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SiCパワートランジスタをじっくり育てるonsemiとコストに挑むUnitedSiC

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SiCパワートランジスタ(MOSFET)の市場がようやく立ち上がり始めた。パワー半導体に力を入れてきたonsemiは、SiC結晶メーカーであるGT Advanced Technologyを買収、SiCパワートランジスタを垂直統合として生産する方針を示した。またSiCのスタートアップであるUnitedSiCはすでに自動車メーカーに納入していることを明らかにした。

図1 onsemiのHassane El-Khoury氏 出典:onsemi

図1 onsemiのHassane El-Khoury氏 出典:onsemi


長年ON Semiconductorの顔として会社を率いてきたKeith Jackson氏に代わり、昨年12月にCEOに就任した若いHassane El-Khoury氏(ハッサーン・エルコーリーと読む、図1)は、会社名をonsemiと短くし、新しさを強調した。その上でonsemiの主要業務をインテリジェントパワーとインテリジェントセンサだと再定義した。同氏はInfineon Technologiesに買収されたCypress SemiconductorのCEOを務めていた。

新CEOは、SiCの市場がこれから徐々に立ち上がると見ており、5年以内にSiCウェーハの生産能力を、さらに10年以内にSiCデバイスやパッケージの生産能力を上げていくとしている。同社はGaNよりもSiCに注力していく。特に750V〜1200Vにフォーカスする。すでに自動車メーカーとSiCトランジスタについて協議しており、2023年/24年頃に多くのメーカーに入っていくとしている。

また、SiのIGBTにも強い同社は、GlobalFoundriesから購入した、ニューヨーク州イーストフィッシュキルにある元IBM Microelectronicsの300mm工場ですでに製品を出荷しているという。

IGBTとSiCとの使い分けに関しては、今後3〜5年IGBTが支配的と見ており、SiCに投資することでIGBT後のSiCデバイスの量産に対応していく、とEl-Khoury氏は述べている。また、センサなど他の製品にも言及し、ファウンドリも使っているが、自社のプロセスとの使い分けに関しては、次の5〜10年で成長しそうな製品のプロセスは自社で開発すると明確にしている。自社ファブを使うのはあくまでも自社でしか作れないようなプロセスに限り、そうではないプロセスは外部のファウンドリに依頼する方針だ。

オン抵抗6mΩで750V耐圧のSiC

UnitedSiCは、これまでの開発の中でオン抵抗がわずか6mΩと低い第4世代の製品ファミリを揃えた。6mΩと低いオン抵抗は、前回リリースした製品(参考資料1)の18mΩよりもさらに低くなっている。UnitedSiCは750V耐圧のSiCトランジスタをこれまでも開発してきたが、これまでの650V耐圧ではマージンが少ないためだとしている。Onsemiも750VのSiCトランジスタを開発することから、これからの方向かもしれない。

元来、耐圧を上げることとオン抵抗を下げることはトレードオフの関係にある。UnitedSiCはそれらを両立させるため、ジャンクション(J)FETを用いた。MOSFETは、半導体と絶縁膜の間の界面を電流が通るため、バルクを通るJFETと比べてどうしても電子移動度が下がる。しかし、JFETはノーマリオンで動作することが多いため、負バイアス電圧が必要となる。

そこで、MOSFETと同様ノーマリオフ型で使えるようにするため、MOSFETをカスコード接続している。しかし、これではFETを使う回路エンジニアに負担をかけることになるため、カスコード接続したMOSFETも1チップに集積した。このことでユーザーはMOSFETのように使うことができる。これによりSiCトランジスタの面積は最大40%減らすことができたとしている。すなわちコストメリットがあるという訳だ(図2)。


Gen4 750V SiC FETs - 優れた性能指数

図2 小さな面積で高い性能が得られるSiC JFET 使いにくさを解消するためカスコード接続のMOSFETも集積している 出典:UnitedSiC


加えて、電流ショート耐量は長く、5µsまで耐えることができるという。

UnitedSiCはこれまでにも自動車向けのSiCパワートランジスタを、オンボードチャージャーとDC-DCコンバータ向けに出荷しているという。インバータへのSiCの採用は時間がかかると見られているが、このSiCトランジスタならコスト的には有利である。

インバータには通常、120度ごとのモーター回転に合わせて3相モーターを設計する訳だが、そのためにパワートランジスタは最低6個必要である。SiCパワートランジスタの6組のインバータでの評価をしたのちには6個一組のモジュールへと発展するだろうが、低オン抵抗のメリットを生かしディスクリートでの評価をユーザーには進めているようだ。

参考資料
1. 「UnitedSiC社、SiCパワーJFETで750V、18mΩの製品をリリース」、セミコンポータル (2020/12/02)

(2021/09/17)

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