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欧州が科学技術に12兆円のR&D費を支援

2021年〜2027年にかけての科学技術予算Horizon EuropeとしてこれまでのHorizon 2020(2014-2020) の予算よりも30%増加させた12兆円(955億ユーロ)をEC(European Commission)とEC議会は承認した。資金は新型コロナ対策技術やデジタル技術、環境に優しい技術などを支援する。もちろん、AIや量子コンピューティング技術も含む。

図1 ECのイノベーション・研究・文化・教育・若者を担当するコミッショナーMariya Gabriel氏 出典:European Union

図1 ECのイノベーション・研究・文化・教育・若者を担当するコミッショナーMariya Gabriel氏 出典:European Union


Horizon Europeは元々、CO2排出を抑えた環境に優しい技術開発や健康を維持し、リジリエント(resilient:問題が起きた時に素早い回復力があること)な欧州を確保するために使う科学技術資金である。これまでも半導体研究開発を含めたプロジェクトとして機能していた。

ECのイノベーション・研究・文化・教育・若者を担当するコミッショナーのMariya Gabriel氏(図1)は、「今回の予算合意は欧州にとても重要な一里塚となります。Horizon Europe計画は、欧州の研究コミュニティや研究機関、市民が世界最大の研究・イノベーション計画だと自負しています。欧州の科学技術を強化するためのツールであり、より健康な生活を維持するためのソリューションを開発し、デジタルトランスフォーメーションを加速し、気候変動に対して挑み、リジリエンスを結集するために必要なものです」と語っている。

今回の12兆円にも及ぶ予算は、主な三つの柱からなる;(1)優れたオープンな科学(26%)、(2)世界の課題と欧州の産業競争力(56%)、そして(3)欧州のイノベーション(14%)である。(1)には欧州研究協議会(ERC)とマリー・キュリー特別研究員&交換研究員資金、研究インフラなどを含み、それぞれ17%、7%、3%となっている。マリー・キュリー特別研究員&交換研究員資金は、優秀な若手科学者、エンジニアの能力を伸ばすために使われる。

もっとも大きな予算配分である(2)の世界の課題と欧州の産業競争力に関しては、6つの領域に割り当てられており、それぞれ健康(8%)、社会全体の課題と創造する社会(1%)、セキュアな社会(2%)、デジタル産業・宇宙(16%)、気候変動を抑制する省エネルギーとモビリティ(16%)、食料・天然資源・農業(10%)、JRC(Joint Research Centre)の非核化に向けた行動(2%)となっている。

この中では大きな部分を占めるデジタル産業・宇宙では、量子コンピューティングを扱い、EUのメンバー国とデータを共有し、コンピュータリソースを共同利用する。気候変動を抑制する省エネルギーとモビリティでは、CO2削減を推進し、気候に関する問題に取り組む。地球全体の異常気象がCO2と深く関係していると欧州では捉えている。

(3)の欧州のイノベーションでは、欧州イノベーション協議会(10%)、欧州イノベーションエコシステム(1%)、EIT(European Institute of Innovation & Technology; 3%)となっている。

欧州では、ERCやJRCを通して、さまざまな研究開発テーマに予算が配分される。今回の955億ユーロは、前回のHorizon Europe 2020(2014〜2020年)よりも30%増加しており、CO2を出さない技術や省エネ技術に焦点が置かれている。

参考資料
1. Commission welcomes political agreement on Horizon Europe, the next EU research and innovation programme (2020/12/10)

(2020/12/16)
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