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LEDから有機ELへと照明技術の将来がはっきりした次世代照明技術展

白熱灯や蛍光灯といったチューブから固体のLEDへと照明源が変わりつつある。さらにその先には有機EL照明が主力になるというトレンドがはっきり見えてきた。リード・エグジビション・ジャパンが開催した第1回次世代照明技術展において、このような方向を大手照明器具メーカーが認識していることを明らかにした。パナソニック電工と、ドイツのOSRAM、米国のGE、オランダのPhilips社が2015年以降には有機EL照明が市場の一角を占めているだろうと予想した。

展示会と同時に併催した4社の基調講演で、各社が時期は微妙に違うものの、2015年は有機EL照明がもはや常識になっていることでは一致した。パナソニック電工 取締役照明事業本部長の松蔭邦彰氏は、照明用途の有機ELには、高出力化、高効率化、ブロードな発光スペクトル、フレキシブルなどの利点を挙げ、生産技術の進歩により将来LED照明よりも低価格になる可能性があると指摘した。2010年代後半から蛍光灯を置き換える面発光光源として急速に発展することが期待されるとしている。

OSRAM Opto Semiconductor Asia社長兼CEOのAlfred Felder氏は、今や使われだしたLED照明を、環境も配慮したEuP(Energy using Products:環境を配慮した製品設計)指令の下で標準化することを考えていると述べた。さらに、今のLEDチップの輝度効率は、ルーメン(lm)/Wとして、2倍の150lm/Wに増加するという。効率を上げるため、要となる半導体LEDチップのInGaP量子井戸構造、チップ基板の反射をうまく利用する設計、上にかぶせる蛍光体、光を外部へ効率よく出射させるためのパッケージ構造、などの工夫が必要になるとしている。2015年には数量でLED照明が蛍光灯を抜くとみている。

LED照明のその先には、有機EL照明がやってくる。発光面積の小さなLEDとは違い、素子レベルから面光源の有機ELは、曲げられる、0.7mm程度と薄い、などのメリットも加わる。透明導電電極を利用して、透明な発光体ができ、350平方cmのものが出来ている。

GE Lighting TechnologyのジェネラルマネジャーであるZoltan Vamos氏は、このIT時代なのになぜ照明をGEがまだやるのかと学生に聞かれたという逸話を紹介し、今は第3の照明革命だからと答えたそうだ。第1がいうまでもなくエジソンの発明した白熱電球、第2が蛍光灯の発明、そして第3がソリッドステート照明だという訳だ。LED照明はもはや実用になり、これからは有機EL照明の時代が来るとしている。GEの見積もりでは2015年に白色有機ELは蛍光灯並みの効率に追い付き、その後は追い越すという。そのための準備として、コニカ-ミノルタと提携することで、有機ELの材料からデバイス、パネル、電子制御回路、照明器具までのバリューチェーンが完成したとしている。ロール-ツー-ロールの生産方式の戦略でいけば低価格の製品が可能になると同氏は言う。

照明技術に力を入れているPhilips Lighting Global Technology Development Campus ChinaのジェネラルマネジャーDale Work氏は、固体照明技術は、常にシステムであり、部品ではない、ことを強調した。その一例としてLED照明を普及させるために電球のソケットと互換性のある形状にする、レトロフィットLEDランプを採り上げ、このランプを作るのに必要な形状、熱設計、安全性、光学設計のすべてにわたる専門知識が必要であると述べた。LEDランプの寿命の長さを考慮して、白熱灯を交換する労賃をLED照明が吸収するとした。固体照明をさらにシステム的に考えるとやはり有機ELのような平面照明にたどりつく。有機ELは曲げられる、薄いに加え、影ができないこと、さまざまな色を1デバイスで実現できる、というメリットも加えた。2015年くらいには120lm/Wまで効率は上がるとみている。

これらのセミナーとは別に展示会では、山形県米沢市に拠点を構えるLumiotec社は、食卓テーブルでの応用を意識した照明ランプを展示した。輝度は5,000cd/m2。15cm角の有機ELランプで消費電力は20〜25W、電源電圧は12V程度。材料は低分子の有機膜。色温度は3800K程度の暖色系である。10月ごろをめどに商品化したいと意気込んでいる。今後、3年程度で蛍光灯並みの明るさにできるとしている。


Lumiotec社の食卓用照明

Lumiotec社の食卓用照明


ELストリーム社は、無機ELを使った照明をすでにサンプル出荷中で、まず使ってもらうことを進めながら、同時により効率アップなどの改善を進めていく方針だ。神奈川県の厚木に拠点を持つ同社は最大B0サイズ(1486mm×1060mm)の大きさのELシートまで揃えている。駆動電圧は明らかにしないが、AC駆動で自励発光であるため消費電力はLEDの70%くらいしかなく、温度上昇はないという。輝度は、試作段階でも1000cd/m2しかなく、蛍光灯に比べるとまだ1/10程度しか明るくない。ただし、蛍光灯では実現できないフレキシブルで設計の自由度が高い。


ELストリームの無機EL照明パネル

ELストリームの無機EL照明パネル


ドイツの研究開発会社であるNovaled社は、机に設置する電気スタンドや、透明なタイプ、自動車のフロントランプなどの応用を提案し、その試作品とモックアップを展示した。2003年に設立、有機EL照明の研究開発会社であるだけではなく、試作して実証するサービスや少量生産なども行うほか、ソリューションを提案したり顧客の欲しい最終製品もソリューションとして提供するというビジネスモデルだ。収入源はライセンス料やロイヤルティ料、サービス料など。ドレスデン工科大学をスピンオフして設立した。


ドイツのNovaled社が提案した車のヘッドライトへの応用

ドイツのNovaled社が提案した車のヘッドライトへの応用


(2009/04/16 セミコンポータル編集室)

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