中国華為科技や小米など自主開発の半導体で力を付けた
米国の中国へ事実上禁輸となっている先端半導体において中国企業が自社開発を積極的に進めている。華為科技(ファーウェイ)や小米(シャオミ)などが一桁nmのチップを設計している。台湾の鴻海精密工業はNvidiaチップによるロボット開発を進め、欧州に半導体組み立て工場を設立する。国内ではラピダスが、JSファウンダリから応援の人員を10名程度受け入れた。
ファーウェイは自社開発のAI半導体を多数のサーバーに搭載し、AI基盤を築いている、と5月23日の日本経済新聞が報じた。米国による半導体の輸出規制によって中国が着実に半導体技術を進化させている。特に設計において2年ほど前に7nmチップを開発しており、このほどシャオミは3nmチップを開発したと発表した。このSoCの開発に4年以上かけ、研究開発に135億元(約2700億円)」を投じたという。ただし、現在のスマホにはQualcommのSnapdragonチップを主に搭載していると、20日の日経は報じている。

図1 NvidiaのBlackwell GPU 出典:Nvidia
ファーウェイの子会社のHiSiliconはすでに7nmチップを設計したことを2年前に発表していたが、それ以下のプロセスノードのチップを設計しても製造できるファウンドリがいない。SMICのプロセスノードは7nmまでできたようだが、Ascend 910Dも7nm程度だと想像する。NvidiaのBlackwellは4nm程度であり集積規模としてはBlackwellの方が高いため、ファーウェイはその分、数量を増やしAI性能を上げている。
半導体チップを効率よく動かすためのソフトウエアに関しても、23日の日経は、「ファーウェイは『簡単にアクセスできる開発リソースと使いやすい開発ツールを充実させ』(同社)てきた。AIエンジニア向けのサポート体制を整え、24年末時点で4万人超をトレーニングしたと公表。20年に公開した同社の開発基盤「マインドスポア(昇思)」は、中国国内での利用シェアが30%になった」と報じている。
通信機器を中核とするファーウェイはAIを通信機器に載せてトラフィックの自動管理や最適化などに使うだけではなく、データセンター向けにクラウドビジネスも狙っている可能性がある。世界の通信機器メーカーもAIを導入、通信業者に納めているが、通信業者は「俺たちはドカン屋ではない」という思いが強く、通信ネットワークを構築するだけではなく何らかのサービスも提供したいという思いがある。通信基地に設置する大量のサーバーを利用するという訳だ。ここに通信機器メーカーであるファーウェイが乗り出す可能性が高い。
Bloombergによると、Ascend半導体を世界中どこであっても使うことは米国輸出管理規則に反するとトランプ政権が発表したのに対して、中国政府はスイスでの貿易協議を台無しにすると、避難した。その後、「世界中どこであっても」という文言は削られたものの、中国は納得しなかった。
台湾の鴻海は、Nvidiaと共にフィジカルAIというべきAIロボットを開発する、と22日の日経が報じた。現在のロボットはソフトウエアプログラムで決められたことしか実行できないが、AIを導入することにより自律性を高められる。さらに対話型ロボットだと生成AI導入により人間らしい対話が可能になる。鴻海の劉揚偉・董事長(会長)は20日、Computex 2025で、ロボットが従来の「手」や「目」の役割を超え、今後は「頭脳」を担うようになると述べた、と22日の日経が報じた。
国内では、半導体製造装置メーカーのKokusai Electricが先端パッケージ技術の開発を本格化させる、と23日の日刊工業新聞が報じた。これまでのプラズマ成膜装置のような製造装置に加え、AIチップ向けの先端パッケージ技術にも力を入れる。同社はすでにインターポーザー向けの装置も持っており、これにさらにほかの製造装置を加えるようだ。
2nmプロセスを量産化しようというラピダスは、アナログやパワー半導体向けのファウンドリを担っているJSファンダリから人員を受け入れていることがわかった、と22日の日刊工業が報じた。2nmのパイロットラインの立ち上げを急ぐラピダスと、工場の稼働率が低下してきたJSファンダリとの利害が一致した格好だ。JSファンダリは投資ファンドのマーキュリアインベストメント、産業創成アドバイザリーなどが出資して設立したファウンドリ。元三洋半導体の新潟工場を取得・稼働させていたonsemiから買収した。


