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インフィニがカーエレ製品のポートフォリオを拡充、トップシェア目指す

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ドイツのInfineon Technologies社は、スマートセンサーからマイクロコントローラ(マイコン)、パワー半導体と、自動車に必要なセンサーから制御系、アクチュエータまで製品のポートフォリオをカバーする総合力を武器に日本市場のシェア拡大に向けギアを切り替え始めた。これまで、世界市場で第2位に食い込んではいるものの、日本市場ではまだ5位にとどまっているという。

米市場調査会社Strategy Analyticsの調べでは、2007年の車載用半導体の世界ランキングは、第1位のFreescale(10.3%)に対して、9.4%と0.9ポイント後塵を拝しているが、3位のSTMicroelectronics(8.0%)、4位ルネサステクノロジ(6.9%)とは1ポイント以上引き離している。Freescaleは通信に強いことを生かして自動車用コミュニケーション規格であるCANやLIN、さらには10MbpsのFlexRayにも対応するマイコンをすでに市場へ送り込み、トップの座を死守している。これに対して、自動車用のセンサーからパワー半導体IGBT(integrated gate bipolar transistor)までも強いInfineonとしては自動車エレクトロニクスで首位の座を奪いたいと狙っている。

自動車エレクトロニクスでは、ほとんどすべての半導体メーカーが成長の機会をうかがい、5月21~23日パシフィコ横浜で開催された、「人とくるまのテクノロジー展 2008」でもトップ4社以外の企業も自動車エレクトロニクスへのシフトを強化する。例えば富士通がLIN、CAN、FlexRay対応マイコン開発キットを相次いで発売してくる計画を示した。部品メーカーである村田製作所は1円玉よりも小さなロータリーポジションセンサーを使ったステアリング・バイ・ワイヤーのデモンストレーションを見せた。パソコンベースの測定器で急成長している米National Instruments社もLabVIEWを使い、自動車の振動解析や組み込みシステムの設計やテストに威力を発揮することをデモンストレーションした。20年も前から自動車エレクトロニクスに参入しているデンソーやボッシュはいうまでもなく、安全機能の充実を着実図っている。

このほどインフィニオンテクノロジーズジャパンは、2007年11月より参加した土屋和久オートモーティブ事業本部長(写真)を先頭に、自動車用半導体の製品ポートフォリオを拡充している。同氏は、インフィニオン入社前にライバルであるフリースケールセミコンダクタ・ジャパンの取締役副社長を歴任している。


土屋和久オートモーティブ事業本部長


インフィニオンが売りにするセンサーでは、圧力や加速度を検出するMEMSセンサーをはじめ、磁気を検出するホールセンサーやGMR(giant magneto-resistance)センサーと信号処理回路を1チップに集積、さらに他のチップも1パッケージに納めたスマートセンサーがある。ジャイロを利用する角速度センサーは持っていないが、GMRセンサーで位置や角速度を高精度に検出測定できるとしている。

マイコンは、自動車用のアーキテクチャとしてAUDO(Automotive Unified Processor)ファミリーと呼ぶシリーズを継続的に拡大していく。その中核となるマイコンが32ビットRISC CPUとDSPを搭載しながら、コード効率を上げ少ないプログラム行数で高い機能を実現するTriCoreマイコン。命令セットは32ビットだけではなく、16ビット命令も採用、少ないプログラム行数でソフトウエアを書くことを心がけている。直噴ディーゼルエンジンの排気ガスの低減や最適な燃焼噴射処理タイミングと制御を行う場合には、ハイエンドのマイコンTC1796を用いている。シリンダ内の圧力を計測制御するためセンサーからの信号を高速にAD変換し、デジタル処理、DA変換でアクチュエータへとつなぐ、一連の処理をリアルタイムでこのマイコンで高速に行う。ソフトウエアの欧州におけるプラットフォーム(OS)のAUTOSARにももちろん、対応する。

ハイブリッド車がこれから大きく成長しそうな市場に向け、3相モーター駆動用のIGBTパワーモジュールは、自動車仕様の半導体の最大接合温度Tjmaxを175℃にまで上げた。これは半導体内部に流す電流を均一に行き渡らせるような工夫に力を注ぎ、実績のあるシリコンウェーハで作製できることが強みでもある。20kWの出力が求められるマイルド・ハイブリッド向けの600V、400Aのメインインバータ用パワーモジュールHybridPACK1と、80kWの出力が求められるフルハイブリッド向けの600V、800Aのメインインバータ用パワーモジュールHybridPACK2を開発、顧客へ提案し始めている。

旺盛な自動車用半導体をサポートするため、欧州のVillachとマレーシアのKulimに前工程を増強する。IGBTを生産するKulimの工場では8インチウェーハのラインを構築済みで、1年以内に月産10万枚の生産能力に上げていく計画だ。

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