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アップルがARMを買収するという噂の真相はやはり米西海岸で確認できた

今年も米PR会社のGlobalPressが主催するe-Summitにやってきた。この会議では、日本で名前の全く知らない新しいベンチャーの話を聴ける。主催者にどの企業に興味があるのかを聞かれたので、無名の企業を紹介してくれ、無名であればそれだけで日本では特ダネになるから、と伝えた。

MIPSの新CEO Sandeep Vij氏

MIPSの新CEO Sandeep Vij氏

昨年は、MEMSのベンチャーであるKionix(カイオニクス)の話を記事に書いた。インタビューした相手のEric Eisenhut氏が最優先するマーケットは日本、と断定したように、この企業を後にロームが買収することになった。この時に書いた記事はもちろん、日本のメディアは誰も書いていない。昨年秋に電子情報通信学会で講演した時にもKionixの話をした。MEMSセンサーとその出力からシステムのアルゴリズムに結び付く信号列を対応させるか、が重要であるが、MEMSセンサーだけではもはや付加価値がないからこそアルゴリズムも一緒にして初めて顧客は価値を認めてくれることを講演で話した。今年とり上げるベンチャーも楽しみだ。

今回、こちらへ着き、台湾の記者と情報交換しているうちに、先週の金曜日にアップルがARMを買収するといううわさが出たことが話題になった。セミコンポータルでも編集室内をこの話題が飛び交ったが、まさか、という反応に終始した。というのはARMにとってはユーザーに迷惑をかけるだけであり、何のメリットもないからだ。

ところが、今日(4月25日日曜日)のディナーにおいてほんの3時間前だが、ARMのライバルであるMIPSのCEOに最近就任したSandeep Vij氏とパーティで立ち話をした。この話は先週の木曜日(日本時間の金曜日)にEE Timesがうわさ記事を書きたてたために急激に大きな『噂』話になり、金曜日(日本時間土曜日)には急速に鎮火したという。MIPSは誰もが、この『噂』について興味シンシンだった。というのはこの話が事実であれば、MIPSとしてはライバルが消えてしまい大喜びの状況になるからだ。ところが、鎮火した理由は、ARMのCEOのWarren East氏が異例の声明を出し、これは噂にすぎないことと、一蹴したらしい。

ARMのトップが噂を事実ではないときちんと声明を出すことでこの問題は決着した。やはり事実を語ることはとても重要だということだ。噂は人から人へ伝わると、不要な尾ひれが付くことはよくある。経験された読者も多いだろう。今回は、噂に火が付いた木曜日にARMはコメントを発しなかったために噂が広がり憶測が憶測を呼んだ。翌金曜日にメッセージを出し、噂が事実ではないことが、CEOの口から伝えられたわけだ。

ディナースピーチにおけるSandeep Vij氏は、今後のMIPSの方向として、これまでのデジタル家電中心の戦略から、携帯機器への拡張について明確なメッセージを出した。その『事実』はこうである。「今の携帯電話の主流はプロセッサとしてARMコアを使い、OSにはシンビアンを使っている。Androidが出てくるようになるとこの状況はがらりと変わる。AndroidのOSはLinuxであるから、プロセッサもいっそのことMIPSに替え、何もかも新しくしようではないか。そうするともっとパワフルな携帯電話機ができるようになる」。

同氏はスタンフォード大学の大学院でコンピュータ科学を学んでいた時に、ヘネシー教授に師事した。この教授こそ、MIPSを立ち上げた人物だ。長い間ザイリンクスで働いていたVij氏は結局、RISCコンピュータの世界に戻ってきた。そして「グーグルもMIPSも共通するのはスタンフォード大学の出身者だということ」と結んだ。経営トップが自らの言葉でスピーチを述べ、拍手喝さいを浴びた。極めて印象的なスピーチだった。

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