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平均年齢36歳の若いアイルランド、半導体で国を盛り上げる

アイルランドは、イギリスの西にある小さな島国だが、ここにEUV装置を導入したIntelの最先端工場や、Analog Devicesのアナログ半導体工場がある。英国はEUを脱退したが、アイルランドはEU内にある。このため英国とEUとの懸け橋になっている。欧州のシンガポールと言われている、とIDA Ireland(アイルランド政府産業開発庁)半導体グループテクノロジー部門VPのSeamus Carroll氏(図1)は言う。

Seamus Carroll, IDA Ireland

図1 IDA Ireland半導体グループテクノロジー部門VPのSeamus Carroll氏 筆者撮影


半導体産業にとってのアイルランドの魅力を、Carroll氏は次のように語る。「ICT(情報通信技術)に従事する人口は18万人、うち半導体産業には2万人が従事する。(人口が約4.5億人の)EU全体では20万人だから、人口538万人の小さな国としてはハイテク志向の国だといえる。そして最大の魅力は平均年齢36歳と若い人の多い国である」。昨年の半導体投資は欧州全体のトップ3に入るという。

アイルランドに工場を置き、投資し続けるのは、IntelとADIだけだが、研究開発拠点としてアイルランドに投資する所も多い。例えば、米Qualcommは、2nmプロセスノードに相当するICチップの設計を進めており、アイルランドのコーク市の拠点に650名が働いている。米AMDもダブリンとコークに併せて350名が働いているが、元々Xilinxの拠点を含めてAMDが買収した。AMDは2023年には今後4年間で1億3500万ドルを投資すると発表している。ここでXilinxのアダプティブコンピューティングソリューションを開発している。英Armもガルウェイ市に最先端の施設をオープンさせたと2025年7月に発表している。

アイルランドの魅力は何といっても若くて高等教育を受けている人口の割合が、欧州で最も高いことだ。25〜34歳に高等教育を修了した人の割合が62.7%と、EU平均の43.1%よりもはるかに高い。アイルランドを含めたEUは欧州半導体法によって430億ユーロ(約7.65兆円)を使える立場にある。

この欧州版チップス法案でアイルランドは、2nm未満のプロセスノードのSoCチップを開発するNanoICプロジェクトや、不揮発性メモリやRF/3D集積化のFD-SOIパイロットラインのFAMESプロジェクト、フォトニックICチップを開発するPixEuropeの3つのプロジェクトに参加している。

半導体のアイルランド研究開発をリードするのはTyndall国立研究所である。シリコンからMEMS、III-V化合物半導体など半導体製造インフラをはじめ、先端パッケージングや信頼性、故障解析、犯罪捜査技術、フォトニクスなどほぼすべての半導体技術をカバーする。

半導体メーカーだけではなく、Applied MaterialsやLam Research、ASMなどの製造装置、IBMやFacebookなどの研究開発グループ、GlobalFoundriesファウンドリ、EDAのCadenceなど多くの半導体関係企業とパートナー契約を結んでいる。日本からは電子部品の太陽誘電とアルプス電気がパートナーである。


Prof. O‘MathunaTyndall, National Institute

図2 Tyndall研究所の総合電力・エネルギーシステム研究部門ディレクタのCian O‘Mathuna教授 撮影筆者


研究開発の例としては、コイルの小型化がある。コイルはサイズが大きいため、シリコンICにはなかなか集積できない。しかしアナログICではコイルのような磁性デバイスはよく使う。そこで薄膜磁性体をシリコンICに集積させてオンチップ電源に役立てた研究からMagICという磁気オンシリコン技術が生まれた。Tyndall国立研究所の総合電力・エネルギーシステム研究部門ディレクタのCian O‘Mathuna教授(図2)は、この研究でIEEEから2021年に技術業績賞を受賞している。

(2025/11/12)
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