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磁気センサの世界市場トップは旭化成エレ、アイサプライ最新の調べ

2012年6月19日のブログ「大和田敦之の視点:隠れたチャンピオン企業」(参考資料1)で語られたように、旭化成エレクトロニクスが2011年の磁気センサ市場で売上トップであることが米IHS アイサプライ(iSuppli)の調べでわかった(参考資料23)。15億ドルの磁気センサ市場において、旭化成エレの売り上げはおよそ1/4に相当する3億7200万ドルと見られている。

表1 磁気センサのトップテンランキング 出典:IHS iSuppli

表1 磁気センサのトップテンランキング 出典:IHS iSuppli


2011年の旭化成エレの売り上げは前年比24%増と向上し、磁気センサ市場全体の伸びである22%を超えている(表1)。同社はホールセンサおよび磁気センサ用ICを得意とし、最近のスマートフォンやタブレットに内蔵されている3D電子コンパス向けデバイスの売り上げが大きく貢献している、とアイサプライは見ている。

2位の米マサチューセッツ州Allegro MicroSystemsは、昨年民生用から自動車用へ舵を大きく切り替えた。元々高品質・高価格の製品が得意な同社は、2010年の2億6400万ドルから2011年に3億200万ドルへと14%伸びた。

トップテンランキングの中で伸び率が最も大きかったメーカーは同じマサチューセッツ州を本拠とするMEMSIC社だ。1340%増という驚異的な伸びは、サムスン電子へ電子コンパス向けに磁気センサを出荷したことによる。サムスンのスマホ「ギャラクシー」が大きく伸びたため、MEMSICも引っ張られた格好だ。

磁気センサの伸びを支えてきたのはやはりスマホやタブレットであり、このワイヤレス&民生市場が磁気センサ市場全体で最大の伸びを示した。アイサプライによれば、磁気センサ市場全体は14億9920万ドルであり、前年の12億2490万ドルから22%伸びた。伸びが最も大きいのはワイヤレス&民生市場であり、5億4990万ドルで前年比50%伸びている。最大の市場は自動車であり、7億3130万ドルを占め、前年比13%の伸びを示した(表2)。


表2 応用分野別の磁気センサ市場(単位は100万ドル)

表2 応用分野別の磁気センサ市場(単位は100万ドル)

出典:IHS iSuppliのデータを元にセミコンポータルが加工


ただし、ワイヤレス&民生市場は、競争が激化し始めており、旭化成エレは安穏としていられない。前年比122%の伸びを示した愛知製鋼(http://www.aichi-steel.co.jp/pro_info/pro_intro/elect_3.html)は、直径20μmという細いアモルファスのナノワイヤーを利用した磁気センサを開発した。このセンサはホール素子の1万倍という検出感度を持つ。同社は3軸ジャイロスコープや6軸(3軸磁気センサ+3軸加速度センサ)センサ製品を出荷している。シャープの携帯電話に磁気センサが採用されたことが伸びを加速したとみられている。

民生市場を加速しているのはセンサのIC化である。これまでの3軸コンパスは、外形が大きく、用途が限られていた。しかしホール素子やGMR(giant magneto-resistive)薄膜磁気素子は、増幅ICなどと一体化され3×3mm程度の小さなICパッケージに収容できるため、民生市場において大きく伸びた。

旭化成エレが得意としていた6軸センサ市場での競争も激しさを増している。愛知製鋼に加え、ドイツのBosch社と米国のFreescale Semiconductor社はそれぞれ6軸センサを利用した加速度計と電子コンパスを開発した。このため、スマホやタブレットなどのワイヤレス&民生市場で伸ばしてくる可能性は大きい。

参考資料
1. 大和田敦之の視点「隠れたチャンピオン企業」(2012/06/19)
2. Sales to Tablet and Cell Phone Makers Keep AKM No.1 in $1.5 Billion Market for Magnetic Sensors
3. Rising Usage in Automotive, Wireless and Consumer Electronics Drives 22 Percent Growth for Magnetic Sensor Market in 2011

(2012/08/16)
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