NANDフラッシュ・ラッシュ;SK hynix が321層、Micronは 60TBの小型SSD
韓国SK hynixがこれまで最高層数となる321層のNANDフラッシュの生産を2025年前半に開始すると発表、米Micron Technologyは従来製品の20%消費電力の低い60TB(テラバイト)のSSD(半導体ディスク)を開発、顧客向けの認証プロセスを開始した。共にTLC(3ビット/セル)方式のNANDフラッシュで、今後の市場回復に向けて新製品を出してきた。
図1 SK hynixの321層NANDフラッシュ 出典:SK hynix
これまでは昨年6月に発表した238層が最高だったという。NANDフラッシュは1層ごとにメモリセルを形成することで集積度を上げてきたが、総数を上げれば上げるほど配線のスルーホールの加工ずれが問題になりがちだ。このためフラッシュメーカーはウェーハの張り合わせ技術を使って半分の層数で集積度を上げてきた。モノリシックに層数を高めれば高めるほどずれやすくなり、全層数に渡る配線用のスルーホールの形成は難しくなる。
SK hynixが高集積にできたのは、プラグ(Plug)と呼ぶプロセス技術を使ってチップを重ね合わせる技術を実現したため。このプラグとは基板に対して垂直方向のスルーホールのことで、一度に複数のセルを生成できるという。SK hynixは、積層するための技術的なブレークスルーを見つけたことで300層以上を生産ラインに載せることができたとニュースリリース(参考資料1)では述べられている。
この3プラグプロセスは3枚のウェーハを重ね合わせる工程のこと。生産効率を重視するこのプロセスは、プラグプロセスを3回終えた後、続く最適化プロセスを通して電気的に3つのプラグを接続するという。このプロセス開発にあたり、SK hynixは低応力材料を開発し、全てのプラグのアラインメントを自動的に修正する技術を導入したとしている。プラグ内に埋め込む新材料は、ウェーハの割れを防ぐことが目的である。
これまでの238層NANDの開発プラットフォームと同じものを321層NANDにも使えるようにしたため、従来の238層製品よりも59%も生産性が改善したという。この結果、データ転送速度は12%向上し、読み出し性能は13%上がった。AIのデータを蓄積するAIストレージ市場に期待している。今回の集積度は1Tビット。
一方のMictronは、これまでの60TB大容量SSDの消費電力25Wよりも20%低い20WのSSDを実現した。20Wでの転送速度は12GB/sの性能を示す、この「Micron 6550 ION」は厚さ7.5mmのフォームファクタE3.S仕様で(図2)、第5世代のPCIe Gen5に対応している。
図2 Micron 6550 IONシリーズ E3.SフォームファクタのMicron 60TB SSDは左上 出典:Micron Technology
読み出し、書き込み性能は速い。シーケンシャル読み出しは12GB/s、シーケンシャル書き込み速度は5GB/sと共に従来品よりも2倍以上高速だ。さらにランダム読み出しも1600KIOPSと速い。
またエネルギー効率も高く、消費電力当たりのシーケンス読み出しは600MB/s/W、シーケンス書き込みは250MB/s/W、ランダム読み出しは80KIOPS/Wである。
小型のフォームファクタなので、2Uラックに40台のE3.SのSSDが収納できる。データセンターなどでE3.Sフォームファクタを収容できるサーバー36台に収納すれば44.2PBもの大容量ストレージになる。AIのワークロードをするストレージとしての応用を狙う。このSSDに搭載するNANDフラッシュは、Micronの第8世代TLC NANDを利用したという。
参考資料
1. “SK hynix Starts Mass Production of World’s First 321-High NAND”, SK hynix Newsroom, (2024/11/21)