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東京エレとアプライド経営統合の意味〜微細化/投資のカルチャー変化が主因

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「かつて世界一を誇った半導体製造装置メーカーが、こともあろうに最大ライバルの米国メーカーと経営統合するとは何事か。まさに国辱ものだ。どんなに苦しくても、日本の代表選手としてあくまでも単独で戦ってほしかった」(大手半導体メーカーOB談)。

東京エレクトロンと米国のアプライドマテリアルズが2014年後半に経営統合すると発表された途端に、筆者の携帯とメールには雨あられの意見、感想が寄せられた。その多くは前述のような発言が多かった。グローバリゼーションが進む現在のITの世界にあって、純血ニッポンで戦え、というのはいささかアナクロニズムの匂いがするが、それでもこの統合を怒る人たちの気持ちはわからないことはない。

東京オリンピックを翌年に控えた1963年のこと。放送大手のTBSはありえないことに、ある電子機器商社に投資し、ベンチャー企業を起こす。この会社は瞬く間に頭角を現し、80年代には半導体製造装置分野で世界一になった。これが今日の東京エレクトロンである。

それにしても東京エレクトロンの本社は長くTBSの本社とビルを同じくしていたために、ロビーには多くの女優、タレントがたむろし、エレベーターに乗っても凄まじい香水と脂粉の香りが漂ってくるのには閉口したものだ。いわば派手な芸能界の人たちと、地味な半導体装置業界の人たちが、共に同じビルの中でよく生存できるものだと常に思ったものであった。

今回の経営統合について、両社はいずれも次のような理由を挙げている。まずはパイの拡大である。業界1位のアプライドマテリアルズの世界シェアは14.4%、業界3位の東京エレクトロンの世界シェアは11.1%であり、この両社が統合されれば世界シェア25.5%となり、業界2位のASML、4位のラムリサーチに大差をつけて圧倒的首位になる。このスケールの強みを生かしたいと言うのだ。また、両社ともに「この統合で開発費負担が減る」としており、単独では立ち行かないとの判断があったようだ。

確かにスマートフォン、タブレット端末などのモバイル機器の急速な進化が進み、製造装置メーカーの開発費は重荷となってのしかかっている。X nmの超微細加工、次世代450mmウェーハの装置開発、フラッシュ、DRAMさらには次世代のMRAMなどメモリーの大容量化に対応した技術開発にも凄まじい負荷がかかっている。経営統合すればこうした開発が共有化されるわけであり、確かにコストは大幅に下がるだろう。

それにしてもつくづく思うことは、こうした巨額の開発費はかつて半導体メーカー自身が負担していたのだ。ところが日本勢を筆頭に世界の半導体メーカーはいずれも、次世代開発を負担するだけの財政的余裕がなくなってきた。それゆえに、装置メーカーが次世代半導体の製造プロセス・装置についてのR&Dを肩代わりすることになっていかざるをえなくなった。そしてまた、徹底的な微細化に走るのはパソコンを中心としたカルチャーであり、肝心要のパソコンがピークの年間出荷4億台から3億台に激減する現状にあっては、微細加工に対する巨大投資は回収することができない。また450mmウェーハについても、採用するのはせいぜいインテル、サムスン、TSMC、東芝あたりと見られており、300mm時代のように多くの半導体メーカーが参入しないだけに、これまた装置メーカーにかかってくる開発費負担は回収が難しい。

半導体産業はいまや多角展開を迎え、自動車向け半導体、新エネルギー向けパワー半導体、メディカル向け半導体など、アプリが変化しつつあり、かならずしも微細化、大口径化を必要としないジャンルが増えてきた。それだけに、これまでのパソコン中心のカルチャーで戦う半導体メーカーは巨大投資ができなくなってきており、装置メーカーもこのあおりを受けているのだ。

産業タイムズ社 代表取締役社長 泉谷渉

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