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MEMSとCMOSとの最適な集積化によりICの性能向上が明確に

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さる9月中旬、新潟大学で開催された電子情報通信学会のエレクトロニクスソサイエティ主催の企画「More than Mooreを実現するMEMS融合LSI技術」では、MEMSデバイスをCMOSLSIに融合する場合の技術の向かうべき方向が見え始めてきた。MEMSとCMOSを融合するならMEMSラストにすべき、65nm・45nmと微細化の先端をゆくCMOSとの融合なら1チップ化せずSiPを使うべき、との共通合意が得られた。

セッションの座長を務める東京工業大学統合研究院の益一哉教授は、MEMS技術やCMOSとの融合技術を活発化させる上で必要なファウンドリ環境の重要性について指摘した。製造できる環境、それも大学関係者が製造できる環境、さらには開発者同士が切磋琢磨できる環境も重要で、大学における製造施設だけではなく大学同士のネットワークを生かす環境やサービスの仕組みも必要だと問題提起した。益教授は、米国のジョージア州アトランタとカリフォルニア州などの大学とを結ぶ共同研究体制を紹介し、みんながCMOSを使えるようにすることが大事だとした。日本にもCMOSファウンドリがあれば、CMOSプロセスで回路を製作し、その後でMEMS部分を作るというMEMSラストのプロセスを使えるようにしたいという。

CMOSとMEMSの集積化については香川大学の高尾英邦教授も、これまで試作したMEMSセンサーとCMOS回路による触覚センサーや3軸加速度センサーなどを紹介したが、集積化にはやはりMEMSラストが望ましいとしている。ただし、集積化には微細なCMOSと寸法の大きなMEMSを無理に1チップに集積することは難しいが、0.35μmのような比較的大きめなCMOS回路がMEMSとの集積に向くとしている。触覚センサーアレイで点字を読み取る場合にはやはり集積化のメリットは大きい。

そもそもMEMSは微小な機械であり、CMOSはエレクトロニクス回路であるが、それらを1チップあるいは1パッケージに融合するためには、機械デバイスを何とかして集中定数で等価回路を表現できれば電気回路のようにシミュレーションできる。こう考えたのは、京都大学大学院工学研究科マイクロエンジニアリング専攻の土屋智由教授。MEMSの構造体を素子に分解し、MEMSpiceと呼ぶシミュレータのモデルや、バネや運動方程式を電気素子や回路に変換するシミュレータなどを紹介した。さらに静電容量センサーとしてのMEMSによる櫛形電極に直流バイアスと交流電圧を加え、その周波数応答を実測とシミュレーションとを比較した。合わせ込みパラメータを使って実測値に合うようにした後は、実測値とほぼ一致した。


京都大学土屋智由教授の解析したMEMSデバイスの比較
京都大学土屋智由教授の解析したMEMSデバイスの比較


東京工業大学統合研究院の石原昇教授は、MEMSデバイスはRF回路の受送信スイッチやフィルタなどにも有用であることを述べ、RFインダクタをMEMSで作り、プレーナ技術やWLP(ウェハレベルパッケージング)で作る場合と比べ、Q値が高くなることを実証している。MEMSだとコイルの線間が空間になり寄生容量が減るためだとしている。

RFパワーアンプにMEMSを集積する例は、大学だけではなく、企業からも検討結果が発表された。NTTドコモ先進技術研究所アンテナ・デバイス研究グループの岡崎浩司主任研究員は、まだ商用化されていないRFのMEMSデバイスを携帯電話のマルチバンド化に使うための検討を行っている。送信回路のパワーアンプのフィルタ回路の切り替えスイッチにMEMSを利用する。従来のバラクタダイオードなどの半導体可変デバイスは内部抵抗や寄生容量などの影響を受けやすいのに対して、MEMSスイッチは低損失、高アイソレーション、低歪という特長がある。MEMSスイッチを使ったことで、0.9GHz、1.5GHz、2.0GHz、2.6GHzの各周波数で飽和出力がいずれも30〜31dBm得られ、1dB低下時の出力でも28.1dBm〜30.0dBmという良好な結果を得ている。


NTTドコモ先進技術研究所のマルチバンドRFパワーアンプ構成
NTTドコモ先進技術研究所のマルチバンドRFパワーアンプ構成


富士通執行役員常務の佐相秀幸氏は、携帯に使われているMEMSセンサーの例を上げ、MEMSのようなメカトロニクスに起因する品質的な課題が存在することを指摘した。例えば、MEMSの歩数計を携帯電話の生産ラインで動かなくなり、それを解析していると元に戻った、という例がかつてあったという。機械的デバイスは正常だったり故障したりするようなインターミッテント不良が発生しやすいが、品質管理としてももっとも厄介な問題の一つになる。

さらにエレクトロニクスの電磁界解析だけではなく、熱解析や応力解析といった機械的な解析も含めた統合設計・製造プロセスを携帯電話のモノづくりにフル活用していることを明らかにした。


富士通の統合設計・製造環境
富士通の統合設計・製造環境

シミュレーションは実測値と当たる・当たらない、ということがよく議論されるが、この統合環境でもそのような質問が出た。佐相常務は熱解析や応力解析のようなメカニカルな解析はよく当たるが、RFやアンテナ解析は当たらないと答えた。これはメカニカルなものほど設計データの蓄積があるためだとしている。

(2009/09/28)

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