予想を上回り6%上昇した。この好業績は半導体株の世界的な上昇に火をつけ、AI需要に対する投資家の不安を和らげた。
◇Nvidia reveals more China risks, but CEO lauds Trump (5月29日付け Taipei Times)
→エヌビディアは売上高69%増を記録したが、米中技術摩擦によるリスクの高まりを警告。Jensen Huang CEOは新たな輸出規制を批判し、オープンソースAIコラボレーションの戦略的重要性を強調した。挫折にもかかわらず、エヌビディアは依然として力強い売上げ伸長を予測している。
【TSMC関連】
初の欧州デザインセンターが、今年後半にミュンヘンに開設の運びである。
ASMLのHigh-NA EUV装置に対するスタンスも、以下あらわされている。
◇TSMC Bets on Unorthodox Optical Tech ―MicroLED-based interconnects could fuel energy-efficient AI data centers (5月26日付け IEEE Spectrum)
→1)TSMCはAvicenaと提携し、AIデータセンター向けにmicroLEDベースの光インターコネクトを開発、銅リンクに取って代わる。アビセナのレーザーレスLightBundle技術は、実績のあるLEDとイメージングコンポーネントを使用し、スケーラブルで低コスト、エネルギー効率の高いデータ転送を約束する。
2)TSMCはSunnyvale startup、Avicenaと提携し、AIデータセンター向けにmicroLEDベースの光インターコネクトを製造する。アビセナのレーザーレスLightBundle技術は、イメージングファイバーと青色microLEDsを使用し、スケーラブルな高速データリンクを実現する。
◇TSMC to Open EU Design Center in Munich in Q3―TSMC to open chip design center in Munich, its 10th―TSMC to unveil its European Design Center in Munich later this year, boosting EU chip design capabilities. (5月27日付け EE Times)
→1)TSMCはオランダのアムステルダムで開催された2025年欧州技術シンポジウムで、欧州の顧客をサポートするため、2025年第3四半期に開設予定の欧州デザインセンターをミュンヘンに設立すると発表した。同社によると、このデザインセンターは10カ所目となり、台湾、米国、カナダ、中国本土および日本にまたがるデザインセンターのネットワークに加わる。TSMCによると、ドレスデンではなくミュンヘンを選んだのは、ドレスデンはN16およびN28ファミリーのファブを建設している場所であり、ミュンヘンが欧州の顧客に近いからだという。
2)TSMCはドイツ・ミュンヘンに初の欧州デザインセンターを設立し、欧州の顧客をサポートするとともに、車載および産業用アプリケーション、AI、通信およびモノのインターネット(IoT)向けの高性能でエネルギー効率の高いチップに注力する。この施設はTSMCにとって10番目の施設となり、RRAMとMRAMの開発にも取り組む。
3)TSMCは2025年欧州技術シンポジウムで、欧州の顧客をサポートするため、2025年第3四半期にミュンヘンに開設する新しいデザインセンターを発表した。このセンターは、自動車、AI、およびRRAMやMRAMなどの次世代メモリー技術向けの高度なチップ設計を推進する。
◇TSMC still evaluating ASML's 'High-NA' as Intel eyes future use (5月28日付け Reuters)
→TSMCは、ASMLの高価なHigh-NA EUV装置をいつ採用するかを検討中で、A14またはA16プロセスノードでは緊急の必要性はないとしている。一方、ライバルのインテルは、競争力強化のため、この技術の早期導入を計画している。
◇TSMC to open its first European Design Centre in Munich in Q3 2025 (5月28日付け New Electronics (UK))
→TSMCは、高密度、高性能、そしてエネルギー効率の高いチップの設計において欧州の顧客をサポートするため、今年後半にミュンヘンに初の欧州デザインセンター(EUDC)を設立すると発表した。
◇TSMC to open European Design Centre (EUDC)in Munich in Q3 (5月28日付け Electronics Weekly (UK))
