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雇用創出を優先する産業とは何か、アンドリュー・グローブ氏が提案する未来

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アンドリュー・グローブ氏。言わずと知れた、インテルのCEOを務め、産業界に何か前向きの提案をしてきたスマートガイ(賢人)である。古くは、私が半導体エンジニアになりたての頃、勉強させていただいた教科書「Physics and Technology of Semiconductor Devices」の著者でもあり、そのおよそ20年後「偏執狂だけが生き残る」というビジネス書をインテル時代に書いた産業人である。

写真 インテルの元CEO、アンドリュー・グローブ氏

写真 インテルの元CEO、アンドリュー・グローブ氏


彼が最近、Business Weekに投稿した論文、「アメリカはどのようにして雇用を創出するか」がとても面白い。この話は、セミコンポータルのブロガーの一人である、長見晃氏が紹介してくれた。

内容を簡単に述べると、「アメリカはテレビをはじめとする、さまざまなハイテクを生み出し、常に付加価値の高い産業を追求してきた。その結果ハイテクでは常に世界をリードしてきた。しかし雇用面ではどうか。コンピュータ産業に携わる人は米国に16万6000人いるが、コンピュータ製造業界ではアジアに150万人もいる。実に1対10の割合だ。これまでアメリカがハイテクを創出、市場を創出という形で経済を発展させてきた。しかし、雇用を創出するという視点が欠けていた。だから失業率がいつまでも減らない。2次電池を発明したのはアメリカなのに、その製造には今は全く関わることができない。太陽電池も米国の発明だ。これからは、雇用を生み出す経済、雇用を生み出す政治リーダーが求められるのではないだろうか」という趣旨だ。

数年前、シカゴで開かれたManufacturing Weekに参加したことがあり、そのショーに併催するいくつかの講演では、米国における空洞化に対する嘆きの声をいくつも聴いた。アルミメーカーの社長や、部品メーカーの社長などの講演では決まって空洞化が叫ばれた。日本は今でもやはりアメリカの後を追いかけている。空洞化によって、付加価値の高い産業へ変身しても、雇用はわずかしか生み出さない。米国の問題はここにある。企業の売り上げは増加し、経済は発展するが、雇用は生まない、という矛盾である。

アンディの指摘はそのまま日本にも当てはまる。ということは日本も今から雇用創出するための産業、あるいは手先の器用な日本人が製造業でもやっていける産業、を創出すべきという視点が重要ではないだろうか。法人税の切り下げによる企業の活性化や、規制緩和による産業の活性化を果たしても雇用の創出につながらない恐れは十分ある。もちろん、法人税の引き下げに反対している訳ではない。企業の活性化に反対している訳ではない。むしろ、法人税の引き下げや、市場を閉じていた規制の緩和は積極的にすべきである。自由な市場への自由な参入は、経済活動を活発にするだろう。しかし、それだけでは雇用創出という視点からは十分ではない、ということだ。

雇用を生み出す産業、人をたくさん抱えてもやっていける産業、日本人の得意な特性を生かした産業、こういった雇用を創出する産業を提案し、実行する必要がある。それもアジアの企業と比べても勝てることが条件となる。このような条件は無理だとはじめから白旗を上げるのなら、日本には未来はない。極めて難しい条件ではあるが、こういった条件の元で、雇用を生み出す企業形態を創出できれば、日本の将来は約束されたようなもの。誰もが考え、ビジネスモデルを提案して行きながら、金融界が手を差し伸べる仕組みを作ることも欠かせない。みんなでコラボして雇用を生み出す新しいビジネスモデルやビジネススキームを作ることこそ、チームニッポンがいま求められていることだと思う。

(2010/07/14)

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