SK HynixがSamsungに追いつき、Samsungの戦略ミスも明らかに
韓国のメモリ専業メーカー、SK Hynixがメモリ分野でどうやらSamsungに追いついたようだ。7月24日に発表された2025年4〜6月期(2Q)の決算報告では、売上額が前年同期比(YoY)35%増の22兆2322億ウォン(約2兆4000億円)になった。SamsungがNvidiaからHBM開発の依頼を断ったことも明らかになった。先週はその他、米国のAI強化戦略、AWSの中国研究所閉鎖、日欧のレアアース共同採掘など地政学上のニュースが多かった。
図1 Nvidia CEOのJensen Huang氏 2024年11月撮影
Samsungのメモリ売上額はまだ発表されていない(7月31日に発表予定)ため、正確な数字はわからない。しかし、SK Hynixの22.2兆ウォンという四半期売上額は、Samsungが好調だった22年1Qの20.1兆ウォン、2Qの21.1兆ウォン、24年2Qの21.7兆ウォン、24年3Qの22.3兆ウォン、24年4Qの23兆ウォンに匹敵する。25年1Qの19.1兆ウォンをすでに超えている。今期にSamsungが絶好調だったという材料は見当たらないため、Hynixを大きく超えることはないだろう。
Hynixがけん引するのはDRAMチップを縦方向に重ねるHBM(High Bandwidth Memory)メモリである。いわば3D-ICのメモリだ。TSV(Through Silicon Via)で穴をあけて貫通電極とし、4層あるいは6層のチップ(ダイ)を重ねてそれを一つのメモリとする。HBMはバンド幅が広く、しかも大量のデータを一度にアクセスする。このためニューラルネットワークのディープラーニングを計算するのに都合が良く、学習でも推論でもいずれの場合も必要となる。最新のHBM3Eでは12枚スタックという仕様もある。
実は、Nvidiaが2018年にHBMの共同開発をSamsungに求めたことがあったが、それをSamsungが断ったという。韓国の経済紙である「毎日経済」の2025年7月22日付けのウェブ版(参考資料1)によると、NvidiaのJensen Huang CEO(図1)は極秘にSamsungを訪問し、3つの提案を行った。一つはSamsungとNvidiaが共同でHBMを開発しようというもので、もう一つは、Samsungがファウンドリとしての8nmプロセスを共同開発すること、3つ目はNvidiaのソフトウエアエコシステムCUDAを共同で進化させようというものだった。
Samsungは、これら3つの提案をすべて拒否した。Samsung側には長期戦略を担当するものは誰もおらず、Lee Jae-yong会長とも会えなかったという。そこで、Huang CEOはSK Hynixとコンタクトを取り、HBMの共同開発でパートナーシップを形成することになった。Hynixとしても、次世代品だったHBM3EをNvidiaにベストな性能を提供できると期待した。毎日経済が取材した、あるソースは、ファウンドリ契約をSamsungがNvidiaと交わしていたら、TSMCはこれほどまでの独占状態にはならなかっただろうと述べている。
また、先週はハイテク技術の地政学上のニュースが多い週であった。トランプ政権は、AIの競争力を促すため、規制を緩和しAI技術の同盟国に向け輸出を促進する、と25日の日本経済新聞が報じた。トランプ政権はさらにデータセンター建設手続きの迅速化や、政府が調達するAIモデルに思想的制限を加えるという大統領令にも署名した。
Amazon.comが傘下のAWSの中国上海にあるAI研究所を閉鎖したことがわかった、と24日の日経が報じた。Amazon広報担当のブラッド・グラザー氏は、組織などの見直しの結果、特定のチームの役職を廃止する困難な決断をくだした、と述べたという。IBMは3月に中国の研究開発部門を正式に閉鎖し、1000人規模で人員を削減した。Microsoftも同月に上海のAI研究所を閉鎖したと報じられていた。
23日の日経はEUのフォンデアライアン欧州委員長とのインタビュー記事を掲載、日本と「競争力アライアンス(連合)」の関係を結び、レアアース(希土類)の共同採掘をめざす方針を明らかにしたと報じた。レアアースの多くは中国が持っており、市場をリードしているため、日欧が協力してグリーンランドやアフリカでも採掘を模索するとしている。
トヨタは年内にインドネシアに電気自動車の生産を開始すると23日発表した。同国では政府が現地生産のEVに対して手厚い税制優遇策を導入しており参入しやすい。さらにインドネシアでは40%の現地生産比率を満たしたEVは付加価値税の大半が減免され、奢侈(しゃし)税もゼロとなる。中国ではEVの作りすぎによる価格破壊を起こしており 低価格のEVを外国にも輸出している。
参考資料
1. “Factory Popcorn: Jensen Huang visited Korea in 2018 and the 'HBM fate' was turned around then”, 毎日経済ウェブ版、(2025/07/22)



