半導体製造装置業界、超強気の2020年業績予想〜TELは純利益11%増見込む
半導体製造装置業界は、5G高速移行およびテレワーク拡大などを背景に、一気に拡大するデータセンター投資に大きな期待を寄せている。2020年のデータセンター投資については、どんなに少なくても12兆円は投入されると予想されているが、このうち約40%が半導体分野に充てられるため、コロナで苦しむ世界情勢の中にあってまさに干天の慈雨が降り注いでいるのだと言えるだろう。
装置最大手のApplied Materials(AMAT)の20年2〜4月期の純利益は831億円となり、前年同期比13%増を記録している。また、国内最大手の東京エレクトロン(TEL)は、21年3月期の連結純利益が前期比11%増の2050億円になる見通しだと発表しており、売上高に至っては同14%増の1兆2800億円で過去最高になるとしているのだ。いやはや驚いたものである。TELによれば、半導体前工程製造装置のDRAM向けが前年比15〜20%、NANDフラッシュメモリ向けが50%伸びるとしているのだから、ある意味でとんでもない予想と言ってもよいのかもしれない。
一方で、アドバンテスト、東京精密、ディスコ、日新電機、芝浦メカトロニクスなどについては、21年3月期の業績算定を繰り延べにしている。もちろんこれは、新型コロナウイルスの影響により測り切れない部分があるからである。ただ、アドバンテストの20年3月期については、純利益率19%、純利益535億円を上げており、全く問題がない。同社の場合、日本銀行の資本がかなり多く入っており、安全で安心な会社との評価が高まっている。ディスコについても、20年3月期の純利益率は20%を維持し、純利益277億円を上げた。設備投資も積極的である。売り上げの18%にあたる259億円を投入している。また、研究開発費についても売り上げの11%の160億円を突っ込んでおり、これまた強気の姿勢と言えるだろう。
洗浄大手のSCREENも21年3月期の業績については予想未定としているが、20年1〜3月期の受注額は624億円もあり、前四半期比で言えば37.7%増と絶好調なのである。特に台湾向けは好調であり、ファンドリとロジックは全く強い動きをしていると判断しているため、発表はしていないものの、やはり強気の予想を出してくるだろう。
ちなみに、20年1Q(1〜3月)の半導体製造装置販売額は、前年同期比13%増の1兆7000億円に達しているとSEMIは分析している。1位は台湾であり4422億円(6%増)であるが、伸び率が多いのはやはり中国であり、なんと48%増の3855億円となっている。ちなみに日本は1848億円にとどまっているが、それでも8%増を記録しているのだ。
こうした内容を見てみると、米国の株価や日本の株価が決して大きくは下がっていないことがよく理解できるところだ。米国のFRBのコロナ対策は誠に際立った鮮やかさであり、2兆ドル(約200兆円強)を株式市場に投入したことにより、米国および世界の投資家に安心感が広がった。何しろFRBは12兆ドルの巨額な資金を持っているために、「これでも足りないなら、次もどんどん行くぞ」と議長が叫んだことで、業績予想を上方に修正する動きが世界企業に広がってきている。日本株もまた、米国に連動して上がっているが、GDPの1.2倍がよいところであるため、これ以上の伸びしろはあまりないと言えるだろう。
新型コロナウイルスショックがリーマンショックと違うところは、やはり一過性のインパクトであり、市場の株価には連動しないというところにある。世界各国ともにGDPの20%にあたる巨額をつぎ込んでいるが、ほとんどが食料、医療、身の回り品に即使われてしまうため、経済効果は大きい。米国や中国に至ってはリベンジ消費で爆買いする人達も出てきた。未だ不安感の去らない新型コロナウイルスショックであるが、半導体産業が明るい話題を届けてくれることだけが、雨の向こうに広がった「虹色の空」と言えるのではないだろうか。