メモリ立ち上がり製造装置は一服、5G向け材料・チップも登場
世界の半導体株が売られていると日本経済新聞の9月8日に報じられたが、短期的な売りであり、しかも半導体チップというよりもメモリ投資が一段落したことが裏にある。この結果、製造装置が一段落した。チップの方がむしろ好況を維持している。AI、IoTだけではなく5Gへの動きが材料業界にも加速しているからだ。
日経は、東京エレクトロンの株価が7日の東京証券取引所で一時7%安となり、SCREENホールディングスやアドバンテスト、東京精密やアルバックも7〜8%安となった、と報じた。全て半導体製造装置・検査装置メーカーである。さらに、アジア市場では韓国のSamsung、SK Hynixもそれぞれ3%、4%安を付けたとしている。こちらはメモリメーカーである。米国でも米Micron TechnologyはNANDフラッシュの価格が下落するとの見通しを示した。
この報道の裏は、NANDフラッシュの歩留まりが上がり、供給体制が整い、順調にメモリ単価が下がり始めた、ことを示しているだけである。9月7日の日経は、NANDフラッシュを大量に使うSSD(半導体ディスク)の7〜9月期の価格が前四半期比で5〜6%値下がりしたと報じた。512GバイトのSSDは5%下がり124ドル前後となり、256Gバイト品は6%低下の64ドル前後となったとしている。
昨年はNANDフラッシュへの製造装置を大量に発注しても歩留まりが悪く、思うように生産量が上がらなかったが、今年は歩留まりが上がりメモリを量産できるようになりつつある。メモリの値下がり=半導体株が売られ不況、という図式は成り立たない。メモリは値下がりすれば需要が増えるからだ。メモリを使う応用機器が増えるだけではない。1台に搭載するメモリ容量を増やすからだ。昨年はメモリ単価が上がりすぎてメモリ容量を増やせないままデバイスを値上げしてきた。このためスマートフォンもコンピュータも売れなくなった。
メモリの値下がりは、むしろIT産業にとっては好況になる方向だ。また、半導体のけん引役であるスマホやパソコンが伸びることは、メモリ以外の半導体企業や電子部品企業にとって、むしろ望ましい。
まだ半導体の売上額としては小さすぎて計上されていないが、AIやIoTだけではなく5Gに関してもデバイスは動き出している。5Gはまず3.5GHz帯、4.5GHz帯から始まり、28GHz帯、30GHz以上のミリ波へと高周波化は進む。5Gの3大特長である、10Gbpsのデータレート、1ms以下のレイテンシ、そして多種類のデバイスとの接続、を実現するうえではっきりしていることは高周波化である。しかも5G通信はサービスが始まってから高周波化や高データレート化、短レイテンシ化が進化していく。このため2030年ころまでは5Gが続くとみられている。
5Gに向けた高周波化に対応するため、National Instruments AWR部門の設計ツールや低誘電率の基板材料の開発などの動きがみられている。AWRのインタビューは後日、記事で紹介するが、AGC(旧旭硝子)は通信モジュールの基板材料にはフッ素入り樹脂「EA-2000」の製造設備を千葉県市原市の千葉工場に新設する、と7日の日経が伝えた。これからの5G通信向けの28GHz帯の高速高周波向けプリント基板材料として「EA-2000」を使うと、従来比で電気信号の劣化を30%以上減らせる、という。
5G通信業者であるKDDIは、外部企業と組んで新サービスを開発するための拠点「KDDIデジタルゲート」を東京都港区で開設した、と6日の日経産業新聞は伝えた。IoTデバイスを通信網につなげるソラコム社やデータ分析のアライズアナリティクス社などの子会社も得意分野を生かし、必要に応じて支援にあたるとしている。
三菱電機は、光変調器を集積した半導体レーザー「25Gbps EML CAN」を5G通信の基幹基地局向けに開発したと発表した。これは5G基幹基地局同氏を結ぶ光ネットワークや基幹基地局内の通信装置に使う素子であり、最大データレート25Gbpsに対応する。これは9月5日の日経産業に掲載された。