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旧日立と三菱のマイコンが2009年をメドに新アーキテクチャで統合

ルネサステクノロジは、コード効率を上げCPUの消費電力が0.03mA/MHzと低い、新しいマイクロコントローラのアーキテクチャRXを開発した。これまで旧日立製作所と三菱電機が持っていた、16ビット、32ビットのマイコンシリーズである、H8Sファミリ、H8SXファミリ、M16Cファミリ、R32Cファミリに替わるマイコンとして、2009年の第2四半期に製品化する計画だ。

これまでのルネサスは、旧日立系と三菱系のマイコンを両立させたまま、これまで販売してきた。ルネサス取締役マイコン統括本部長の武部秀治氏は、「この分野は思っていたほどはオーバーラップしていない」とは言うものの、ユーザーも第三者的にもオーバーラップ感はいがめなかった。今回の新しいマイコンシリーズRXは、両社が一緒になって初めてできる共通のアーキテクチャである。


次世代の制御用CPU


このため新しいRXアーキテクチャでは、少ないプログラムサイズで作るソフトウエアや、制御、自動車、民生などさまざまな応用を狙い、CPUの消費電流を0.03mA/MHzと下げた。100MHzのクロックで動作させてもわずか3mAしか電流を消費しない。3.3V電源でも消費電力は10mWときわめて小さい。

プログラムサイズを減らしコード効率を上げることでより少ないメモリー容量でプログラミングできるが、これまでのソフトウエアはそのままでは使えない。このためソフトウエアを変換するための統合環境をチップの製品化と同じ2009年の第2四半期までに用意する。

CISCの基本設計として、さまざまなベンチマークテストを行った結果、コード効率と性能を上げるために最適な32ビットの汎用レジスタ数を16本に決めた。また、既存のCPUの中で使用頻度の高い基本命令の実行サイクルを下げるため、頻度の高い、転送や分岐、比較などの命令長を8ビットに短縮した。命令長はバイト単位で可変にする。逆に高速に処理するための演算に対しては24ビット命令にする。もちろん、コンパイラも最適化を計り、結果的に従来のCPUと比べ30%のコード効率が上がり、プログラムサイズが減った。メモリーは少なくてすむ。

マイコンに搭載するプログラムROMはすべてフラッシュメモリーを使う計画だ。要求によってROMレスにも対応はするが、マスクROM版は作らない。まずは1Mバイトのフラッシュ版からはじめ、順次小容量品と大容量品を加えていく。マイコンに搭載するフラッシュメモリーは自社開発する。

リアルタイム動作が必要な制御系、自動車用途だけではなく、マルチメディア処理も可能にするため、乗算器、除算器、積和演算器を搭載、さらに32ビット単精度の浮動小数点演算器も内蔵する。

プロセスは300mmウェーハを使った90nmの低リークのCMOSプロセスを採用する。製品ファミリとして1.25MIPS/MHzの高性能シリーズと、0.03mA/MHzの低消費電力シリーズの二通りを展開していく。1.25MIPS/MHzと0.03mA/MHzとは必ずしも両立しない。これらは市場ニーズによって切り替えていく。量産時期は2009年第3四半期から第4四半期にかけて予定している。

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