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5月の世界半導体販売高/Grove氏記事/グローバル雑学王−105

米SIAから発表の5月世界半導体販売高は、このところの勢いを維持して単月の最高を更新し、今年年間で$300 billionの大台に近づいていくペースとなっている様相である。昨年後半より経済不況からだんだんと盛り返してきており、前年比の数値で見るとこれから先の伸びで回復の真骨頂が問われていく、ということと思う。今回のいつもの≪市場実態PickUp≫のコーナーは、前Intel chief、Andy Grove氏の記事に絞って注目している。

≪5月の世界半導体販売高≫

米SIAからの発表内容を以下に示す。

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○SIA発表:5月のグローバル半導体販売高、前月比4.5%の増加…7月6日付けSIAプレスリリース

5月の世界半導体販売高が$24.7 billionで、4月の$23.6 billionから4.5%の増加、前年同月、2009年5月の$16.7 billionからは47.6%増加した、とSemiconductor Industry Association(SIA)が本日発表した。予想通り、前年比の増加率は4月に記録した50.4%からは僅かに鈍化している。月次販売高の数値はすべて3ヶ月移動平均で表わされている。

「5月のグローバル半導体販売高は新記録に達して、2010年は28.4%増の$290.5 billionというSIA予測に到達する道筋に依然沿っている。」とSIA President、George Scalise氏は言う。「半導体販売高は、パソコン、携帯電話、corporate情報技術(IT)、産業用途および車載の力強い売れ行きで支えられてきている。パソコン販売台数は今や今年20%伸びると見られているし、携帯電話の数量は2009年レベルに対し10-12%上昇すると予測されている。」

「中国およびインドなど新興市場では、computationおよび通信製品の販売が煽られている。」とScalise氏は続ける。「自動車市場も数年の弱含みの売れ行きを経て、ゆっくりと回復してきている。グローバル経済不況の間は更新サイクルを先延ばししていたcorporate情報技術(IT)および産業用分野からの需要が、戻り始めている。」

産業用の前年比および前月比伸び率は2010年の後半引き続き鈍化しそうである、とSIAはもう一度特に言及している。「最近の半導体販売高は力強い需要を示しているが、前年比の伸び率はまた2009年前半の非常に抑圧された市場状態を色濃く示すものでもある。これから先について、前年比の伸びの比較は昨年後半に弾みを得た業界回復を映し出していく。」

「政府負債、減退するconsumer confidenceおよび政府支出への圧力などの問題についての懸念の高まりが、今日まで世界半導体販売高に影響を与えているとは思われないが、マクロ経済状態に対する半導体業界の感度が大きく振れていけば、2010年の後半はこれらの問題をしっかり注視する必要がある。」とScalise氏は締め括った。

※5月の世界半導体販売高 地域別内訳および前年比伸び率推移の図、以下参照。
http://www.sia-online.org/galleries/gsrfiles/GSR_1005.pdf
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後半は楽観視を戒めるようなトーンが伺えると思う。いつからかと意識はしなかったが、地域別に販売高を見ると、Asia Pacificが以下の通り十分に半分以上を越えている。経済危機に入りこんで底からの脱却に目が追われる間のだいぶ前の出来事のようである。

 市場地域   12- 2月平均   3- 5月平均   change
 Americas    3.62       4.27      17.9
 Europe     2.88       3.15      9.5
 Japan      3.44      3.72       8.4
 Asia Pacific  12.11      13.51      11.6
         $22.04B     $24.65B    11.8 %

今回の発表について関連する記事を見ていく。

◇5月の世界半導体出荷額、過去最多更新、前年比48%増。(7月7日付け asahi.com)
→米半導体工業会が6日発表した5月の世界半導体出荷額は、前年同月比48%増の約247億ドル(約2兆1700億円)となり、単月としての過去最高額を更新、前月比でも4.5%増、中国、インド、南米などでパソコンや携帯電話向けの需要が伸びた旨。

先行きは積極的な見方に、リスク要因を踏まえた慎重さが入り混じっている。

◇IDC projects 8.8% chip sales growth through 2014-Market watcher issues warning about second half 2010(7月6日付け EE Times)
→International Data Corp.(IDC)、火曜6日発。PCsおよび新興途上embedded市場向け半導体の堅調な伸びが引っ張って、2014年の半導体売上げは$344Bに、半導体販売高の5年compound伸長率を8.8%と見るが、2010年後半の伸長鈍化の可能性について警鐘を鳴らしている旨。

