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今年の半導体設備投資は下方修正でも前年比21%増の1855億ドル

2022年の半導体設備投資額は、前年比21%増の1855億ドルとなりそうだ。年初の予想1904億ドル(参考資料1)よりも若干低下したものの、前年より324億ドルも多いという予想である。これは米市場調査会社IC Insightsが発表したもの。ただし、図1の上段にある2008-2026Fの中の2026Fは2022Fの誤りである。Fは予想(Forecast)を表している。

Worldwide Semiconductor Capital Spending Trends(2008-2026F) / IC Insights

図1 半導体設備投資額の推移 年初より下方修正しても前年比21%増 出典: IC Insights


半導体在庫がスマートフォンやパソコンなどの民生機器では解消されてきて、供給過剰を迎えつつあると思われた。しかし、短期的に供給過剰となっても長期的には半導体の成長は間違いないことを多くの半導体メーカーやファウンドリが理解している。このため一時的に供給過剰になることに対して、今の所、ブレーキはほとんどかかっていない。TSMCは2022年6月期における決算発表の席上で、2023年のCapex(設備投資)見通しを$40〜44Billionとしており、恐らく$40Billionに近い側だろうと述べたが、下方修正したわけではない。

また、Applied Materials、ASMLに次ぐ世界第3位の半導体製造装置メーカー、の米Lam Researchは3Q(9月期)の見通しを$4.9B±0.3Bとしており、Q1(3月期)の$4.06B、Q2(6月期)の$4.64Bと徐々に販売額を増加させている。1位のAppliedは、決算期がカレンダー年とは異なるが、先日2022年度第3四半期(5〜7月期)の発表を行い、前年同期比5%増、前期比4%増の$6.52Bと過去最高の売上額を示した。さらに次の四半期(8〜10月期)の見通しも発表、売上額は$6.65B±0.4Bと、さらなる過去最高を見積もっている。

今年の上半期におけるIDM(設計から製造まで一貫生産する企業)の多くが90%以上の工場稼働率のままだが、ファウンドリの多くは100%に達している。新型コロナからの経済回復によって堅調な市況を示している。

一方で、中国でのロックダウンや中国経済の低迷、ロシアウクライナ戦争などの情勢によって世界経済が下降気味である影響により、メモリはすでに値下がりしており、これまでのような上り調子が続くと見ている関係者はほとんどいない。ただし、一時的にスローダウンはあるだろうが、それほど長くは続かない。むしろ次の半導体販売額のピークに向けた設備拡張や工場新設を念頭に入れたCapexが今年21%増になると見てよいだろう。

参考資料
1. 「2022年の半導体設備投資は前年比24%増の21兆円を超える見通し」、セミコンポータル (2022/03/02)

(2022/08/24)
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