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TIのPMIC新製品、EMIノイズ抑制技術をふんだんに

TIは、EMI(電磁波干渉)を削減させたパワーマネジメントICを続々発表、これからの車載を始め工業用途への応用を狙っている。DC-DCコンバータをはじめとする電源ICは、特に車載用ではEMI削減は絶対条件となる。EMIは特にスイッチングレギュレータのようにオン/オフの切り替えが激しいと発生しやすい。TIの最新EMIノイズ削減技術を紹介する。

図1 Texas Instruments降圧スイッチングレギュレータWide-Vin製品ラインマネージャーのGanesh Srinivasan氏(左)と同社アナログ電源製品部昇圧&マルチチャンネルDC-DCコンバータVP兼ジェネラルマネージャーCecelia Smith氏(右) 出典:Texas Instruments, Inc.

図1 Texas Instruments降圧スイッチングレギュレータWide-Vin製品ラインマネージャーのGanesh Srinivasan氏(左)と同社アナログ電源製品部昇圧&マルチチャンネルDC-DCコンバータVP兼ジェネラルマネージャーCecelia Smith氏(右) 出典:Texas Instruments, Inc.


クルマ内部はノイズだらけの環境だ。「ノイズは出さない、拾わない」を原則としなければクルマ用の半導体製品としては失格である。自動車エンジニアにノイズ対策を依頼するようでは半導体は売れない。半導体側でノイズをしっかり対策しておく。TIが今回発表した新製品は、ノイズ対策を施した電源ICばかりであり、クルマ向けにしっかり訴求している。

電源ICの小型化には、スイッチングレギュレータ方式が最も近い。しかしこの方式はノイズを出す。そこでノイズを出さない小型の電源ICを設計が求められる。「TIには幸い、EMI対策のエコシステムがある」と同社降圧スイッチングレギュレータWide-Vin製品ラインマネージャーのGanesh Srinivasan氏(図1)は語る。特にTIが10年ほど前に買収した旧National Semiconductorが開発した設計ツール「Webench」は、EMIシミュレータを備えており、設計を容易にしてくれる。さらにTIには社内にEMIテストができる電波暗室もあるという。

EMI低減には、小型化とフィルタ技術が重要になる。ICやその基板サイズを小さくすると寄生容量やインダクタンスも小さくなり、EMIは低減する(図2)。さらに拡散スペクトル法も導入する。今回の新製品の一つ、「LM25149-Q1」降圧コントローラ(注1)では、従来の拡散スペクトル技術を改良したDRSS(Dual Random Spread Spectrum)方式を使った。元々、拡散スペクトル法は、電波のパワーを複数の周波数に分散する技術であり、携帯電話に使われてきた技術である。これを電源に応用することで、電源から発生する電磁波ノイズを抑制することができる。


LM25149-Q1 and LM25149の利点

図2 小型、DRSSでノイズを削減 出典:Texas Instruments, Inc.


周波数帯域を広げる技術として三角波変調にしてピークパワーを減らしてきた。さらに、三角波を擬似ランダムノイズ変調させることで、ピークパワーを減らす方法を今回は使った。しかも、低周波側と高周波側でランダムノイズ変調をかけたためにデュアルの疑似ランダムと呼んでいる。ノイズパワーの周波数スペクトルが低周波側と高周波側でそれぞれ特性が違うからだ。

もう一つ、ノイズを下げるために、アクティブフィルタ方式を使った。従来、コンデンサやコイルを使ったパッシブな周波数フィルタはあった。アクティブフィルタ技術では、ノイズパワーを検出し、その波形を180度位相反転させて、ノイズ波形に加えることで、ノイズを打ち消し合うというAEF(Active EMI Filter)回路を設けた。

LM61460という同期整流型降圧コンバータ製品では、ICパッケージ内部にあるワイヤーボンディングの代わりにフリップチップを使うことで、スイッチング時のリンギングを抑えている。丸い断面のボンディングワイヤーは、ワイヤーの周囲に磁界を発生するためノイズを放射しやすい。リードフレームベースだが、フリップチップでボンディングパッドと端子を直接接続することで、インダクタンスの影響を減らしている。


HotRod-packaged device

図3 フリップチップを用いるHotRod配線技術 出典:Texas Instruments, Inc.


また、トランスを用いる絶縁型DC-DCコンバータ「UCC12050」では、絶縁トランスをシリコンチップ上にコイルを形成して集積した。トランスの1次側と2次側との間の容量を小さくしているため、効率が向上し2次側のコンデンサ容量を小さくでき、サイズを80%も小さくできた、としている。

TIは車載認定取得済みの製品が多く、ADAS(先進ドライバ支援システム)やインフォテインメントだけではなく、パワートレイン部分や、ヘッドライトなどのボディエレクトロニクスにこれらの電源IC新製品を投入していく。さらに、FA(ファクトリオートメーション)やモータ制御、ビルオートメーション、電力網インフラ、無停電電源などの工業用途での電源ICとして今後の市場を期待している。


1. TIは、電源ICのパワートランジスタを外付けにした製品をコントローラと呼び、ICパッケージに内蔵した製品をコンバータと呼んでいる。

(2021/04/09)

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