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ウェーハレベルのカメラモジュールのライセンス供与に力を入れるTessera

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半導体ICパッケージの先端研究開発会社であった米Tessera Technologies社は、ウェーハレベルパッケージング(WLP)技術を応用して、イメージセンサーのWLP技術を進め、新しい市場を切り拓いている。この技術を使えばイメージセンサーモジュールをワンストップショッピングで誰でも作れるようになり、ローコストの携帯電話用カメラに応用できるようになる。大きな市場のBRICsにカメラ付き携帯電話を低価格で提供できる。

このほど、インターコンチネンタル東京ホテルで開かれたTesseraテクノロジーシンポジウムにおいて、ウェーハレベルカメラ(WLC)と呼ぶイメージセンサーモジュールを提供する体制を整えたと発表した。このほどその新製品として、センサーモジュールに向けWLPで作るレンズを発表した。製品名OptiML WL-VGA-1Eのライセンス供与を受ければ、1枚レンズだけで機械的なアクチュエータを全く使わず自動フォーカスやデジタルズームが可能なセンサーモジュールを台湾でも中国でもどこでも作れるようになる。


ウェーハレベルカメラ(WLC)


研究開発会社でライセンス供与とロイヤルティ収入をビジネスモデルとする、Tesseraは試作ラインを持ち、技術を検証できる施設を持つ。これまでWLPをはじめとして、先端半導体パッケージの開発と技術供与に力を入れてきたが、携帯電話用のカメラモジュール市場にも力を入れる。同社が発信するプレスリリースを見ても、8月6日までは「エレクトロニクス産業の小型化技術プロバイダ」と称していたが、その日に社長兼CEOのBruce Williams氏からHank Nothhaft氏にバトンタッチしてからは、「次世代エレクトロニクスにイノベーションをもたらすトランスフォーメーショナル技術プロバイダ」と自らを定義するように変わった。

ここにTransformational Technologiesとは、センサーなどの変換技術のことであるから、イメージセンサーモジュールに力を入れるとみてとれる。イメージセンサーは光を電気信号に変換するデバイスである。最近のハリウッド映画の「トランスフォーマー」にもひっかけているようにも見える。


OptiML WL-VGA-1E


Tesseraが今回発表したOptiML WL-VGA-1Eは、このレンズとその筐体のウェーハを重ね合わせ、最後にダイシングのように切り出すことでレンズ部分が出来ている。ウェーハ径は200mmだが、その材料についてはガラスなのかプラスチックなのか明らかにしない。鉛フリーのリフロー半田には耐えられるとしている。すなわち260℃で30秒間を3回繰り返しても劣化しないというデータも発表した。

レンズは1枚のみで、レンズだけの大きさは2.3mm角、厚さは0.511mmだが、筐体部分を含めてレンズの山の高さから結像面までの距離はVGAセンサーの場合に2.085mmという厚さである。ここでは対角線で1.76mm、画素サイズ2.2μmのセンサーをパッケージングできる。

この1枚レンズのチップを数1000個搭載したウェーハで一度にレンズモジュールを作るため、究極的には1個1ドルのカメラモジュールへの道を開くことになるとしている。今回のレンズ製作技術をライセンス供与する相手を探すだけではなく、標準品として一般市場にも提供する計画だ。

Tesseraは、わずか1枚のレンズだけで、自動焦点、3倍ズーム、明るさ調整ができる。機械的な可動部分を持つ必要がないため、応答速度は速い。従来の機械式の光学ズームでは、暗い場所や高速動作でのピント合わせには時間がかかり、シャッターチャンスを逃がすことがあったが、このレンズは機械式ではないため、その問題がない。さらに、赤目防止、顔認識・笑顔認識アルゴリズムをソフトウエアで持っている。2007年8月の発表ではその詳細をほとんど明らかにしなかったが、今回はズームについて少し明らかになった。

なぜ固定焦点レンズ1枚だけで自動焦点が可能なのか。詳細を明らかにはしないが、カギを握るのはレンズ設計と画像処理アルゴリズムの工夫によるという。このアルゴリズムOptiML Focus製品はソフトウエアの形で、SoCやアプリケーションプロセッサにIPとして組み込む、あるいはイメージシグナルプロセッサ(ISP)チップに組み込むこともできる。ただし、自動焦点は20cm〜無限大の距離をカバーする。すでに東芝とサムスンにそれぞれライセンス供与している。

明るさ調整技術OptiML UFLは、焦点深度を低下させることなく最大250%までの光を取り込み画面を明るくする画像処理アルゴリズムである。暗いライトをシミュレーションにより明るくするという。

ズーム技術OptiML Zoomについては、固定焦点のレンズと画像処理アルゴリズムを基本としている。レンズはイメージセンサーの領域全体をわざと歪め、まるで魚眼レンズのように真ん中を拡大し周囲を歪めるように像を結ばせるように設計する。真ん中の画像はレンズによって拡大された画像である。そして、画像の周囲の倍率はむしろ低く歪めている。センサーの周囲をオーバーサンプリングすることにより画像の解像度を高めていき、真ん中の倍率に合わせるように計算処理する。

このような画像処理アルゴリズムは、Tesseraが買収したイスラエルのテルアビブにあるEye Squad社が開発したもの。Tesseraはこの3年間に4社買収し、カメラモジュールをワンストップショップで実現できる体制を整えた。イスラエルのShellcase社はWLPのパッケージング、ノースカロライナ州シャーロッテのDigital Optics社はレンズを含めたカメラモジュール技術、さらにFotonation社からは顔認識ソフトウエアを手に入れた。

この顔認識ソフトは、2万枚のデータベースを元に正面や横顔も認識できる。加えて、普通の顔だけではなく、写真を撮るための笑顔も認識する。複数の人の写真でも笑っている人とそうではない人を識別し、笑顔アイコンを画面内に表示する。加えて、フラッシュをたいた時に良く起きる赤目や黄色目も自動補正する。顔認識ソフトのコードサイズは270Kバイト、赤目補正は100Kバイトとさほど大きくはない。カシオと富士通、サムスンにそれぞれライセンス供与しているという。

Tessera社の狙う市場は主に、低コストのカメラ携帯電話市場と、テレビ会議向けのノートパソコンである。BRICs地域の低価格携帯電話は市場がきわめて大きく、成長する可能性も大きい。特に低価格のVGA程度の画素数のイメージセンサーは市場が縮小していくわけではなく、いまだに拡大基調にある。携帯電話用のカメラモジュールは3M画素の製品が最も伸びると見られているが、VGA製品はBRICs向けだけではなく、先進諸国向けでは2台目のカメラモジュールとして携帯電話で自分の顔を移すテレビ電話用やパソコン用への応用を同社は考えている。


Tessera社の狙う市場


今回のワンストップショップによるウェーハレベルカメラの試作やトレーニングは、シャーロッテ工場でライセンス供与サービスとして、行うとしている。また、ウェーハレベルのレンズやカメラモジュールのカスタム設計も受注する。


(2008/09/26 セミコンポータル編集室)

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