トランプ対中政策の一環、サウジ訪問でNvidia、AMDが市場参入へ
米トランプ大統領の関税、対中政策などの思惑からNidiaやAMDなどテクノロジー企業のトップもアラブ訪問へ同行している。一方中国としてもハイテクの切り札、ファーウェイの技術力の高さにNvidiaトップも警戒している。ファーウェイの実力が垣間見えた。そして、キオクシアの決算が発表され2024年度(2025年3月期)は黒字に転換したものの営業利益率が10.8%に留まっている点が気にかかる。
テック企業のアラブ訪問は、中国に代わる市場を求めるためのトップセールスの意味がある。これからのAIは世界共通のテーマであり、各国が一刻も早くAIを自国で応用し展開したいのだ。アラブ側もオイルだけにいつまで頼れるのかわからない。このためハイテクには進出する構えだ。米GlobalFoundriesがUAE(アラブ首長国連盟)のアブダビの資本を導入したことは有名な話である。
5月15日の日本経済新聞によると、今回Nvidiaは訪問先サウジアラビアに対して、先端AIチップを搭載した大規模なサーバーを供給すると発表した。最新のGPUである「Blackwell Ultra」を1万8000基搭載するという。今後5年間で数十万基分の先端AI半導体を積んだAIインフラを構築すると明らかにした。また、AMDもサウジのAI開発企業と連携し、同社のAI半導体を使ったインフラを構築すると表明した。事業計画の投資規模は最大100億ドル(約1兆4700億円)という。
Nvidiaは米国政府による対中禁輸政策で独自に対応してきた。3年ほど前に開発したGPU「H100」では、中国向けには機能を落とした「H10」を中国向けに出荷していた。高性能なH200に対しても同様でH20を中国向けに出していた。しかし、予想通りH10もH20も禁輸の対象となり、Jensen Huang CEOはH20からさらに性能を落としたGPUを中国向けに出荷することを先月の北京訪問で画策していた。中国側もDeepSeekを始めこぞって低機能版を大量購入し始めていた。Nvidia側は中国に代わる新市場として大統領と共にアラブを訪問したのである。
中国側も米国からの半導体技術が入ってこないリスクに対処するため、独自に設計技術や製造技術を開発中だ。設計ではファーウェイの子会社であるHiSiliconがデュアルチップセットのAI半導体「Acend910C」や光ファイバ接続技術、独自ソフトウエアを開発、これをAIサーバーに組み込んだ「CloudMatrix 384」を披露した。電力効率はNvidiaの最新サーバーGB200 NVL72よりも2.3倍高いという。

図1 昨年9月にファーウェイが発表したCloudMatrixシリーズのAIサーバー この時は具体的な製品は何もない 出典:Huawei
一方でファーウェイの2024年10〜12月期の最終損益が約4億元(80億円)の赤字だったと14日の日経が報じた。AI用の半導体開発やPC/スマートフォン向けの独自OSなどの開発に費用がかかったためと日経は見ている。
キオクシアは、5月15日に2025年3月期の第4四半期の業績を発表した。売上額は前年同期比(YoY)7.8%増の3471億円、営業利益は利益率10.8%の375億円だった。製品の応用別では、スマホなどのスマートデバイス部門がYoY29.2%減の796億円、SSD&ストレージ部門がYoY32.5%の2152億円、その他(SDメモリカードやUSBメモリなど)523億円となった。稼ぎ頭はSSD&ストレージ(データセンター、PC)となっている。PCはまだ需要が弱含みだが、データセンターが好調。
2024年度では、売上額は前年度比58.5%増の1兆7065億円、営業利益率は4530億円(営業利益率26.5%と立派な数字となった。次の四半期(2025年度第1四半期)の見込みだが、売上額は2950〜3250億円と見ている。PCとスマホの在庫調整は徐々に収束しつつあるものの、NANDフラッシュの新世代への移行に向かう需要が押さえられていると見ている。エンタープライズとデータセンター需要は堅調だとしている。


