ディスクリートのNexperia、車載注力で差別化
ディスクリート半導体という汎用製品でどう前に進むか。NXP Semiconductorの旧スタンダード・プロダクト事業部門から2017年2月に分離独立したNexperiaは、どのようにして将来を開くか、このほど来日した同社の製品部門長2名が今後の戦略を語った。
図1 NexperiaのGeneral Managers;Julian Humphreys氏(左)とAchim Kempe氏(右)
戦略を語ったのは、同社MOS Discrete Business GroupのGeneral ManagerであるJulian Humphreys氏(図1左)とBipolar Discrete Business GroupのGeneral ManagerのAchim Kempe氏(図1右)。Nexperiaの持つ製品はディスクリートが中心なため、競争力を強化することが難しい。例えば、汎用の小信号トランジスタは「ネジ」や「クギ」の類であり、ほとんど全ての回路に使える反面、独自性を持たせることは難しい。
そこで、自社の価値を車載市場に置くことにした。車載向けでは20%程度の製品ポートフォリオを持つが、この比率を40%まで高めていく。クルマ市場用の品質規格AEC-Q100/101に準拠するだけではなく、その実力は2倍の信頼性試験に耐える製品もあるからだ。加えて、品質は部品レベルでもボードに実装したレベルでもppm(parts per million)レベルだとしている。この実力は、クルマメーカーとの強い協調・長い歴史のたまものだという。全社で1万もの品種を持つ製品を提供しており、ほぼ全製品がAEC-Q101/100の規格に準拠しているとしている。
前工程の製造拠点を英国のマンチェスターとドイツのハンブルグに持ち、フィリピン、マレーシア、中国広東省にある後工程工場は自動化を進めており、自社開発の装置を使っている。前工程では、6インチから8インチへウェーハプロセスの転換を図っており、このために投資額を増やしていく予定だ。車載プロセス向けの製造装置へも投資する。後工程では、チップマウンタや新しいパッケージに投資する。投資額は明らかにしないが、2014年の設備投資に比べて2017年は2.5倍に増やす。
新しいパッケージは、クリップボンド・パッケージ(Clip-bond Package)と呼び、ワイヤーボンドを全く使わずに平らなCu(銅)板で接続する(図2)。インダクタンスによる影響の大きなパワーMOSFETと整流ダイオードに使う。図2はMOSFETの例だが、過渡電圧のピークに影響するインダクタンスが低く、熱抵抗の低いCuを使っており、パワーを出力する用途に向く。ゲート端子もCuで接続する。
図2 Nexperiaが開発したパワー半導体向けのパッケージ ボンディングワイヤーを使わない 出典:Nexperia
Nexperia社のもう一つの特長は、当初Philipsとして創業して以来65年目を2018年に迎えるが、量産製品の安定供給でもあり、今でも50年間生産し続けている製品があるという。
Nexperiaは、NXPから分離独立したとき、中国のファンド2社(Beijing Jianguang Asset Management Co. Ltd.およびWise Road Capital Ltd.)が出資した。今やNXPの資本はゼロで、完全に独立している。今のところ、2社の中国資本は経営に関与してきていない、という。