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ウェーハレベルCSPのIC製品を続々出してくるアナログデバイセズ

米Analog Devices社が携帯電話やPND(ポータブルナビゲーションデバイス)、MP-3プレーヤーなど携帯機器に向け、WLCSPパッケージの製品を続々出し始めた。WLCSPは、ウェーハレベルパッケージ技術をつかい、モールドパッケージの大きさがチップサイズとほぼ同じ大きさのIC。ウェーハレベルパッケージングは、ウェーハの状態でウェーハ表面をモールディングし、電極形成をし、外部回路にそのまま接続できる技術である。

ADMTV201


ADV7521NK


ベアチップと違い、チップをテストしにくいということはない。プリント基板にそのまま表面実装できる。WLPはICとして究極の小型パッケージ技術である。CEATEC Japan2008が開かれている幕張メッセに近いホテルニューオータニ幕張で開催したプライベートショーで、それらのICを3種見せた。それぞれモバイルRFチューナーADMTV201、ポータブル用のD級アンプSSM2317、ポータブル機器から据え置き型テレビへ映像を送るHDMIトランスミッタADV7521NKである。

ADMTV201は寸法が2.14mm×2.09mmしかなく厚さはわずか0.35mm(上の写真)。ワンセグ(ISDB-T)向けの低消費電力を特長とし、動作時で72mWである。さらに信号レベルに応じて消費電力を下げるSPC(スマートパワーコントロール)方式を使うと56mWまで下がる。信号レベルが十分高く受信状態が良い場合には消費電力を下げるというわけだ。受信感度は-98dBmと高く、ノイズレベル(雑音指数NF)は2.5dBと低い。このICは地上波デジタルテレビ放送のUHF帯の電波を受け(周波数470〜806MHz)、周波数変換してIF信号を出力する。外付け部品は水晶振動子を含め8個ですむとしている。

D級アンプSSM2317は、負荷インピーダンス8Ω、電源電圧5V、出力1.4Wの時の効率が93%と極めて高いことを特長としている。これは内蔵のパワーMOSFET のオン抵抗を下げたため。効率が高いということは消費電力が少ないことを意味する。このためICの寸法は1.5mm×1.5mmと小さい。

iPodなどの音楽プレーヤーからの出力をスピーカーで聴くための音質に関しても高める工夫をしている。まず、ALC(自動レベルコントロール)とコンプレッサ技術を導入した。ALCは音量が設定値を超すような大音量が流れた時に音が歪まないようにピークを調整する技術で、その調整範囲は0から-15 dB。またコンプレッサ技術は、突然のレベル圧縮により歪が出ないようにいきなりピーク値にとどめるのではなく、時間と共の徐々にピーク値まで上げていく技術。THD(全高調波歪)は0.02%と小さい。これは従来のPWM(パルス幅変調)ではなくPDM(パルス密度変調)を採用したことによる。PWMだと高次のスプリアスが立ちノイズとなりやすい。PDMでは、音量の大きな時はパルスの密度が高く、小さな時は密度が低い。変調回路を内蔵してその密度を変える。さらに、ノイズ特性を高域の方へ押し上げる、ノイズシェーピング技術も導入している。この結果、SN比は93dBを得ている。外部端子は9ピン。

ADV7521NKの寸法は、3.5mm×3.5mmで厚さは0.7mm(下の写真)。49ボールの電極端子からなる。80MHzのHDMI(high definition multimedia interface)v1.3に準拠し1080iおよび720pまでのHDTV規格に対応する。デジタルビデオカメラの映像を据え置きテレビ画面で見るような場合に使う。ビデオカメラやデジカメ、デジタルフォトフレームなど、携帯機器に組み込むため小さなパッケージを採用した。チップにはマイコンを集積しているほか、リモコン機能インターフェースなどさまざまなインターフェースを設け、リモコンでも操作できるようにしている。

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