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貿易対立の強まりを受けて自国の半導体製造を強化する米中

米中対立から、サプライチェーンをできる限り自国に持ってこようとする米中の動きが顕著になってきた。米アリゾナ州のTSMC工場は第2工場がすでに動き出し、第3工場への投資も出ているという。テキサス州でもIT各社による「スターゲート計画」と呼ぶAIデータセンターの街を作る計画がある。中国の自動車は国産半導体を100%に上げる方向にある。国内でもソニーが22nmのラインを動かし始める。

TIのSM1,SM2工場 /Texas Instruments

図1 Texas Instrumentsのシャーマン市にある300mmウェーハのSM1とSM2工場 出典:Texas Instruments


米Texas Instrumentsはこれまで最大規模の600億ドルを米国内の工場に投資していくという計画を発表した。テキサス州のシャーマン市では4つの工場に400億ドルを投資する。まずSM1とSM2の両工場(図1)に投資した後に、SM3とSM4工場に投資する。残りの200億ドルは、テキサス州リチャードソンにある最初の300mm工場のRFAB1と新ファブRFAB2、さらにユタ州リーハイのLFAB1だけではなく建設中のLFAB2にも投資する。

アナログやミクストシグナル、組込プロセッサを得意とするTIは、IT機器のAppleやクルマのFord、医療機器のMedtronic、AIのNvidia、宇宙のSpaceXらとパートナーシップを結び、生産したチップを、これらのユーザーを中心に供給する。さらに米国政府からの支援にも期待する。

6月19日の日本経済新聞は、米アリゾナ州をはじめとする米国のTSMCの工場などをレポートしている。これまでアリゾナ工場の稼働遅れが言われていたが、いつの間にか第2工場が稼働し始め、第3工場の投資もTSMCは計画しているという。アリゾナ州の州都であるフェニックスには「リトル台北」ができ、台北とフェニックスとの直行便も2026年には就航するという。

稼働しているアリゾナ工場と台北とは、残業もいとわない台湾方式が導入されている。仕事の時間も同期していて、米工場では台湾から指示が来ると、米国時間の夜中でも即座に対応するのだと日経は報じている。加えて、後工程と前工程の中間である中工程というべき先端パッケージ工程も米国内で行おうとしているようだ。

TSMCは最近、AIデータセンター向けチップで成長しているが、チップのユーザーたちがテキサス州のアビリーンという街にスターゲート計画を設置すると日経は報じている。OpenAIとソフトバンクグループ、OracleなどがAI時代のデータセンター村を、ここを皮切りに米国内に数カ所建設するという。投資額は今後4年で78兆円だと報じている。

一方、中国はこれまで輸入超過が20兆円以上も超え続けてきた半導体製品の国産化を「製造2025」で民間に呼び掛けてきたが、さっぱり目標には遠く及ばなかった。しかし、トランプ大統領による半導体輸出を制限するようになると、中国は自国で半導体を製造せざるを得なくなった。こうなると半導体を自国で作ろうというプレイヤーが増えるようになり、しかもそのスピードはかなり速くなった。

18日の日経は、「上海汽車集団や比亜迪(BYD)、重慶長安汽車や長城汽車など中国の大手自動車メーカーが、国産半導体を100%搭載したモデルの開発を進めていることがわかった。少なくとも2社が2026年にも量産を始める見込み」と報じた。当局は国産半導体の導入状況を評価し定期的に報告するよう求めるなど各社への後押しを強めているという。半導体の国産化のためにSMICとも協力関係を築き、サプライチェーンを見直しているようだ。

中国のEVスタートアップの小鵬汽車(シャオペン)は、これまでNvidiaの半導体を使った運転支援機能を搭載していたが、SUVの新車「G7」には自社開発したAIチップを使っているという。

国内でもソニーの半導体部門であるソニーセミコンダクタソリューションズは、新しいCMOSイメージセンサの生産を長崎県諫早工場で始める計画を明らかにしたと20日の日刊工業新聞が報じた。イメージセンサそのものはさほど微細化できないが、イメージセンサからの信号を処理するロジックICは現在40nm、22nmを中心に使っており、将来は12nmを採用する方針だという。

(2025/06/23)
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