世界経済は、やはり中国、そして米国が引っ張る軸足がどうなっていくか、が当面のポイントと映っている。

◇世界経済、2010年は4.6%成長に上方修正、IMF-欧州の財政不安「下振れリスク」(7月8日付け 日経 電子版)
→国際通貨基金(IMF)が7日発表した経済見通し、下記の通り。()内は、前回4月時点との比較を示す。
                    2010年       2011年
 世界経済 実質経済成長率  4.6%(0.4プラス)    4.3%(変更なし)
 日本経済             2.4%(0.5プラス)   1.8%(0.2マイナス)
 米国               3.3%(プラス)     2.9%(プラス)
 ユーロ圏             1.0%(維持)      1.3%(0.2マイナス)
 中国               10.5%(0.5プラス)   9.6%(0.3マイナス)

◇中国の6月の輸出43.9%増、輸入増加率が大幅低下。(7月10日付け 日経 電子版)
→中国税関総署が10日発表した6月の貿易統計。輸出額は前年同月比43.9%増の1373億9000万ドル(約12兆1700億円)、7ヶ月連続で前年同月を上回り、単月の輸出額としては過去最大の旨。輸入額は34.1%増の1173億7000万ドル、8ヶ月連続の増加であるが、増加率は5月の48.3%より大幅に低下した旨。


≪Grove氏記事≫

Intel社で1987年から2005年までCEOあるいはchairmanを務めたあのAndy Grove氏が、米国の雇用拡大に向けて問題意識の高揚&提起をBloomberg Businessweekで行っている。半導体業界のリーダーの一人として、草創期から常に注目を浴びてきた方であり、いろいろ重なる思いが随所に、という感じ方がある。

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○米国は如何にしてJobsを作り出せるか(7月1日付け Bloomberg Businessweek)
…前Intel chief、Andy Grove氏は、米国の国内雇用をもう一度拡大するためには、"job中心の"リーダーシップおよび優遇策が必要と言う。

・最近Palo Alto(Calif.)のレストランで、隣のテーブルの知り合いが、中国からの仲間、3人の若いventure capitalistsを自分に紹介した。彼等は興奮した様子で、Silicon Valleyの有望な会社を回っていると説明した。
Valleyに長い間住んできて、この地域がかくもグローバル投資を引きつけるものになっていると分かるといつも、少し誇らしく感じる。

・何か腑に落ちなかった。Bay Areaの失業率は、国の平均、9.7%よりむしろ高い。明らかに、偉大なSilicon Valley innovation machineは最近多くのjobsを作り出してきていない。ここはアジアを考えなければであるが、そこでは米国ハイテクメーカーが何年も猛烈にjobsを付け加えてきている。

・Startupsは素晴らしいものであるが、自分たちでハイテク雇用を増やすことはできない。同じように重要であるのが車庫での創出という神話上の瞬間の後にくるものであり、技術は試作から量産に行くからである。これは会社が拡大する段階である。設計の詳細に手を尽くし、如何に入手可能にするか解決し、工場を建て、そして何千人もの人々を雇う。規模拡大は難しい作業であるが、innovationを問えるものにするには必要である。

・scalingプロセスはもはや米国では行なわれていない。そしてそうである間は、工場をどこか他で建設する若い会社への資本注ぎ込みが、米国のjobsの点では引き続き悪い結果で戻ってくる。

・ScalingはかってはSilicon Valleyで上手くいっていた。このような一つの例として過ごせて自分は幸運である。1968年によく知られた2人のtechnologistsとその友人の投資家がIntelをスタートするのに$3M出して、コンピュータ業界向けのメモリ半導体を作った。当初から量産で如何に作るか、解決しなければならなかった。Intelがbillion-dollar会社になるにはその前に、工場を建て、人を雇い、教育訓練を行ない、従業員を維持し、サプライヤとの関係を構築するなど、非常にたくさんのことに対処せざるを得なかった。IPOから10年、1980年までには約13,000の人々が米国でIntelのために働いた。

・時が経って、米国での賃金およびhealth-careコストが高いものになった。そこに中国が開けてきた。米国の会社は、製造そして技術すらも海外でもっと安く行なえることを見い出した。そうしてから利益マージンはよくなり、マネジメント層、そして株主たちは喜んだ。成長は続き、利益は上がっていったが、job machineは飛散し始めた。

・今日、米国コンピュータ業界での製造雇用は約166,000で、最初のPCを1975年に組み立てる前のころよりも低くなっている。一方、アジアでは非常に効率の高いコンピュータ製造業界が現れており、約150万人を雇用している。最大のものはHon Hai Precision Industryであり、Foxconnとも呼ばれる。同社は驚く速さで、まずは台湾、その後中国で成長している。
昨年の同社の売上げは$62 billionで、Apple, Microsoft, Dell, あるいはIntelを上回っている。Foxconnは800,000人を採用し、Apple, Dell, Microsoft, Hewlett-Packard, IntelおよびSonyの世界人員総計よりも多い。

