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パナソニック、全ての半導体事業を売却

国内半導体産業に激震が走った。パナソニックがファブレス、ファウンドリを問わず全ての半導体事業を台湾企業に譲渡する、と発表した。譲渡先は、台湾の半導体メーカーWinbond Electronics傘下のNuvoton Technology社。2020年6月1日に手続きを終える予定だ。パナソニックは半導体を捨てる以上、製品やサービスの差別化をどのようにして図るのだろうか。

11月29日の日本経済新聞によると、事業子会社の全株式を2億5000万ドルで売却するという。パナソニックは、半導体製造工場をTowerJazz Semiconductorとの合弁会社TPSCo(TowerJazz Semiconductor Co. Ltd.)を共同運営していた。魚津と砺波、新井の3工場で200mmおよび300mmのウェーハプロセスを運営してきた。いわば、TowerJazzの日本の拠点となっていた。これらの工場も手放し、これからはTowerJazzとNuvotonとの共同運営会社となる。

製品では、CMOSイメージセンサやクルマ向けのバッテリ管理IC(BMIC)や保護ICなどをほそぼそと設計していた。特に、2018年に発表した有機CMOSイメージセンサは、ベルギーの半導体研究所であるIMECの研究テーマにも入っており、User Interfaces & Imagers担当でProgram ManagerのPawel Malinowski氏も、パナソニックの有機CMOSイメージセンサは赤外線センサ薄膜と一緒に集積できる有望な技術だ、と筆者に語っていたほど、これからのCMOSイメージセンサにとって重要な技術であった。これをみすみす手放すことになる。売却先のNuvotonも親会社のWinbondもこの技術を手に入れるだけでも極めて安い買い物になりそうだ。

これまでパナソニックは、テレビ事業部が極めて強く、テレビ事業部向けの民生用ICを設計製造していた。しかし、テレビ事業そのものがアジア勢に負けたことに気がついた時はリーマンショック後であり、テレビ事業本体の売上額が低下したため民生用IC・半導体も売上額が低下していた。2014年にTPSCoを設立した時も、本来ならさまざまな要求を受けてファウンドリ事業をやっているはずだった。しかし、製造していた半導体チップはパナソニックからの要求によるものがほとんどだったという。これでは半導体事業は黒字にはならない。設計プロセスに熟知したセールスエンジニアを確保していなかったために、パナソニック以外の企業からの注文に結び付かなかった。

加えて、パナソニックは、テレビや録画機などのAV分野から車載・産業分野へのシフト、という掛け声が勇ましかったものの、車載分野といってもバッテリ事業がほとんどで、IC事業はPMIC(パワーマネジメントIC)やBMIC程度しかなかった。未来に向けたICのトレンドに関しても同社の役員はほとんど関心を示さなかった。

パナソニックの製品設計部門であるパナソニックデバイスシステムテクノ(PIDST)と、ウェーハ工場の管理や評価技術などを手掛けるパナソニックデバイスエンジニアリング(PIDE)も売却する。要は全ての半導体事業をNuvotonに譲渡する。

今やどのようなエレクトロニクス製品にもハードワイヤードIC(専用IC)は減少しており、プログラム可能なマイコンやSoC、FPGAなどのデバイスを使う「組み込みシステム」が主流になっている。このため、製品を差別化するのがソフトウエアか、専用回路(FPGA)しかなくなっている。パナソニックは、どのようにして製品を差別化するのか、半導体の理解から遠ざかれば遠ざかるほど、成長からは遠ざかることになる。

パナソニックのPMIC(電源回路)はエレクトロニクス機器の心臓のポンプのように安定化電圧を供給するが、モバイル機器からデータセンターのサーバ・ストレージ機器に至るどのような機器にも欠かせない。車載用や産業用には、極めて多くの種類のPMICが必要で、需要がこれからのデジタルトランスフォーメーション時代には欠かせないが、それらの市場を見つけ拾えなかったようだ。では、本体のパナソニックはこれからどうやって成長していくのか、その道筋はいまだに全く見えない。

(2019/12/02)
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