ISSCC 2026、中国大学からの採択が急増
俗に半導体のオリンピックといわれる世界最高峰の半導体回路国際会議 IEEE International Solid-State Circuits Conference (ISSCC 2026)が、2月15〜19日に米国カリフォルニア州サンフランシスコで開催されている(図1)。本年のメインテーマは「Advancing AI with IC & SoC Innovations(ICとSoCの革新でAIを進化させる)」であり、GPUやHBMはじめAIがらみの発表が相次いでいる。技術的内容は、無料提供されているプログラム冊子(参考資料1)や別の拙稿(参考資料2)を見ていただくとして、ここでは、国別および組織(大学や企業)別採択件数統計から見えてくるグローバルな半導体研究開発の勢力分布を紹介し、日本のおかれた厳しい状況を読者諸兄姉とシェアすることにしよう。

図1 ISSCCが開催される米サンフランシスコ 出典:IEEE ISSCC
応募も採択件数も中国が最多、採択率25%と狭き門
ISSCC 2026の論文投稿数は1025件で、前回のISSCC 2025から111件増加し、初めて1000件を超えた。応募件数は、中国からの応募殺到で2024年から急増しており、うなぎのぼりの状況にある。採択件数は前回から8件増え、257件となったが、採択率は過去最低の25%で狭き門だった。
採択発表論文を国/地域別に見ると、前回に続いて中国(香港/マカオ含む)が今回も採択数を伸ばし、96件に達した。2位の米国(50件)、3位の韓国(45件)に大きく差をつけた。日本は、10年前には20件以上採択されていたが、このところ10件前後で低迷してきた。しかし、今年は昨年の8件から4件増えて12件となった。これを前年比5割増しで件数増加の兆候なのか、それとも10件±数%のばらつきの範囲なのかは、次回以降の様子を見ないと判断できない。

図2 国別採択論文数の推移:中国勢が2023年以降急増している。 出典:IEEE ISSCC
なお、日本からの12件の発表は以下のとおりである。毎年、東京科学大学(旧東京工業大学)の検討が目立つ。ソニーグループからは、本業のCMOSセンサの発表があるが、筆頭著者の所属がソニーセミコンダクタソルーションズのイタリア法人のため、統計上は欧州からの発表に分類されている。

表1 日本からの発表は12件 筆者作成
ISSCC米国広報担当より入手した資料に基づき、採択件数の多い組織トップ10を集計すると以下のようになる。ここでは、筆頭著者(発表者)だけではなく共著者の所属組織もカウントしている。昨年同様にトップは中国・北京市にある名門大学である清華大学だが、トップ10(上位13組織)のうち、過半の8組織が中国の大学であるのは驚異である。中国の大学が急速に力をつけてきており、半導体研究開発の中心は、米国から中国に移った感がある。

表2 中国からの発表上位10件 筆者作成
対照的に米国は低迷が続く。採択論文数は前年比5件減って50件となり、国別の占有率は19%にとどまった。中国がISSCCの採択論文数で米国を抜いて初めて首位に立ったのは2023年で、その後は両者の差が広がっている。大学や研究機関を含む米国の低迷に「Intelの業績不調が影響している可能性はある。中国からの応募論文は数年前までは質が悪く採択率も低かったが、この数年は毎年質・量ともに急上昇してきている」とISSCC関係者は見ている。まさに、「中国恐るべし!」の状況である。企業からの発表では、韓国のSamsung Electronicsがトップの15件を占め、1社だけで日本勢全部の発表件数よりも多い。
日本の半導体市場シェアは4%台に下落
以上、ISSCC 2026の採択件数統計を見てきた。ところで、米国半導体工業会(SIA)が発表した世界半導体月間売上高統計によると、日本市場の世界市場に占める割合(市場シェア)がついに昨年末に4%台まで低下してしまった。2024年末には7%だったが、その後毎月シェアを単調に落とし続けてついに4.7%になってしまい、歯止めがかからない。先月に本欄で予測した通りの結果になってしまった(参考資料3)。SEMI傘下の ESD Allianceの調査では、日本の半導体・電子回路設計ツール市場の世界市場に占めるシェアも長期的に低下してきており、2025 年第3四半期のシェアは4.7%へと低下している。つまり、日本には、半導体の使い手もその設計者も減少しているということだろう。日本のISSCC採択件数が低迷したままなのも訳ありということだろう。先端プロセス開発や製造への投資ばかりに目が行きがちであるが、日本には先端半導体の顧客はほとんどいない。半導体回路設計や半導体応用製品の設計にももっと投資し、人材を育成すべきだろう。
参考資料
1. ISSCC 2026 Advance Program
2. 服部毅、「ISSCC 2026から見えてくる半導体メモリとプロセッサの最新研究開発動向」、マイナビニュースTECH+、(2026/02/10)
3. 服部毅、「2025年を振り返る:世界半導体市場が急成長するも日本市場だけマイナス成長で需要減」、セミコンポータル、(2026/01/15)



