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「ソリッドステート技術」が20〜30年ぶりにやってきた

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20年ぶりだろうか、30年ぶりだろうか、Solid Stateという言葉を聞いたのは。昔は真空管から半導体トランジスタに置き換わるようになったため、チューブに対してソリッドステートという言葉が半導体を指すようになった。かつて、増幅器は真空管が主力だったが、半導体トランジスタでも増幅器ができるようになり、固体の方が真空管よりも信頼性が高くなるだろうと予想された。

真空管からトランジスタへ変わったように、電球からLEDや有機ELに今変わろうとしている。ガラス球に包まれた白熱電球やガラス管に入った蛍光灯は、真空に引いてからガスを入れ、あるいは水銀を入れ、管内のガスが重要な役割を果たす。ガスという気体を使わずに固体だけで照明に使える光を出そう、ということから昨今のLEDや有機ELはSolid-State Lightingという言葉を使うようになった。

Solid-State Lighting


最初の白色LEDは、青色LEDの上に補色関係にある黄色い蛍光体を被せ、青と黄色で白色を出すようにした1チップのデバイスである。ただし、最近では赤、緑、青の3チップのLEDを使って、白を作り出すようになった。暖色や冷色など同じ白でも色温度を変えながら幅広い白色を出せるからである。

ELを照明に使おうというアイデアは実は1970年代初めにもあった。工業調査会の雑誌「電子材料」や日経マグロウヒル(現日経BP)の「日経エレクトロニクス」、オーム社の「エレクトロニクス」などではそのころ、エレクトロルミネッセンスが生まれ、これは平面照明になるとか、天井や壁一面が照明になるなどと言われ、特集記事を飾った。しかし、当時のELは照度が弱く、とても照明に使えるレベルになかった。ELが照明に使われるなんてことはもうすっかり頭の中から忘れていた。ところが、4月中旬の第1回次世代照明技術展では、ELが照明として実用化される日がはっきりと見えてきたのである。何と、30年ぶりあるいは40年ぶりに夢が形になる技術といえる。とはいえ、開発の当事者はコツコツと開発を積み上げてこられたに違いない。ようやくそれが実現にこぎつけたといえよう。

LEDとELを総称してソリッドステートライティングと呼んでいる。白熱電球から蛍光灯、いずれもランプは必須だ。しかしLEDやELは固体材料そのものが色を出すため、基本的にはガラス管は必要ない。平面に並べることができる。

多数、直列および並列に並べられるため、さまざまな配置レイアウトが可能である。それに伴い、自由自在の配置を実現するためのコントローラも欠かせなくなっている。ここに半導体チップのマーケットがある。いわばLEDドライバ、コントローラである。有機ELはDC動作であるため、LDOあるいはスイッチング電源が必要となる。一方、AC動作の無機ELは内部キャリヤの励振のため安定なAC電圧を作り出さなければならない。ここにまた半導体が使われる。もちろん、LED自身が半導体ではあるが。

その先には、今度はLEDの光を有効に取り出すために回路の低消費電力化が図られるようになる。ここにも半導体メーカーが知恵を絞る分野がある。いかに効率を上げるか、従来の回路では何が大きなロスか、そのロスをどうやって取り除くか、トコトン考え抜くことで全く新しい回路を生み出し、特許で大きな差別化技術を作ることができるかもしれない。

泣き所であるコスト高に対しても、LEDを多数並べて安く作るための技術を全く新規に開発する必要がある。ここにも知恵を入れる。これまでのようにまず設計開発し量産に移してからコストダウンを図るのでは大きな低コスト化には限界がある。雑巾を絞り切るような労働集約的なコストダウンではなく、エンジニアらしく頭脳的なコストダウンの画期的な方法を新規に考え出すことだ。これが大きな売上と利益に結びつく。

企業としても特許をこれまでのような防衛特許ではなく、積極的に売り込む攻撃的な特許に変えていかなければ、利益率の高い収益源とはならないだろう。もう、なあなあのクロスライセンスはやっていないとは思うが。防衛特許はコストばかりかかり、有効なライセンス収益とロイヤルティ収益に結びつかない。むしろ利益率を下げている。特許戦略は、4月のSPIフォーラムで講演を聴けたクアルコムの方式が参考になると思う。

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