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SamsungのDRAM、SK Hynix全社が23年第4四半期に黒字化に転換

先週、2023年第4四半期(4Q)におけるSamsungの決算発表があり、SK hynixと共にメモリトップ2社の4Q業績が明らかになった。これによるとSamsungのDRAMはすでに黒字に転換したと述べ、NANDフラッシュはまだ赤字のままのようだ。DRAMはAIチップとセットで使われるため、生成AI向けに需要の回復が早い。NANDの回復は遅れているようだ。

2023年4Q(10〜12月期)におけるSamsungの半導体全体の売上額は、21兆6900億ウォン(1米ドル=1338ウォンとして162億ドル)、その内メモリは15兆7100億ウォンであった。営業利益は、半導体全体で2兆1800億ウォンの赤字だが、その数字の内訳は公表していない。2月1日の日本経済新聞によると、「DRAM単体では既に黒字化したと強調した。ただ同社の半導体売上高のうちDRAMの比率は4割超にとどまる。残りのNANDやLSI、ファウンドリ事業の赤字が重荷で黒字転換に時間がかかっている」。DRAM以外はまだ赤字だと述べており、メモリ全体でもまだ赤字のようだ。

Samsungのモバイル部門は世界市場において、2023年全体でも2023年4QでもAppleに抜かれ、いずれも出荷台数はそれぞれ-13.5%、-10.9%と振るわない(参考資料1)。国産品愛好の傾向が強い中国市場ではすでにトップ5社からも姿を消した。対照的にAppleはそれでも23年4Q、2023年全体とも中国市場でトップの座を占めている(参考資料2)。ディスプレイと半導体を除くSamsungのセット部門は落ち込み幅が少ないものの前年同期比、前四半期比ともマイナス成長であるが、半導体とディスプレイは共にプラスであり、回復傾向が明らかになっている。

次の四半期の見方に関しては、パソコンやスマートフォンの在庫調整が進み、少しずつ回復してきているが、ビット容量への要求はまだ高まっていないという。ただ、HBM3(High Bandwidth Memory 3)やサーバSSD(Solid State Disk)など高付加価値製品に注力していくと述べている。2024年全体ではAIパソコンに期待しており、AI専用回路と共に使われるため、そのビット容量の増加に期待している。


Company Plan / SK hynixの決算資料から

図1 SK hynixの24年プラン 出典:SK hynixの決算資料から


一方、先々週に発表されたSK hynixの2023年4Qの売上額は11兆3100億ウォンで、前四半期比25%増、前年同期比47%増となり、営業利益も22年4Qから続いていた赤字から抜け出し、ようやく3500億ウォンの黒字となった。DRAMの平均単価(ASP)が前四半期比10%台の増加となり、NANDフラッシュのASPも同40%増となり黒字化に転換した。DRAMはまだ一桁増だが、ビット容量も増加し始めている。ただ、NANDフラッシュのビット容量はまた一桁%減の状態だという。

メモリ専業メーカーといえるSK hynixは、AIメモリの需要をうまくつかみ黒字化をSamsungより早く達成した。特にDRAMメモリを3次元にスタックするHBMは、製造コストが高いため、開発に尻込みするメモリメーカーを横目にしながら孤軍奮闘してきた成果が実を結んだ。特に生成AIにはAIチップに使う高速並列処理が必要なためバンド幅の広いHBMがぴったり合っていた。HBM3の次の製品HBM3Eの準備も怠らず2024年の強い需要に応えていく。さらにその次のHBM4の開発も進めていくとしている。

HBMよりも安価なDDR(Double Data Rate)DRAMにも力を抜かず、AIパソコン向けに大きな需要を期待している。特に256GBまでのDDR5まで広げていく。モバイルにもAIが導入されるため、それに向けたLP(Low Power)DDR5Tの16GB〜24GBのメモリ製品を提供していく。

Samsung、SK hynixとも高性能サーバ向けにはMCRDIMM(Multiplexer Combined Ranks Dual-Inline Memory Module)、モバイル向けにはLPCAMM2(Low Power Compression Attached Memory Module 2; 参考資料3)をAIチップ市場向けに出荷していく予定だ。

なお、第3のメモリメーカーMicronは11月末までの業績しか発表していないため、直近の様子がわからずここでは省略した。

参考資料
1. "Apple Grabs the Top Spot in the Smartphone Market in 2023 along with Record High Market Share Despite the Overall Market Dropping 3.2%, According to IDC Tracker", IDC (2024/01/15)
2. "Apple Captures the Top Spot in the China Smartphone Market in 2023 for the First Time Ever, Despite the Overall Market Dropping 5.0%, According to IDC Tracker", IDC (2024/01/24)
3. 「DIMMよ、さらば、Micronが新型メモリモジュールLPCAMM2をサンプル出荷」、セミコンポータル (2024/01/24)

(2024/02/05)
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