→TSMCは第3四半期にミュンヘンに欧州デザイン・センターを設立し、高密度、高性能、そしてエネルギー効率の高いチップを設計する欧州の顧客をサポートする。
◇AI Supply Chain Could Face a Massive Disruption As Demand For TSMC’s CoWoS Packaging Reaches To Unusual Levels―How advanced packaging solutions demand could disrupt AI supply chains (5月28日付け Wccftech)
→*TSMCのCoWoS(Chip on Wafer on Substrate)およびその他の先端パッケージング・ソリューションは、日本の主要サプライヤーが不可欠な製品の生産を削減しているため、大規模な生産減速に見舞われる可能性がある。
*TSMCのCoWoSとその他の先端パッケージング・ソリューションは、需要が過去最高に達したため、生産が中断する可能性がある。
◇TSMC plans new R&D center in Germany―EUROPEAN TARGETS: The planned Munich center would support TSMC’s European customers to design high-performance, energy-efficient chips, an executive said (5月29日付け Taipei Times)
→TSMCは来四半期、ミュンヘンに初の欧州R&Dセンターを開設する計画を発表、車載、AI、およびIoT応用に向けた半導体設計をサポートする狙いである。この動きは、EUパートナーとの100億ユーロ規模のドレスデン工場合弁事業を補完するものである。
【中国の半導体設計関連】
米国政府の警戒感も一層高まる気配のなか、このところ多々急に活発な動きが目に入る中国の半導体設計関連、以下の通りである。
◇Xiaomi Corp founder touts new chip (5月23日付け Taipei Times)
→シャオミ創業者のLei Jun氏は、Xring O1チップを発表し、アップルやクアルコムに対抗する大胆な計画を発表して、Xiaomi Tablet 7 Ultraのようなフラッグシップ・デバイスを支える。同氏はまた、YU7 SUVをプレビューし、チップ、AI、およびEVsへの大規模な投資を発表した。
◇米の対中規制、技術革新促す 小米、3ナノ半導体開発 ファーウェイはPCに自前OS (5月24日付け 日経)
→中国スマートフォン大手の小米は回路線幅3ナノメートルの先端半導体を開発した。通信機器大手の華為技術も半導体や基本OSで自前のものに切り替えを進める。米政府は輸出規制などで締め付けを図るが、中国テック大手に独自技術の開発を促す結果となっている。
◇Top Chinese memory maker expected to abandon DDR4 manufacturing at the behest of Beijing―Reports: CXMT to end DDR4, prioritize DDR5, HBM―CXMT just reached peak DDR4 production, but it's now prioritizing DDR5. (5月27日付け Tom's Hardware)
→報道によると、ChangXin Memory Technologies(CXMT)は、AIとクラウドインフラに関する政府の指示に合わせるため、2026年半ばまでにDDR4メモリを段階的に廃止する計画だ。この転換は、CXMTがDDR4の量産を開始し、DDR4の価格高騰を引き起こした直後に行われた。CXMTはDDR5とHBM3の開発を優先しているが、DDR5チップには問題が報告されている。
◇Huawei pushes Ascend AI processor-based ‘Supernode’ computing architecture to developers―Huawei’s Supernode 384 computing architecture reflects the company’s efforts to overcome tightened US tech restrictions (5月27日付け South China Morning Post)
→1)ファーウェイは、NvidiaのNVL72に挑戦するSupernode 384 AIアーキテクチャを推し進め、300ペタフロップスと超低レイテンシを実現する。CloudMatrix 384システムは、Ascendチップをスケーリングし、Ethernetをより高速なインターコネクトに置き換えることで、AIトレーニングを加速する。
