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キオクシアとWestern Digital、四日市工場の第7製造棟が完成

キオクシアとWestern Digitalが共同で投資してきた四日市工場第7製造棟が完成、10月26日共同で竣工式を行った。総投資額は約1兆円。その内、政府からの支援、すなわち「特定高度情報通信技術活用システムの開発供給及び導入の促進に関する法律」による補助金も交付される予定となっている。

キオクシア、Western Digitalが共同で投資運営する四日市工場第7製造棟 / キオクシア、Western Digital

図1 キオクシア、Western Digitalが共同で投資運営する四日市工場第7製造棟 出典: キオクシア、Western Digital


Micronがすでに前年同期比23%減の66億ドルという低い売上額を示したほか、Samsung、SK Hynixも2022年第3四半期の決算報告を行い、メモリ不況であることがはっきりと示された。Samsungのメモリ部門は、同27%減の15.23兆ウォン(107億米ドル)、メモリメーカーのSKは7%減の10.98兆ウォン(77.3億米ドル)という結果であった。SK Hynixは下落の程度が少ないように見えるが、前四半期比では20%減と急落しており、次の四半期も厳しそうだ。

しかし、キオクシアはそのようなメモリ不況の中でも次の回復に向けて新工場を設立、中長期的な市場拡大に備え、3次元フラッシュメモリ第6世代製品(162層)ならびに今後も進化を続けるフラッシュメモリの生産に対応していく。

NANDフラッシュは大容量化を進めることでビット単価を下げ市場を拡大してきた。大容量化はセル層を多数設ける3次元化と、多ビット/セルの読み出し方式で進めてきた。四日市のY7棟では来年早期に162層製品の出荷を開始する予定だ。また、生産ラインとして、Y7棟では生産効率を向上させるために人工知能(AI)などの最新技術の活用範囲を拡大するほか、生産設備の設置効率を高めるスペース効率に優れたデザインを採用しているという。

キオクシアの代表取締役社長である早坂伸夫氏は次のように述べている。「Y7棟は、キオクシアが中長期的に成長するフラッシュメモリ市場の需要を確実にとらえ、持続可能な成長を続けるために不可欠となる製造棟。電子機器の高機能化や多様化により、世界中で生成されるデータ量の増加とそれを支えるメモリ製品の需要は増加すると見込まれる」。

ウエスタンデジタルの技術兼戦略統括プレジデントであるSiva Sivaram氏は次のように述べている。「Y7棟は革新的な設計により高い生産効率を備えており、世界中のお客様にサスティナブルなメモリとストレージ技術を提供するというWDの取り組みを強調するもの。WDは、キオクシアとのすばらしい関係を大切にし、長期的な成功を推進し続ける中で、この大きなマイルストーンを共に祝いたい」。竣工式に両社の首脳が出席、テープカットを行った(図2)。


第7クリーンルーム棟 竣工式典 / キオクシア、Western Digital

図2 Y7製造棟の完成の竣工式で両社の首脳が顔を合わせた 出典:キオクシア、Western Digital


両社のコメントは、短期的にメモリ不況でしばらく苦しい状況が続くものの、メモリビジネスは中長期的には成長産業であることを認識していることの裏返しといえそうだ。キオクシアとWDは、これまで20年以上にわたり築き上げてきた合弁のパートナーシップを活かし、今後も3次元フラッシュメモリの共同開発および市場動向に沿った共同投資を通じてシナジー効果を最大限発揮し、それぞれの競争力を強化していく、と述べている。

(2022/10/28)
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