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Spansion社長に富士通のマイコン・アナログ事業購入の狙いを聞く

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John Kispert氏、CEO Spansion

Spansionが富士通のマイコンとアナログの事業部門を買収することが決まった。事業部門1億1000万ドル、棚卸資産6500万ドルの合計1億7500万ドル(約175億円)で富士通から買収する。Spansion CEOのJohn Kispert氏(図1)にその狙いを聞いた。

図1 Spansion CEOのJohn Kispert氏

図1 Spansion CEOのJohn Kispert氏


Spansion(スパンション)の狙いは、組み込みシステムである。組み込み市場ではフラッシュメモリが急成長していると見ており、Spansionの持つeCT(embedded charge trap)技術は大きな差別化要素となる。これは2008年ごろイスラエルのSaifun Semiconductor社を買収したことで手に入れた技術であり、メモリセル平面上に電荷を貯める領域を2カ所設けてある2ビット/セルのNORフラッシュ技術。SpansionはNORフラッシュメモリを集積したSoCを昨年、音声認識チップとして発表した。こういった組み込みフラッシュSoC製品を広げていくためには、コントローラ用のCPUが必要だ。今回の富士通のマイコン買収はフラッシュマイコンあるいはフラッシュSoCを拡大するための布石となる。ここで定義しているフラッシュSoCとは、フラッシュメモリ領域の多いSoCのこと。辞書にたくさんの言葉を蓄える音声認識や翻訳チップはこれに近い。

自動車用のエンジン制御やシャーシ制御などでは、ECU(電子制御ユニット)をフラッシュマイコンで制御し、この制御ソフトウエアやもっと簡単なソフトウエアなどをフラッシュメモリにプログラムすることが多くなってきている。この分野ではルネサスエレクトロニクスが最も強い。この市場に向けて、富士通のマイコンにNORフラッシュを集積することでティア1メーカーなどに売り込むことができるようになる。加えて、Spansionのグローバルネットワークを利用すれば、フラッシュマイコンで欧米市場に攻めて行くこともできる。

Kispert氏は、「富士通のマイコン事業を取り込むことで、粗利益率は37〜40%程度になり、2014年には4000万〜6000万ドルの粗利益の底上げになる」と述べている。これは1株当たりの利益が40〜60セント増えることに相当するという。

Spansionはもともと富士通とAMDの合弁で出来たNORフラッシュ設計製造会社だった。ストレージ市場でNANDフラッシュとの覇権争いに敗れ、同社は2009年に会社更生法(Chapter 11)の適用を受けた。その後、さまざまな工場を売却、債務を返済し、ファブライトモデルとニッチ市場戦略を採ることで見事、復活を遂げた。富士通はSpansionの日本における販売サポートを続けており、Spansionと富士通との関係は深い。


図2 Spansion、富士通マイコン・アナログ部門購入のイメージ 出典:Spansion

図2 Spansion、富士通マイコン・アナログ部門購入のイメージ 出典:Spansion


今回、Spansionが富士通のマイコンとアナログの部門を買い、富士通は赤字の半導体部門を売却する。Spansionは成長を見込める組み込みフラッシュSoC/マイコン部門を強化できる(図2)。お互いにウィン-ウィンの関係になる。Spansionは富士通の会津工場をファウンドリとして使う。

Spansionのファウンドリ戦略は明確だ。110/90/65nmプロセスのフラッシュには、テキサス州オースチンにある自社ファブを使い、大容量のNORフラッシュには65/45/32nmプロセスの中国XMC社、さらに微細な4x/3x/2x nmのNANDフラッシュにはSKハイニックスの工場、そして180/90/55 nmのMCUとアナログのバイポーラやバイCMOSプロセスには富士通の工場を使う。後工程の組み立ては、自社のバンコク工場だけではなく、ChipMOSやジェイデバイス、富士通などの工場を使う。富士通とは数年に渡るファウンドリ契約を結び、Spansionにとっては最小の投資でマイコン技術を手に入れることができたとしている。

加えて、富士通のファウンドリ工場としての能力をベタ褒めしており、品質の高い製品を常に安定供給できる能力を、コンシステンシ(consistency)に長けていると表現した。


図3 富士通の買収により自社にない製品を補完できる 出典:Spansion

図3 富士通の買収により自社にない製品を補完できる 出典:Spansion


Spansionは富士通マイコンの買収によって、組み込みフラッシュ、MCU、I/Oインタフェース、ソフトウエアを1チップに集積するフラッシュSoCを設計できる(図3)。アナログは、富士通のパワーマネジメントのスキルを買ったとする。Kispert氏はさらに続けて、「富士通のアナログ分野にも優秀なエンジニアが多く、当社の技術を安定成長させる上で欠かせない」と述べた。さらに、組み込みフラッシュSoCやMCUにはソフトウエアエンジニアが重要な役割を果たすが、現在250名のソフトウエアエンジニアは富士通のマイコン・アナログ事業買収によりその2倍に増えるだろう」と見ている。

フラッシュマイコンでは、ルネサスエレクトロニクスが売上トップで良いライバルになるだろうと見て、「彼らに負けないベストなサポートが必要となる」(Kispert氏)。ルネサスが持つ、マイコン開発・テストシステムをはじめとするエコシステムに対しても負けないように、「これからは、開発ツールや、ソフトウエア(ファームウエアやアプリケーション)サポートに積極的に投資していく」と意欲を見せている。

組み込みフラッシュメモリとフラッシュMCUや組み込みSoC、アナログなどの分野は2010年に60億ドルの市場だが、2017年に300億ドルに膨らむとSpansionは見ている(図4)。


図4 7年で5倍に広がる市場 出典:Spansion

図4 7年で5倍に広がる市場 出典:Spansion


一方、富士通は、今回マイコン・アナログ部門をSpansionに売却したが、SoC部門はパナソニックとの合弁事業を進めている。微細化が進んでいた三重工場への投資は中止した状態のまま来ている。新聞を通じてTSMCに売却のラブコールを送ったため、それ以上進んでいないようだ。富士通の山本正巳代表取締役社長は、「半導体はなくならない。重要になってくる。半導体ビジネスには、ある程度距離を置くが、サーバのCPUやキーデバイスがあるため富士通は深く関与していく」と述べている。とはいえ、サーバにはIntelのXeonプロセッサを搭載したものが多く、スーパーコンピュータのようなごく特殊な用途にしか独自のSPARC64チップを使っていないのが現状だ。半導体ビジネスの重要性をどれほど認識しているのか、疑問符がつく。

(2013/05/01)

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