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韓国半導体、米国へ超巨大投資〜Samsungは21兆円、SKも8兆円決定

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米国政府は、半導体に関する台湾依存は実にアブナイ!と見ているようだ。現段階では、ほとんどあり得ないことだが、中国が台湾に侵攻し、我が物としてしまえばTSMCをはじめとする最先端プロセス、および多くの台湾半導体企業が中国の傘下に置かれてしまう。そしてまた、米国内において生産される半導体のシェアはたったの10%しかない。国別の半導体企業シェアで言えば、米国が断トツであるにも関わらず、ひたすら台湾をはじめとするアジアに依存してきたことの危険性がはっきりと米国政府に認識されてきたのだと言えよう。

そこで、米国上院は半導体業界支援法の審議入りを行い、可決した。7.2兆円規模を投入し、米国内の半導体開発の加速とTSMC、Samsungをはじめとする大手のアジア系半導体企業を米国内に誘致しようというのである。これに対して、日本政府も半導体支援のために10兆円の基本ファンドを組むという方向で進んでいるのであるが、先ごろ政府が決めたキオクシアの四日市新工場については、最大929億円の助成金を交付すると言い出した。大型計画を打ち出してはいるものの、こんな「ちゃっちい」助成金で世界と戦うことができるのか、という業界の声は大きい。だいたいが言うこととやることが違っているのは、自民党に限らず、日本政府の最大の特徴であることは賢明なる国民は昔からよく知っているのである。

こうした状況下で、世界半導体ランキング第2位の韓国Samsungは、とんでもないことを考えているようだ。公式アナウンスはしていないが、テキサス州に税制優遇措置の申請を開始したことで、その内容が一部バレバレになってきた。なんと、Samsungのテキサス新工場というのは1棟ではないのだ。21兆円を投入して、11棟の半導体工場を建設するという驚くべき内容なのである。工場ごとで言えば、2兆円を投資し、1000人近い雇用を工場ごとに創出するというものである。韓国Samsungのこの計画に対しては、米国政府は当然のことながらウェルカムである。

なぜならば、米国政府は米国、台湾、日本、韓国の半導体同盟である「チップ4」を結成しようとしているからだ。もちろん米国主導で半導体に強いこの3カ国を引き入れて、4国の半導体同盟を作るわけであるが、水面下において台湾と日本は了承しているようだ。ただ、韓国だけは、まだイエスと言っていない。それはそうだろう。韓国にとって中国は最大の貿易取引先であり、半導体1つだけをもって中国を排除する政治的な意図を持つ同盟に参加することは、なかなか難しいところがあるからだ。

新型コロナの再爆裂拡大が広まっている中で、半導体の世界情勢も大変なことになってきたものだ、と思いながら、ニュースをクリックしていたら、またも韓国ネタですごい話が飛び込んできた。世界ランキング第3位の半導体メーカーである韓国のSKハイニックスの4〜6月期売上額は過去最高を記録し、営業利益はなんと、前年同期比55.6%増になったというのであるからして、ただ事ではない。よく知られているように、SKの半導体売上の80%はDRAMなのである。DRAMの需給が緩んできたことや、価格が下がって来たことから広島に工場を持つ米国Micronの先行きが暗いとも言われる中で、SKが出したとんでもない売上数字なのである(編集注)。

そしてまた、7月26日には米国バイデン大統領とSKグループのチェ・テウォン会長とのオンラインミーティングが行われた。すでにSKグループは米国本土に対し、5.5兆円以上の投資を決めている。EVバッテリー、水素エネルギー、SiCウェーハなどに投資する一方で、シリコンファンドリの立ち上げも検討されているようだ。このバイデン対談の中で、チェ会長はさらに米国投資に2.5兆円程度の新たな投資額をアナウンスした。結論としては、米国本土に対し、SKグループの投資額は約8兆円規模となってくる。

日米軍事同盟が常に強調され、米国はあるところで日本を常に立ててきた。半導体産業においても、日本に期待するとも言っている。ところがどっこい。米国本土に投資する韓国勢の金額はとてつもなく大きい。これでは日本の存在感は薄められ、韓国こそが世界半導体の新たな盟主になってくるとの感触を米国はつかみ始めた。

半導体強化を打ち出す韓国政府は、さらに信じられないことを言い出した。2030年までに半導体素材・部品・設備の50%を国産化するというのである。素材と装置に強い日本の牙城を揺るがすとも言うべき発言であり、日本政府はキオクシアに見られるような「ちゃっちい」支援に留まらず、身体をぶつける思いで半導体一大強化の大型計画を発表しなければならないところまで追い詰められてきたのである。

株式会社産業タイムズ社 代表取締役会長 泉谷 渉

編集注
Micronの3〜5月期の決算報告では、売上額は前年比16%増の86億ドル、営業利益率は36%と好調であった。しかし、6〜8月期見通しは72±4億ドルと厳しい数字を発表したことと、AMDとApple、NvidiaがTSMCに発注していた生産量を減らすとしたことのため、半導体産業に急ブレーキがかかる、という報道が出た。

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