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初めてのファウンドリとクアルコムの新たな戦略

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先週のニュースで最大のトピックスは、日本にもファウンドリビジネスにしっかりとした軸足を置くメーカーが出てきたことであろう。エルピーダメモリは、DRAMの価格低下の激しい動きに対して、UMCと提携してファウンドリビジネスに進出することを決めた。価格変動の激しいメモリー事業と比較的安定なファウンドリ事業の両方を持つことで、経営を安定させるという狙いがある。

これまで日本の半導体メーカーでファウンドリビジネスをやって積極的に顧客を獲得するという企業はなかった。富士通はラティスセミコンダクター社向けの半導体ファウンドリビジネスを手掛けてきたが、それ以外の顧客の名前は積極的に公開しなかった。NECやルネサス、エプソンもファウンドリビジネスをやっていなかったわけではないが、積極的にファウンドリビジネスを展開していることを公言したくなかった。このため、ファウンドリメーカーがこれまで日本にはなかったと言っても過言ではなかろう。

今回エルピーダが積極的にファウンドリ事業に乗り出すことは、日本国内の顧客にとって喜ばしいことではないか。というのは、言葉の問題がある海外のファウンドリに頼る必要がなくなるからだ。

エルピーダはメモリーにも銅配線を入れざるをえなくなってきたため、UMCから技術を導入することを決めたという経緯がある。今回は、ファウンドリビジネスの先輩であるUMCと提携関係をさらに深めるという意味もある。

ただし、ファウンドリビジネスは製造だけに徹していればよいというわけではない。顧客が設計したツールと同じツールで焼いたチップが動作することを保証する、いろいろな設計環境を揃えてどのような客にもサービスを提供できるという体制を作らなければならない。DFMやOPCのツールを揃えるたり、プロセス的にもミクストシグナルへの対応などにも配慮が必要だ。当然、物理設計スタッフが必要になる。エルピーダの手腕に期待したい。

もう一つ、見逃せないニュースがあった。米クアルコム社がアイルランドにあるコンテンツ配信技術会社のシャムテクノロジーズ社を買収したというニュースだ。クワルコムはファブレス半導体メーカーであり、企業そのものは半導体メーカーの一つである。ファブレス半導体メーカーとして最も売り上げの多い企業で、アイサプライの2007年ランキングによると、13位で、NECエレクトロニクスと米フリースケールセミコンダクター社との間に位置する。

しかし、クアルコムは携帯電話技術、特にCDMA技術の基本特許を持っており、3G携帯であるCDMA2000 1x EV DOやW-CDMAなどで圧倒的な優位性を持っている。加えて、ストリーミングコンテンツを非リアルタイムで配信するMediaFLO技術も持っており、今回買収したシャム社はMy Personal Offer System (MPOS)という技術、すなわち消費者の年齢や行動パターンなどから好みを分析し、それに合ったコンテンツを携帯電話やウェエブチャンネルを通じて流すという技術を持っている。クアルコムがシャムを傘下に収めることで、シャムのMPOS技術を使ったコンテンツや広告を、MediaFLO技術を通じて通信業者やブランド広告主が配信できるようになる。

これまでのクアルコムの戦略から見て、ライセンスビジネスを主な収入源としているクアルコムは、コンテンツビジネスそのものに乗り出すわけでは決してない。コンテンツを流す通信業者や大手ブランド企業が流す電子メール広告を消費者個人のターゲットメールとすることで、通信業者や大手ブランド企業からライセンス料をいただくというビジネスモデルを推進しているとみてよいだろう。

このクアルコムの戦略から言えることは、半導体メーカーは半導体をひたすら作っていればよいというわけではない。半導体だけを作っているだけなら、グローバル競争に勝てないだろう。今やソリューションビジネスの時代だから。

サービス産業、コンテンツ産業が必要とする半導体技術のキモを握っていれば、それをいろいろな形でライセンスし、収入を得るというビジネスモデルを自社のポートフォリオに加えることができる。日本の半導体メーカーが技術のキモを持っていないわけがない。ただし、それをどのように生かすかという点について、各社各様のやり方で新たな収入源に加える努力が求められるようになる。大事なことだが、半導体技術こそが、さまざまなサービス産業やインターネット産業、情報産業、ITC産業、通信産業などの技術のキモであることを決して忘れてはならない。


分析:津田建二

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