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ニッポンのお家芸「電子回路産業」の後退を、ダントツものづくりで巻き返し

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プリント基板や実装をコアとする電子回路産業は、かつて日本のお家芸であった。2001年のITバブル崩壊前は圧倒的な強さを見せつけていたが、ここに来てじりじりと後退している。2011年には日本と台湾との生産額が逆転し、台湾の生産額は2兆円に近づき、日本の1兆3000億円に対し大差がつきつつある。何といってもセットメーカーの工場の海外進出が大きい。そして人件費をはじめとする固定費の差がどうにも埋められない。

2015年には純正の中国企業が日本をキャッチアップし逆転するともいわれている。台湾の背中が遠くなるばかりでなく、またもや中国の台頭を許し、3位に転落しようとしている。それでも1兆3000億円の規模があるわけだが、そのうち国内生産は6000億〜7000億円に留まっていると見られ、日本の電子回路産業も海外に工場を雨あられのごとく作っていったのがよくわかる。ただし、中国リスクを懸念し、この3年間は日本の電子回路メーカーは中国大陸には1カ所も工場を作っていない状況もあるのだ。国内投資回帰も出てきているが、やはり基本はコスト安の東南アジアにシフトする動きが急速に高まっていることだ。

こうした状況を懸念して、業界団体である日本電子回路工業会(JPCA)は、「海外に奪われた領域を取り戻さねばならない」としてニッポン復活のロードマップを作り始めた。それが、国の支援を積極的に活用し国内生産性向上を一気に図っていく「ダントツものづくりプロジェクト」である。これは、革新的な生産技術を日本で生み出し、高品質な製品を高効率に安く作り、国際競争力を強化するために主に二つのことを実行していく。一つは徹底した現場改善であり、トヨタ生産方式(TPS)をベースとした徹底したムダ排除を断行する。もう一つはシステム開発であり、要素研究からの革新的生産技術開発を行う、というものだ。

このJPCA発のプロジェクトであるダントツモノづくりを推進する宍戸正人氏(「超高効率電子回路生産システム研究会」事務局長)は、この運動の意義と意味についてこうコメントする。「かつて中国の賃金は日本の10分の1〜15分の1という状況であり、どうあってもコストで太刀打ちできなかった。しかし中国は、この間の賃金急上昇で今や日本の1/4〜1/2になりつつあり、5年間で2倍に跳ね上がるという有様だ。一方、日本については、コストは高いものの、今回のダントツものづくりを実行していけば、生産性は3~5年で2~3倍増にすることが可能なのだ。リードタイムも1/2に縮める目標だ。そうなれば、日本と中国の実質的なコストの差はなくなり、国内モノづくりが復活し雇用を生み出していく」。

国からの支援なども受け、通称「ダントツ研究会」はこれまでにトータル15回開催され、30社200人が参加している。また、現場改善指導会も関東2社、関西3社に対し、計24回も実行されている。平成27年度の経済産業省事業「カイゼン指導者育成事業・補助金支給」を活用し、いよいよこの10月からJPCAものづくりスクールがスタートすることになっており、来年1月からは現場改善のインストラクター派遣も始まるのだ。

「何としてもこの日本に高付加価値、高品質、しかも適正コストのモノづくりを残したいという思いは、電子回路メーカーの間で高まりつつある。徹底的に7つのムダ排除を行う。7つのムダとは、(1)作り過ぎのムダ(2)手待ちのムダ(3)運搬のムダ(4)加工そのもののムダ(5)在庫・仕掛りのムダ(6)動作のムダ(7)不良(不適合)を作るムダ、というものだ。執念を持ったムダ取りをしていけば、企業体質が強化され生産性は飛躍的に上がる。まだまだニッポンのモノづくりは元気印なのだ、ということを力強く世界に発信する時が今こそ来ているのだ」(宍戸氏)。

産業タイムズ 代表取締役社長 泉谷 渉

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