セミコンポータル
半導体・FPD・液晶・製造装置・材料・設計のポータルサイト

2015年度決算は好調だが、直近が落ち込み始めている

|

ゴールデンウィーク前の先週は、部品やエレクトロニクス・製造装置などのメーカーの2016年1〜3月期と2015年度(2016年3月期)の決算報告があった。日本経済新聞および日経産業新聞が4月26日、28日にスマートフォンの軟調による部品メーカーの減収を報じている。この1〜3月期の落ち込みが大きいものの、年間では成長したメーカーが多い。

2015年度における決算は、日本を代表する部品メーカーと製造装置メーカーは好調だったが、セットメーカーは相変わらず良くない。村田製作所の決算は増収増益だった。売上額は前年比16%増の1兆2108億円、営業利益は28.4%増の2754億円となった。売り上げに対する営業利益率は22.7%と好調だ。東京エレクトロンも好調で増収増益を記録した。売上額は8.3%増の6639億円、営業利益は32.5%増の1167億円となった。しかし、パナソニックもソニーも減収増益という、経費削減による利益増を示した。

セットメーカーのパナソニックは、2015年度の連結売上額が2.1%減の7兆5537億円、営業利益が8.9%増の4157億円となった。この増収減益の要因は、固定費や、原価低減、事業撤退などを削減した結果である。残念ながら、新しい成長のエンジンがまだ見つかっていないが、クルマ分野へは期待している。クルマのインフォテインメント系には開発費をかけているだけに財務面での結果はまだ出ていないが、「受注が進んでいる」と津賀一宏取締役社長は述べている。ソニーも2015年度の売り上げは前年度比1.3%減の8兆1057億円、営業利益は同4.3倍の2942億円となった。東芝は、メディカル部門の売却が決まり、入金が見込めるようになったため、2015年度の業績を修正する見通しを発表した。まだ確定値ではないが、それによると売上額は5兆5000億円で、営業損益は6900億円の赤字になる見込み。いずれも2月4日に見通しを発表した時の数字よりも悪くなっている。売上額は7000億円のマイナス、営業損益は2600億円のマイナスとなっている。

28日の日経は、直近の1〜3月期におけるiPhoneの不振を伝えている。Apple社の2016年1〜3月期の連結決算では売上額が前年同期比13%減の5050億5700万ドル、13年ぶりの減収となった、と報じた。Appleの製品をけん引するiPhoneの販売台数は、前年同期比16%減の5119万台だったとしている。最大の理由は、中国市場での落ち込み。中国市場での売上額は前年同期の71%増から26%減に転じた。純利益は22%減の105億1600万ドル。

部品メーカーのアルプス電気は16年1〜3月期の連結営業利益は前年同期比41.4%減の75億円と落ち込み、京セラや日本電産の売上額も前年比で減少した。好調だった村田製作所も1〜3月期の売り上げは横ばいだが営業利益は落ち込んでいる。

ソニーの16年1〜3月期の売上額は、スマートフォンのモバイル・コミュニケーション部門が37.9%減の1832億円、CMOSセンサのデバイス部門は15.5%減の1899億円と減収で、営業損益はそれぞれ421億円、799億円の赤字となっている。パナソニックは4半期別業績を発表しなかった。製造装置の東京エレクトロンも前年同月比で売上額、営業利益ともマイナスで、それぞれ9.7%減の1642億円、16.4%減の300億円となっているが、受注額はわずかながら増収となっている。

以上のように、2015年度では成長したが、直近は軒並み業績が落ちている。最大の要因はスマホの低迷であり、スマホ依存の大きい製品ほど打撃は大きい。特に中国市場の落ち込みは予想外に大きいのではないか。というのは、中国文化として、最初は安い製品に飛びついても低機能によって飽きるため、すぐに高級品へ移行してきたからだ。小米科技が2〜3年前に一世を風靡したが、中国のコンシューマはすぐにiPhoneに飛びついた。ところが、直近になってiPhoneが急に売れなくなり、スマホ市場が飽和すると同時に再び安物へとシフトし始めている。スマホ市場としては在庫が減少し、1〜3月は徐々に良くなると見られていたにも関わらず、売れなくなった。

つまり、中国の経済指標の一つとなっている外貨準備額は1カ月に数百億ドル(数十兆円)単位で減少してきた。1月末には前月比995億ドルも減少し、2月末には同286億ドル下がった。しかし、3月にはしばらくぶりに103億ドル増加した。26日の日経は、4〜6月期も電子部品・材料の取引価格は下落基調が続くとみているが、3月の外貨準備高の増加は明るいニュースにはちがいない。4月の数字はまだ出ていないが、この状況が続けば、中国市場は回復に向かっていると見てよいだろう。ただし、一時的な状況かもしれないので、正確な判断はまだできない。

(2016/05/02)

月別アーカイブ