・米国のApple従業員それぞれに対して、中国ではiMacs, iPodsおよびiPhonesに10人が関わっていることになる。同様の大雑把に10-to-1の関係が、Dell,Seagate Technologyなど米国ハイテクメーカーに当てはまる。

・価値の高い、利益がほとんどの仕事が米国に残るので、jobs海外出しは大したことではない、と言えるし、そうかもしれない。しかしながら、付加価値の高い仕事をする高給の人々と多数の失業者から成り立って、どんな社会に向かうのだろうか。

・簡単に言えば米国はひどくハイテクjobsを作り出すのに効率が悪くなっている。

・Silicon Valleyの会社について、米国jobsを生み出すコストが、初期の何年かの数1000ドル/ positionから、今日では10万ドルに増大している。理由は明らか、外部のcontractors、通常はアジアでますます作業を行なって、従業員の雇用は減る一途である。

・驚きではなく、photovoltaic filmsおよびパネル製造の米国での雇用はたぶん10,000で、世界全体の雇用の数%にすぎない。もともとは米国の発明なのに・・・

・Jobs外出しよりももっと危うく問われているものがある。Scalingとinnovationがともに海外で行なわれている技術がいくつかある。

・そのような例が先端電池である。MPUsがcomputingなら、電池は電気自動車という関係である。MPUsとは違って、Liイオン電池生産の米国シェアは僅かである。

・そこが問題である。新しい業界には、技術ノウハウが蓄積し、経験が経験を生み、サプライヤと顧客の間の緊密な関係が発展していく効率的なecosystemが必要である。米国はconsumerエレクトロニクス機器製造を止めて、電池におけるリードを30年前に失っている。

・メモリ半導体製造の経験。市場需要到来に確信がもてず、製造capacity追加に躊躇い。日本の競合は躊躇わなかった。彼等は工場を建てた。その経験の心構えがあるにも拘らず、どれだけ市場に受け入れられるか分からない製品を作るのに、billions of dollarsを工場にかける裁断をIntel役員会に問うとき、如何に不安であったか、今でも思い出す。幸運にもこらえながらO.K.をいただいた。この賭けは上手くいった。

・Intelは、国内で規模拡大がしやすいときに設立された。もう一つ、中国はまだビジネス開放されてなかった。もっと重要なこと、米国はscalingが経済の図式に決定的であることをまだ忘れていなかった。

・どうして米国は忘れてしまっているのか?一般的な製造の軽視にその答えが関係すると思う。"知的作業"が米国にある限り、工場の仕事に起きることは問題ではない、という考え方である。莫大なjobsを失っただけでなく、科学技術の進化に非常に重要な一連の経験を壊している。今日の"commodity"製造を放棄することは、明日の新興途上の業界から締め出されることになる。

・ここ数十年のアジア数カ国、job creationが国家経済政策のNo. 1 objectiveでなければならないことが分かっている。政府の効率的な関与が効いている。

・このようなアジアの経験を我々がここで今、どのように知的行動に変えていくか?job-centric economic theory?and job-centric political leadershipが長期的に必要である。

・規模拡大する能力を失うことは、究極的に我々の革新capacityを損なうものである。

・変化の緊急性は現実のもの。依然と経済をリードしようと思えば、自ら変わること、さもなければ引き続き変化が我々に圧し掛かってくる。
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上記には省いたが1956年にハンガリーを逃れて米国に来たという下り、また小生には身近に肌身に感じるところがあるメモリを断念してMPUに絞っていった経過はじめ、本当に圧倒されて、また考えさせられる個所の連続である。

早速のいくつかの反応として、次の通りである。

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◇Why Andy Grove is right (7月6日付け CNET News)
 by Brooke Crothers氏

Grove氏は正しい。自分は、1993年まで10年間日本に住んで、ほとんどジャーナリストとして活動、日本のハイテク業界を扱った。一つの仕事で、日本の業界紙(機械、tools、自動車、化学、コンピュータ部品など)からたくさんの記事を3年にわたって翻訳&抄訳して、AT&T, MotorolaおよびIBMのようなclientsに送付、日本自慢の製造システムへのかなりの洞察を得たものである。

