セミコンポータル
半導体・FPD・液晶・製造装置・材料・設計のポータルサイト

アマゾンのキンドルで大ブレークした電子ペーパーに注目が集まったFPD 09

アマゾンの電子ブックである「キンドル」が米国で好調を続けていることを反映して、FPD International 2009では、電子ペーパーが注目を集めた。キンドルのディスプレイを提供している米Eインク社は、フリースケール・セミコンダクタ、セイコーエプソンなどのチップメーカーと提携しているだけではなく、ポーランドのMpicosys社のようなスマートカードのベンチャーなど、続々とパートナーシップを結び、ビジネス拡大を図っている。

アマゾンの電子ブック、キンドル

アマゾンの電子ブック、キンドル


Eインクの提携は、何がキラーアプリになるかわからないため、さまざまなパートナーとの提携を通じて、キンドルのようなキラーアプリを見つけ、応用を拡大していく狙いがある。第二のキンドルを目指した応用がポーランドから登場した。

入退室カードに使う応用例をポーランドのグディニアに本社を置くMpicoSys社が提案した。RFIDカードのセキュリティを高めるため、カードそのものを本人しか持てないような指紋認証システムもカードに搭載した。このカードでは、指紋認証して本人を確認した後、セキュリティチェックしてゲートなどを通過する場合にはRFIDカードとして活用する。本人であれば、電子ペーパーディスプレイにOKマークを表示する。通常は顔写真を表示する。


MpicoSys社のディスプレイ付きスマートカード
MpicoSys社のディスプレイ付きスマートカード


このスマートカードには、Eインク社の電子ペーパーディスプレイ、RFID用の無線回路、指紋認証センサーなどが搭載されている。電子ペーパーの情報は書き換え頻度がそれほど多くないため、電力を消費しないまま常に表示しているスマートカード用途には向いている。RFIDの周波数は13.56MHz、カードの消費電力は2mW。裏面にアンテナを配置している。

MpicoSys社は、製品を定義する初期段階から試作、製品設計、検証テスト、量産サポート、そして製品サポートに至るまでの全てをサポートするターンキーソリューションを提供する。2006年に創業したばかりのベンチャーであるが、スマートカードの専門知識、技術のプラットフォーム、サプライヤーとのコンタクトなどを活かして、短い開発期間短縮を実現できる。創業にはポーランドの科学技術工業団地にあるインキュベーションセンターを利用した。ここにはさまざまな研究開発の専門家がいるという。台湾のプライムビュー・インターナショナル社と提携している。

Eインクは、ディスプレイをコントロールし、さらに顧客の求める機能も集積して1チップSoCを開発するため、米フリースケール・セミコンダクタやセイコーエプソンとも提携している。フリースケールのi.MXプロセッサにEインクのディスプレイコントローラVizplexを集積、電子ブック市場に向けたSoCを開発することで先日合意した。エプソンとは、EインクのVizplexに機能を追加したディスプレイコントローラを共同で開発したと発表した。このディスプレイコントローラには2Mバイトの大容量メモリーを集積しており、CPUへの負担を軽減するとしている。

ディスプレイメーカーでは、台湾のAUOが、6インチのフレキシブル電子ペーパーディスプレイを発表した。このディスプレイは16階調のグレイスケールを持ち、コントラストは9:1、反射率は33%という。AUOはフレキシブルなディスプレイなので、顧客の要求に応じてテーラーメードで生産供給できるとしている。サンプル出荷は2010年になる予定。また、書籍のように右ページと左ページにたためるディスプレイも展示した。


台湾AUOの左右ページのある電子ブック
台湾AUOの左右ページのある電子ブック


加えて、20インチと大型の電子ペーパーを展示、公共的な場所での情報ディスプレイとしての応用を考えている。ちなみに株式情報を提供するディスプレイとして展示した。電子ペーパーといえども書き換え時には電力を消費する。20インチでは2W以下で16階調というスペックだ。

ブリジストンもフレキシブルな電子ペーパーを開発してきているが、同社の方式はEインクとは違い、ディスプレイ内部の媒体として気体を使っており作りやすいとしている。実際、フレキシブルなディスプレイはロール-ツー-ロール方式で作っているという。4096色のカラーディスプレイを2010年には1677万色というフルカラーに近づけていく予定だ。さらに、モノクロディスプレイ用に開発評価キットも揃えており、電子ペーパーを使った応用を考えている顧客には便利なツールとなっている。

NECも電子ペーパー分野に参入、1600×1200画素の高精細ディスプレイの試作品を展示した。

電子ペーパーのような新しいディスプレイで顧客を勝ち取るためには、単なるカラー化や高精細化などディスプレイだけの改良ではなく、Eインクのようなさまざまなパートナーと提携し、開発キットを提供したり、1チップソリューションによって小型化・高機能化を顧客に示したりすることが必要になるだろう。

(2009/11/04)

月別アーカイブ