Semiconductor Portal

» セミコンポータルによる分析 » 技術分析 » 技術分析(半導体製品)

オン抵抗7mΩまで削減した1200V のSiC MOSFETをInfineonが開発

耐圧1200Vと高く、しかもオン抵抗7mΩと損失の小さなSiCパワーMOSFETをInfineon Technologiesが出荷し始めた。このCoolSiC MOSFET 1200V M1Hファミリには、標準のTO247パッケージの単体トランジスタに加え、インバータなどに適したパワーモジュールEasy 3Bパッケージも提供する。

図1 オン抵抗を下げ熱抵抗も下げた1200VのパワーSiC MOSFET 上はEasy 3Bモジュール、左下はTO247-3、右下はTO247-4ディスクリート製品 出典:Infineon Technologies

図1 オン抵抗を下げ熱抵抗も下げた1200VのパワーSiC MOSFET 上はEasy 3Bモジュール、左下はTO247-3、右下はTO247-4ディスクリート製品 出典:Infineon Technologies


2021年度の同社のSiCの売り上げは、パワー半導体を生み出している主力部隊のIPC(Industrial Power Control)事業部門全体の売上額の7%を計上しており、SiC半導体の売り上げは毎年倍々ゲームで伸びている、という。

今回リリースしたSiCパワーMOSFETは、同じシリーズの従来品である1200V M1ファミリを改良したもの。大きな改良点は、オン抵抗を削減しロスを減らしたことと、使用可能なゲート電圧範囲を-10Vから+23Vまで拡大したこと(後述)、さらにパッケージ技術で熱抵抗を減らし最高使用温度を175度で1分間まで上げられるようにしたこと、である。


CoolSiC MOSFET 1200 V M1H シリーズ - 静特性の改善 / Infineon Technologies

図2 125°Cで動作する時のオン抵抗が12%減少 出典:Infineon Technologies


オン抵抗を減らすため、パターン設計を変えずにプロセス上でMOSFETの電子移動度を上げるようなプロセスを工夫したことによる。MOS界面での欠陥を減らしたことで移動度は上がったが、それに関しては明らかにしていない。従来のM1シリーズと同じスペックのMOSFETと比べ、約12%オン抵抗が削減した(図2)。

ゲート電圧範囲を広げることはパワーMOSトランジスタにとって意味がある。ハーフブリッジ回路では(図3)、ハイサイドとローサイドのMOSFETを交互に動作させるが、ハイサイドのスイッチをオンにするとローサイドのスイッチがオフ状態でも、一時的に電流が流れ誤点弧してしまうことがある。貫通電流が流れ、最悪の場合破壊に至ることもある。これは、ハイサイドがオンして瞬時電圧dV/dtによってローサイドMOSFETのゲートCGD(ゲート-ドレイン間の帰還容量)を通してゲートに過渡電流が流れてしまいゲート電位が持ち上がり一瞬ローサイドMOSFETがオンしてしまうためだ。そこでゲートにマイナスの逆バイアスをかけて誤点弧を防ぐことが行われている。


典型的なMOSFETのハーフブリッジ回路 / Infineon Technologies

図3 典型的なMOSFETのハーフブリッジ回路 出典:Infineon Technologies


ところが、逆バイアスをかけた状態でスイッチングを続けるとゲートしきい電圧Vthが少し上がっていくという現象が起きるという。これがどうやら、MOS界面の欠陥と関係するらしい。今回、界面欠陥を減らすプロセスを開発したことでVthの変化を抑えることができた。これにより、スイッチング周波数を1MHzまで上げても、ゲートの逆バイアスを-10Vまでかけられることが可能になった(図4)。これによって、ゲート電圧範囲を-10〜+23Vと広げられるようになった。


最新のCoolSiCベース技術の進歩により、ゲート電圧の選択を完全に自由に / Infineon Technologies

図4 ゲート電圧を-10Vから+23Vまで拡大できるようになった 出典:Infineon Technologies


パッケージ技術では熱伝導率を15%改善する技術を用い、熱抵抗を25%削減できる、「.XT(ドットエックスティと発音)」技術を開発した。これは次のような技術である。これまでCu(銅)のリードフレーム上にSiC MOSFETをハンダで接続すると、その厚さによって熱抵抗が高くなる。そこで今回、SiC MOSFET裏面にAgなどの接続用メタル(メタルの種類は明らかにしていない)を蒸着で形成し、薄膜を接続材料として設けた(図5)。蒸着膜の裏面をリードフレーム上に置き、加熱すると、チップをリードフレームと接着できる。蒸着膜はハンダよりもずっと薄いため、熱抵抗が低く、放熱性能が上がった。これまでのSiC MOSFETだと最大145Wまで消費できるが、今回は188Wまで使えることがわかった。


1200V CoolSiC MOSFET .XT接合による熱特性の大幅な向上 / Infineon Technologies

図5 接合材料を蒸着で薄く形成し、熱抵抗を下げた 出典:Infineon Technologies


InfineonがCoolSiCと呼ぶMOSFET 1200V M1Hファミリの製品ポートフォリオには、Easyモジュールファミリをはじめ、今回7mΩ、14 mΩ、20 mΩのTO247標準パッケージを加えた。上記の「.XT」接合技術は、D2PAK 7L 表面実装製品から採用されたが、今回TO247ディスクリートパッケージにも採用し放熱率を30%向上させた。InfineonはさらにCoolSiCファミリを充実、広げていく。

(2022/04/21)
ご意見・ご感想