ST、ToFセンサとエッジAIを組み合わせPCセキュリティを強化
STMicroelectronicsは、ToF(Time of Flight)センサとAIで、人の近づきや遠ざかりを検出したり、複数人を検出したりすることで、パソコンのセキュリティを高めるといった新しい応用に力を入れている。PCから離れるとすぐにパソコン画面を消去、消費電力を削減する。人が戻ってくると起動し始める。複数人が覗いていると、画面をぼやけさせ警告する。頭の向きを検出して画面を見ていなければ画面を暗くし、消費電力を下げる。
図1 STマイクロエレクトロニクスのアナログ・MEMS・センサ製品グループ イメージング製品部部長のミクニ久美子氏 筆者撮影
こういった提案をしているのは、STマイクロエレクトロニクスのアナログ・MEMS・センサ製品グループ イメージング製品部部長のミクニ久美子氏だ(図1)。PCメーカーからは、よりバッテリ寿命を長くしてほしいという要求を受けている。そこで、PCに測距センサと簡単なAIを導入することで、自分のパソコンを守ると共に消費電力を下げることが可能になる。消費電力を下げればバッテリ動作時間は長くなる。
STはこれまでも測距センサを開発、出荷してきたが、このほどToFセンサとAIアルゴリズムとの組み合わせによって、パソコンにセキュリティや消費電力の削減が可能になることをデモンストレーションした。
ToFセンサの役割は距離を測るという機能であり、人間の有無あるいは3次元のイメージングも可能になる。ただし、イメージングと言ってもカメラ画像ほど解像度の高い画像を扱わないため、人間というより動く物体がいることを検出する。
ToFセンサの原理は、基本的に赤外線パルスを対象物に発して、その対象物からの反射パルスを検出、そのパルスの位相差を検出することで距離を測定しようという技術である。赤外線の速度は一定の光の速度であるから、その位相差の違い(すなわち時間差)から距離を求めることができる。ここに測距データを、AIを導入して分類することで新しい応用を拡大できる。
電磁波も光の速度と同じであるから、電磁波を使うとレーダーになる。また、物体の3次元形状を求めようとすると、受信側を例えば16×16画素分のマトリクスに設計すれば、おおざっぱな物体形状がわかる。もっと解像度を上げようとすると発光ビームを絞っているレーザーを使い、さらにそれを空間的に走査(スキャン)するとLiDARになる。
STは8×8マトリックス状の受光素子を作り、手のひらや頭の動きを検出、検知できる応用範囲を広げた。これにより、人が遠ざかったり、頭を動かしたりすることでパソコン画面を見ていないと判断しパソコンの電力を下げ、消費電力を削減する。あるいは、パソコン画面を他人に見られないように守ることもできる。さらにトイレなどの休憩時から戻ってくると自動的にパソコンが起動することも可能だ。
さらにパソコンを見ている人が1人ではなく、2〜3人であることも検出できるため、プライバシー保護の観点から画面をぼやけさせ警告表示することもできる。また手のジェスチャー表示もできる上に、「いいね」あるいは「良くない」を意味する手の動きなども検出できる。また、パソコンユーザーの姿勢が悪いと警告するような姿勢モニタリングでユーザーの健康を守ることもできるようになる。
これらの応用ではToFセンサによって検出された距離データを、AI(ニューラルネットワークによる学習・推論)によって学習し、分類しておく。学習量を減らし、パソコンに搭載してもPCのCPUを使わずに、ToFセンサからのデータを処理する。
STはこれまでもToFセンサを量産してきたが、このほど第5世代のターンキーソリューションとして、8×8のマルチゾーン対応ToF測距センサ(VL53L8CP)に独自AIに基づくアルゴリズムを組み合わせることで、複数人の検出や頭の向きの追跡などの機能を追加できるようになった。