根底にある哲学、"ものづくり"は、日本経済そして日本の雇用に非常に有利に働き、それをアジア全体が見習っている。台湾、韓国そして中国、これらの経済がどんなに良くなっているか、論じる必要はないと思う。実際、日本にとっての問題は、それらの国々が"ものづくり"を非常に上手く吸収して、手ごわい日本の製造のライバルになり、日本からたくさんの製造を吸い取っていることである。
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◇Andy Grove on US employment crisis and how to create jobs(7月2日付け Electronics Design, Strategy, News)
→前Intel CEO and chairman、Andy Grove氏のBusiness Weekコラム記事について。アジアは、製造および増大する中流階級によるエレクトロニクス消費だけでなく、市民のすべてに向けてjobsを作り出すことに重点化しており、そのことが米国の戦略と比較して差別化要因の鍵である旨。

◇Comment: Andy Grove, startups and job creation(7月8日付け EE Times)
→Intel社のco-founder、Andrew Grove氏。米国ハイテク分野の指導層は、イノベーションを促進、新技術を大きくしていって、米国エンジニアが回帰して働ける新しいモデルを見い出さなければならない旨。誰かが自分たちの車庫で偉大なアイデアに辿り着くという"神話上の機会"は過去のもの、と警告の旨。


≪グローバル雑学王−105≫

環境問題が資本主義を変えていくという論調の中で、石油から新しい代替へ今後のエネルギーの推移の見方を、

『変わる世界、立ち遅れる日本』
 (Bill Emmott 著 烏賀陽 正弘 訳:PHP新書 655)…2010年3月4日 第1版第1刷

より追ってみる。まさに地球規模で世界すべての共存共栄を図りながら進めるべきという壮大な鳥瞰図である。


[第6章 グリーン大国に化ける中国−−−石油時代の終焉]
 
*石油の高値が温暖化の歯止めとなる
・2009年8月には1バレル当たり70ドル、同年3月の倍に上昇、2009年末まで続いた。
 …なぜ原油価格は反転? →世界経済が安定に向かった
              →原油の供給が制限された
・OPECの加盟国は、原油価格がこれ以上、下落しないよう努めており、その結束ぶりが印象的であり非常に意外
・化石燃料が高価 →環境問題と地球温暖化にとっては、朗報
 ⇒代替エネルギーを模索、新しい技術への投資を促す

*中国を説得するための有効な手段
・世界にとって必要
 →中国全体がエネルギーを効率化、二酸化炭素を軽減することが国益につながる、と自覚すること
・中国は今や、劣悪な労働集約型経済から、より多岐にわたるハイテク経済に移行すること
 ⇒ 一.中国政府が、医療保険や教育などの社会福祉事業への支出を増やす
   二.人民元を切り上げる
   三.高価な石油価格
・企業が、グリーンなテクノロジー、例えば電気自動車の開発や太陽エネルギーを利用する努力が、予想より早く実効を上げることに

*重要なのは徐々に、確実に排出量を減らすこと
・必要なのは、今世紀をかけて、徐々に、しかし確実に排出量を減らしていくこと
 →それぞれの国が着実に、しかも継続的に生活を変えていくこと
・(著者が)期待するのは、代替エネルギーの発明と開発が大きく進展するまで、現在の化石燃料の高値が長く続いてくれること
・インドは、中国に比べせいぜい三分の一程度の豊かさ
 →人民元が切り上げられれば、その格差はますます拡大へ
・地球温暖化による環境変化は、長期的な現象
 →政治や経済力が正しい方向に進んでいる限り、政治的取り決めの結果を、じつに辛抱強く見守ることができる

*人類は絶えず技術革新を繰り返してきた
・以上のバラ色で楽観的な予測や分析
 →環境問題専門家は三つの主要な議論:
  一.事態はもっと切迫している
  二.石油の高値、あるいは中国の人民元切り上げでは、大した効果を上げられない
  三.続く世界の人口増加 →地球環境への影響はますます激化
・現在に至るまで、人口は増大したが、人々は裕福になったではないか
 →経済と技術(これも本質的に経済力に負う)
・私たちの世代に関係する問題を、まず懸念すべき
 …化石燃料時代は、想像するよりも、急速に終わりへ
  →地球温暖化、汚染問題の立場から、非常に朗報
  →技術研究開発と投資にとっても、いい知らせ

*石油時代が終焉するまでのシナリオ
・本書で強調したい ⇒来る10年のうちに石油時代が終わりを告げる
          …完全に消滅するまでには、数十年を要するだろう
・スマート・グリッド 
 →使用者が電気消費量をより効率的に管理、小規模発電事業者が送電網に電気を供給することが可能に
 ⇒10年以内に、エネルギーや輸送、それに送電システムを劇的に変えよう
・さらに二つの問題:
 →代替品や技術開発にどれほど大きな影響を与えるか、判断しにくい
 →石油や天然ガス、そして他の化石燃料からの収入に依存する国への影響

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