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IPコアの製品ポートフォリオを拡充、Atomの勢いにのるイマジネーション社

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英国のIPメーカーであるイマジネーションテクノロジーズ社がインテル社のAtomプロセッサの周辺チップに使われていることが明らかになって以来、攻勢をかけてきている。同社は2D/3Dのグラフィックスコアやマルチスタンダードのビデオデコーダコアなどを出していたが、Embedded Technology 2008ではラインアップを拡充したIPコア製品を発表、開発ツールともども展示した。グローバルな携帯電話向けのテレビ受信回路コアも地デジ対応へと拡大、加えてインターネットラジオまで今回、展示した。

グラフィックスコアPOWERVR製品ではインテルのAtom周辺チップに使われたミッドレンジのSGX530、テキサスインスツルメンツ社のアプリケーションプロセッサOMAPに集積されているSGX535に加え、ローエンドのSGX520、ハイエンドのSGX540/545も製品ポートフォリオに加えた。グラフィックスエンジンをローエンドからミッドレンジ、ハイエンドまで1個、2個、4個と搭載、それぞれの性能を拡充している。ローエンドの520は65nmプロセスで製造する場合コアの面積はわずか2.7mm2だとしている。SGXシリーズは、高級言語でプログラミングできるOpenGL2.0規格に準拠している。その開発ツールやソフトウエア開発などを含むエコシステムPOWERVR Insiderには5000名が参加しているという。


Atomに搭載されたPOWERVR

Atomに搭載されたPOWERVR 
UMPCに内蔵されたIPで他のディスプレイも駆動しながらPCのCPU占有率は20%程度


SGXシリーズのライセンスを取得している顧客には上の2社に加え、NEC、ルネサステクノロジ、サムスン、シグマデザインなどがいる。アップル社のiPhoneが画期的なグラフィックスインターフェースを発表して以来、3Dグラフィックス表示を駆使するスマートフォンの開発に拍車がかかっている。

Atom周辺チップに集積されているIPはPOWERVRだけではない。マルチスタンダードのビデオデコーダIP、VXD370も集積されている。イマジネーションは今回、ビデオエンコーダVXE251と280も製品シリーズに加えた。251がSD仕様(解像度720×576)なのに対して280はHD仕様(同1920×1080)であり、共にH.264BPとMPEG-4 SP、H.263、JPEGに準拠している。これまでの370はカムコーダ用チップに集積されていたが、今後はデジカメ用チップへの搭載が期待されているという。エンコーダチップは今後、H.264 BP(Base Profile)に加え、H.264 MP(Main Profile)H.264 HP(High Profile)にも対応していく予定だ。

イマジネーションは携帯機器やスマートフォン応用だけではなく、据え置き型テレビの地上波デジタル放送、いわゆるフルセグにも対応する受信回路IPも追加した。この製品シリーズEnsigma UCCPコアは欧州や韓国のモバイルDVB-HやT-DMB、ISDB-T 1segだけではなく、欧州地上波テレビのDVB-T Nordig、日本のフルセグISDB-T 13segにも対応する。IPコアはもちろん小面積であるが、世界各地の受信方式に応じてプログラム可能なコアにするための工夫を凝らしている。これは受信回路のうち、入力の信号処理回路と出力のエラー訂正回路をハードウエアで構成し、内部のプログラム可能な回路をベクトルプロセッサMCP(Modulation Coding Processor)で構成した。このプロセッサのマイクロコードを入れ替えるだけで世界各地の受信回路を実現する。地デジはOFDM(Orthogonal Division Multiplexing)方式で変復調することが多い。OFDM演算は高速フーリエ変換のバタフライ演算を4回同時に行うという特徴があるため、この演算に合わせ、MCPは96ビットの専用プロセッサとしている。このため小さな回路規模で高速の演算をできる。従来200MHzのDSPでの演算を25MHzのMCPで実行できるという。


4スレッド同時処理するMETAプロセッサコアのデモ

4スレッド同時処理するMETAプロセッサコアのデモ
100MHz動作で230〜240DMIPSの性能を示し、コア1個で4コア相当のジョブを行う


イマジネーションはIPメーカーであり、IPを半導体メーカーに納めており、半導体メーカーとは決して競合しない。ただし、その先のセットメーカーと競合する機器も設計している。欧州で人気のデジタルラジオのメーカーとしても英国ではトップシェアを誇るとしている。PUREブランドのデジタルラジオの復調回路や復号回路(MP3やAACなど)を自社開発のマルチスレッドのシングルコアプロセッサMETAを使って実現する。デジタルラジオ向け半導体チップとしてはこのMETAプロセッサIPにRF回路やアンプ、周辺回路などを集積するわけだが、このシングルチップ化を英国のファブレス半導体メーカー、フロンティアシリコン社が行う。イマジネーションはフロンティアシリコンへMETAコアを納入するが、そのサポートとしてデジタルラジオセットを設計した。年間数十万台のデジタルラジオをEMS(受託契約製造業者)に依頼して生産している。


イマジネーションが提供するデジタルラジオ

イマジネーションが提供するデジタルラジオ
左がインターネットラジオ、他はデジタルラジオ。レトロなデザインを強調している


今回、デジタルラジオの延長としてインターネットラジオを全世界で発表した。日本国内向けには現在、販売代理店など流通系を検討している段階だ。インターネットで発信している世界中のラジオ局は1万局〜1万1000局あると言われており、イマジネーション社内にサーバーを持ち、世界中のインターネットラジオ局をチェックし8000局に絞り管理しているという。このインターネットラジオで自分の好きな局あるいは好きな音楽ジャンル(ジャズやクラシック、タンゴなど)を検索、選択できる。例えば世界にビートルズの曲だけを流しているラジオ局が3局あると言われ、その局を選択すると1日中ビートルズの音楽を聴くことができる。インターネットラジオが1台ずつIPドレスを持っている。まもなくインターネットステレオも発表する予定だ。


(2008/11/27 セミコンポータル編集室)

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