2)Huawei Technologiesは、Supernode 384と呼ばれる同社のAscendAIプロセッサー・ベースの高性能コンピューティング・アーキテクチャの幅広いサポートを推進しており、データセンターのボトルネックを緩和する米半導体企業、NvidiaのNVL72システムで使用されている構造に匹敵するものとして注目されている。
◇Huawei's SuperNode doubles Nvidia's AI throughput-built to train GPT-5-class models―Huawei unveils SuperNode architecture to boost AI training (5月27日付け DigiTimes)
→2025年5月26日に開催されたAscend AI Developer Summitで、ファーウェイはCloudMatrix 384高性能AIコンピュート・クラスタの基盤である新しいAscend SuperNodeアーキテクチャを発表した。384個のAscend 910Cプロセッサーで構成され、12のコンピュートキャビネットに格納されている。
◇PCに国産5ナノ半導体 ファーウェイ、来月発売 現地報道 (5月27日付け 日経)
→中国通信機器大手の華為技術が、パソコンの新商品に回路線幅が5ナノメートルの国産の先端半導体を搭載する見通しだと分かった。
中国国営中央テレビが報じた。これまでは7ナノが技術的な限界とみられてきた。実現していれば、中国本土の半導体技術の向上を象徴する。
◇半導体材料自給ねらう ファーウェイ関連会社、日韓の人材採用 (5月29日付け 日経)
→中国通信機器大手の華為技術が、中国新興の珠海基石科技を通じて半導体材料の供給網を整備する。製造工程で使われるフォトレジスト(感光材)や研磨剤などの開発や生産に向け、日本や韓国などの専門人材を採用。米国が対中貿易規制を強めるなか、輸入への依存を減らす狙いだ。
◇China's first 6nm domestic GPU with purported RTX 4060-like performance has powered on―Lisuan's G100 GPU powers on, aims to rival RTX 4060―Lisuan Technology's G100 GPU lives. (5月29日付け Tom's Hardware)
→中国のグラフィックスカード新興企業であるLisuan Technologyは、独自のTrueGPUアーキテクチャを採用し、SMICが製造すると思われる6-nmのG100グラフィックスカードを発表した。このGPUは、GeForce RTX 4060の性能に匹敵するものだ。
◇ファーウェイ、中国の半導体60社に出資 先端品調達へ独自供給網 (5月30日付け 日経 電子版 17:16)
→中国通信機器大手の華為技術が、米国政府の制裁対象になった2019年以降、中国の半導体関連60社以上に出資したことがわかった。対象は設計から検査まで工程全般に及ぶ。海外企業との取引が禁じられるなか国内で独自のサプライチェーンを構築し、半導体の性能を高めている。
【AI関連】
AI分野を巡る動きも、技術、市場はじめいろいろな切り口が入り混じるが、それぞれに定点観測を要する以下の内容と受け止めている。
◇Valve CEO Gabe Newell’s Neuralink competitor is expecting its first brain chip this year―Valve CEO's Starfish Neuroscience plans its first brain chip―The stealthy startup thinks multiple simultaneous smaller brain implants could be better than one. (5月23日付け The Verge)
→Valve(バルブ)のGabe Newell CEOの新興企業、Starfish Neuroscience社は、今年中に同社初の脳チップを製造する予定だ。このチップは、競合他社よりも小型で侵襲性が低く、バッテリーを必要としないことを目指しているが、同社はまだこのチップに電力を供給したり、埋め込んだりするシステムを構築していない。
◇AI Chip Market Soars, Forcing Manufacturers, Technology to Evolve (5月23日付け Data Center Knowledge)
→1)AIチップ市場が2030年までに$400 billion規模に向かう中、各メーカーは爆発的なデータセンター需要に応えるべく競争を繰り広げている。
