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決められない東芝をしり目に新技術続出

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東芝メモリを巡る報道は止まらない。9月7日の日本経済新聞は6日の東芝の経営会議ではWestern Digitalの新提案を協議しても結論に至らなかったと報じた。決められない東芝経営陣をしり目に東芝からの人材流出が相次ぐ一方で、ASMLの好調、パイオニアのMEMS利用の超小型LIDAR開発、クルマ市場などのニュースが相次いだ。世界の動きは速い。

東芝メモリの売却を巡り、WDは1500億円を出資して存在感を高めれば独占禁止法(中国)が通りにくくなるとして、資金拠出を見送り減額分を補うためにAppleに500億円強の資金を拠出させる修正案が明らかになった。これは8日の日経が報じたもの。東芝社内には、訴訟合戦などの経緯からWDに対する警戒感がなお根強く、将来のWDの関与を薄めたいとの考えだと報じているが、これが事実だとすれば、実際にWDと一緒に現在も工場を運営している現場(東芝メモリ)にとってははた迷惑な話だ。

このような中、東芝は東芝小会社の北上工場を拡張する形で、NANDフラッシュメモリの工場を建設する準備を始めると発表した。半導体工場近くの地権者と交渉を始め、2018年には新棟の建設を始める計画だ。うわさ情報だが、WDが海外にNANDフラッシュの工場建設を東芝経営陣に迫ったと言われ、東芝は海外ではなく岩手県に工場を作ることを決めたという。海外の半導体ユーザー企業は、セカンドソースとしての供給責任を果たす意味で、1ヵ所に巨大工場を作ることを好まない。リスク分散の意味では国内よりも海外の方が有効ではある。

いつまでたっても決められない経営陣は、自分らが全く関与しない東芝メモリを机の上で議論しているだけで、まるで踊る会議を延々と開いているようだ。そのような中、9日の日経には「東芝、止まらぬ人材流出、半導体社員に突然のスカウト電話、再建の担い手離反」と題した記事が掲載された。4月〜6月末の3ヵ月間で1000人前後が減っているという。巨額の損失を出した原子力部門でも日立や三菱への人材流出が続いているとする。

最先端の半導体では、IntelやSamsung、TSMCなど半導体製造会社が7nmプロセスの量産機のためにEUV装置を購入し始めている、と5日の日経が報じた。EUVの開発には巨額の投資が必要で、このためにASMLはIMECを始め、Intelなど半導体メーカーと共同で開発してきた。これに対し、大きな投資に二の足を踏んだ、かつてのトップメーカーのニコンやキヤノンはEUV開発を中止してきた。

8日の日経産業新聞が小さく報じたが、パイオニアはMEMSミラーを使ったLIDAR(Light Detection and Ranging)を開発、国内外の自動車メーカーやティア1メーカーにサンプルを供給する。LIDARは、Googleカーの屋根の上に乗った円柱状の装置が典型的なもの。実態は測距センサで、クルマの周囲360度〜120度にある物体との距離を測り障害物を検知する。従来のLIDARは比較的大きなポリゴンミラーを使って、周囲を見渡す角度をスキャンしていた。しかしこれでは大きすぎて小型化できない。そこで、MEMSミラーを使ってある程度の角度範囲に渡る物体をスキャンする技術が求められていた。パイオニアの装置は360度カバーしていないようだが、小さいためクルマの4隅に設置できそうだ。

LIDARは自動運転には欠かせない装置であり、パイオニアは路線バスの運営会社である、みちのりホールディングスとバスの自動運転化に向け実証実験を行うことで合意している。

電子部品のスマホに代わる市場として自動車業界に目を付けているのが国内運用会社だ、と9日の日経が報じた。スマートフォンではこれからも電子部品が大量に使われることははっきりしているが、大きな年率成長は見込めない。このためクルマへの応用を狙っていると報じているが、クルマの電子化が進むにつれ、電子部品も半導体もますます増えることは間違いない。

クルマの電動化は進んでいるが、日産自動車が新型「日産リーフ」を6日発表した。AppleのCarPlayを使ったフロント画面はまるでiPhoneの画面。液晶をフロント以外のダッシュボードやバックミラーにも使い、エレクトロニクス化を全面に打ち出している。液晶ダッシュボードはメータ式の電池残量計とスピードメーターの画面を常時表示している。バックミラーは通常のミラーにも切り替えられるが、後部座席に大きな荷物を置いても、イメージセンサカメラによってクルマの後方を広い視界で見ることができる。また、従来24kWhだったバッテリ容量を40kWhに増強し、航続距離を従来の280kmから400kmに伸ばした。

(2017/09/11)

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