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2023年の製造装置は成長か、一時的な落ち込みか、意見の分かれる二つの予測

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2023年度には半導体製造装置の予測が分かれている。7月1日にSEAJ(日本半導体製造装置協会)は、2022年度、2023年度ともそれぞれ4.7%、4.8%のプラス成長を果たすとの予想を発表した。一方、米市場調査メディアのSeeking Alphaは、2023年には半導体製品の供給過剰により製造装置業界は大きく落ち込むだろうと予測している。

SEAJが4月〜3月の年度をベースにした予測(参考資料1)に対して、Seeking Alphaのそれ(参考資料2)はカレンダー年を対象にしたもので期間に多少のずれはあるとはいえ、見方が大きく異なっている。SEAJの発表はSEAJ総意としてまとめたもので、2021年度は前年度比22.5%増の2兆9200億円と予想している。これは最新のWSTSの前年比19.7%増という予想や、一般的なコロナ禍におけるテレワーク需要、将来のカーボンニュートラルをはじめとするトレンドを加味した形で22年度、23年度もプラス成長としている。

これに対して、Seeking Alphaは、現在の半導体チップの供給不足を中心に議論しており、供給不足が解消されるのは22年だろうとして、23年には供給過剰に転じると予測している。これは、DRAM不足が叫ばれた2000年のITバブルの状況に現在が似ているとの立場から、2023年には製造装置はメルトダウンする、と表現した。

1998年10月にGartner(その後のDataquest)が2000年にはDRAMが供給不足になる、というレポートを出し、製造装置市場は2000年に236億ドル、2001年にはさらに伸びて353億ドル、2002年には394億ドルと予測した、というのである。しかし実際にはそのようにならず、2001年のDRAM単価が80%低下し売り上げは140億ドルと2000年の半分にも満たない売上額に落ち込んでしまった。この時と今がよく似ているというのである。2000年に製造装置の毎月の金額の立ち上がり角度が2021年と2000年でよく似た急カーブを描いていると指摘した。

2021年における状況は半導体メーカーにも現れており、SEMIの数字では2021年末までに世界中で19の新しい半導体量産工場の建設が始まり、22年にはさらに10のファブが建設される。これらの29の新しいファブは月産260万枚の生産能力を持ち、その内15ファブが月産3万〜22万枚のファウンドリ工場で、4ファブが同3万〜40万枚のメモリ工場だとしている。

現在、半導体不足と中国への制裁が、2023年の供給過剰につながる起爆剤と見ているが、バイデン大統領の520億ドルの米国での製造強化方針がそれを後押しするとしている。半導体メーカー側も、Intelのアリゾナ州での2工場に200億ドル投資、TSMCとSamsungも米国で370億ドル投資することを表明している(注)。GlobalFoundriesは本社をニューヨーク州アルバニー近くのマルタに移転させ、シンガポールに40億ドルを投資する。こういった新工場の建設が完了し、稼働する頃には供給過剰になると見ている。

いずれの見方が正しいか、時間が断たなければわからない。Seeking Alphaに投稿したRobert Castellano氏のデータの数字には整合性の取れない箇所がいくつか見受けられ、数字の信ぴょう性に問題はあるが、考え方は一貫している。一方、SEAJの数字は委員会や理事・監事会社20社の総意というだけで予測の具体性ははっきりせず、半導体産業の大きな流れと捉えている。

短期的には、半導体の供給不足を考慮に入れるべきだろうが、中長期的にはニューノーマル時代のテレワーク需要の定着、非接触技術の台頭、そしてAI、IoT(DX:デジタルトランスフォーメーションともいう)、5Gなどの新技術による需要創出がスマート社会、スマートシティ、スマート工場などあらゆる賢いシステムの創出へと導かれることは間違いない。つまり半導体ビジネスの没落は全く見えない時代に来ている。むしろ長年半導体産業に携わる海外の人たちは、むしろこれからが半導体の重要な時代に入ると見ている。



Seeking Alphaの資料では230億ドルとなっているが、すでにTSMCは200億ドル(https://www.cnbc.com/2021/04/01/tsmc-to-invest-100-billion-over-next-3-years-to-meet-chip-demand.html)、Samsungは170億ドルを投資(https://koreajoongangdaily.joins.com/2021/05/22/business/industry/Samsung-Electronics-SK-Joe-Biden/20210522004601892.html)することを発表しており数字が合わないので、発表された数字を使用。

参考資料
1. 2021年7月発表 半導体・FPD製造装置需要予測(2021年度〜2023年度) (2021/07/01)
2. Applied Materials: Tracking A Likely Semiconductor Equipment Meltdown In 2023 (2021/06/25)

(2021/07/05)

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