2)AIデータセンターの成長がチップ競争を牽引し、エヌビディアがリードしているが、AMD、ファーウェイ、および新興企業からのプレッシャーに直面している。各社が協力してエンジニアリング、ソフトウェア、およびスケーラビリティの課題に取り組む中、投資額は2030年までに$400 billionを超える可能性がある。
◇産総研、生成AIの信頼性向上 品質保証で指針 (5月27日付け 日刊工業)
→産業技術総合研究所は生成AIの品質マネジメントガイドラインを発行した。大規模言語モデル(LLM)などを使って文章生成AIシステムや対話AIシステムなどを構築する場面で、品質保証に必要な手順や品質特性をまとめた。クライアントと開発者でAIシステムに求められる品質を定めて構築し、その優位性をユーザーに説明できるようになる。
◇韓国の半導体新興リベリオンズ パクCEO「推論でNVIDIAに先行」―Leader's Voice (5月28日付け 日経 電子版 05:00)
→韓国の半導体新興企業Rebellionsが日本に進出した。AI用の半導体開発を手掛け、4月にはNTT系の研究開発企業と共同開発することで基本合意を結んだ。パク・ソンヒョンCEOは「推論をこなすAI半導体で米エヌビディアに先行する」と意欲を示す。
◇AI開発、リスク抑え促進 新法成立 国、事業者へ調査権 (5月29日付け 日経)
→AIの開発促進と安全確保の両立をめざす「AI関連技術の研究開発・活用推進法」が28日の参院本会議で可決、成立した。利活用の推進や国際競争力の向上を盛り込んだ。AIを使った人権侵害などのリスクを抑制するため、国が調査し事業者に是正を促すともうたった。
AIの開発促進や規制に関して日本が国内法を整備したのは初めて。司令塔として全閣僚で構成し首相が本部長を務めるAI戦略本部を設ける。研究開発を進める基本計画を策定する。
◇中国DeepSeek、AIモデルを改良 「OpenAIに近づいた」 (5月30日付け 日経 電子版 06:04)
→中国のAI開発新興、DeepSeekは29日、数学やプログラミング分野に強いAIモデル「R1」を改良したと発表した。長い時間をかけて問題に取り組めるようにして応答の精度が高まり、米オープンAIや米グーグルの技術に「全般的な性能が近づいた」としている。
【市場データ関連】
AI、関税とここでも変動を孕む要因とあらわされる中、半導体関連市場データの見方&動きである。
◇IDC Increases its PC and Tablet Forecasts Despite Tariff Uncertainty―Global PC Volume Expected to Reach 274 Million in 2025, Growing +4.1% Over Prior Year (5月28日付け IDC)
→IDCは、好調な第1四半期の業績とウィンドウズ11のアップグレード促進を理由に、2025年の世界PC出荷台数予測を前年比4.1%増の2億7,400万台に引き上げた。関税の減免措置とPCメーカー各社の緊急性が、迫り来る景気の逆風にもかかわらず、短期的な出荷に拍車をかけている。
◇スマホ向け半導体、需要回復は2025年後半から 4〜6月はAI頼み続く (5月28日付け 日経 電子版 05:00)
→4〜6月期の半導体市場はまだら模様が続きそうだ。生成AI向けデータセンターなどに使う先端品がけん引役となる一方、スマートフォンやパソコン、産業機器に使う成熟品は需要が振るわない。年内はAIの一人勝ちが続き、幅広い製品需要が回復し始めるのは2025年後半以降になりそうだ。
◇DRAM prices have jumped by 20% for the second month in a row - surging demand is likely due to stockpiling―Reports: DRAM, NAND prices surge amid tariff-driven stockpiling ―Companies are buying as much memory as they can during the 90-day window on tariffs. (5月30日付け Tom's Hardware)
→5月のDRAMおよびNANDチップの平均市場価格は上昇し、8GB DDR4チップの価格は2.10ドルと、4月の1.65ドルから約27%上昇した。これらのチップの価格は3月には1.37ドル前後で推移しており、価格が20%以上跳ね上がるのは2回連続となる。Business Koreaによると、これらの価格高騰は、トランプ大統領はこれらの輸入税の90日間の猶予期間を発表、多くの企業が関税を先取りするためにメモリー・チップを備蓄していることが原因である可能性が高いという。