Semiconductor Portal
祉潟潟若帥ゃ

» セミコンポータルによる分析 » 週間ニュース分析

キオクシア、ソニー、TELの決算報告から読み取れるもの

お盆休みに入る前の先週、キオクシアやソニーセミコンダクタソリューションズ、東京エレクトロン(TEL)などの2024年第2四半期(4〜6月期)の決算が発表された。それによれば、半導体メーカー2社は順調な回復を見せ、TELは中国比率が約50%にまで高まっていた。半導体製品の需要は少しずつ回復しているが、装置需要の回復はやや遅い。

3Q2022から2Q2024までのキオクシア業績(単位:億円)

図1 キオクシアの業績が順調に回復している 単位は億円 出典:キオクシアの発表を筆者がまとめた


キオクシアの売上額は、前年同期比71%増の4285億円と大幅の増収となった。本業(NANDフラッシュメモリなどの製品)の利益を示す営業利益は1259億円、と売り上げの29.4%を占めるように回復した。NANDフラッシュの平均単価は4〜6月期に前期に対して20%前後上昇し、出荷ビット数も同10%台の増加を示したことが幸いした。需要としては、データセンターなどでのSSD(半導体ディスク)の普及と、スマートフォンの緩いながらも回復が進んできたことも回復の要因。

キオクシアは、新しい大容量のNANDフラッシュメモリの開発・量産に力を入れている。2T(テラ)ビットのQLC(4ビット/セル)という大容量NANDフラッシュメモリを開発、サンプル出荷を始めている。昨年にはやはり大容量化を狙いCBA(CMOS directly Bonded to Array)と呼ぶメモリアレイのウェーハとCMOS周辺回路のウェーハを張り合わせる技術を開発し、この7月に1TビットのTLC(3ビット/セル)型のNANDフラッシュの量産を開始した。北上工場第2製造棟の建屋が完成、2025年秋の稼働を予定しており、これから攻めていくことになる。

ソニー半導体(イメージング&センシング・ソリューション部門)も好調で、24年第2四半期における売上額は、前年同期比20.8%増の3535億円となった。営業利益率10.4%で366億円の営業利益となった。本業のスマホ向けイメージセンサの需要が戻りつつあり、複眼カメラを搭載する機種が増えてきたためセンサ需要が回復した。また、円安の影響も大きいとしている。円安の影響により円表示での売り上げ増は369億円、営業利益増は214億円となる。

2024年度(20205年3月期)の売り上げ予想額は1兆8500億円、営業利益は2750億円、と予想している。前期決算時の5月の予想よりも100億円増額となっているがこれも為替の影響だとしている。

半導体製品を設計・製造・販売する半導体企業は、スマホの回復を実感しながら、パソコンの新需要AIパソコンに期待している。ただ、パソコンにおいてどのような機能をAIで実現しているのかまだ明らかではないが、生成AIをオフラインで可能なパソコンもデモで示されており、その登場が期待されている。AI機能が一般ユーザーにどの程度受け入れられるかによって、需要が決まるだろう。

ようやく在庫調整が進むものの、稼働率がまだ十分上がっていない状況では、半導体製造装置の需要が高まるわけではない。このため、製造装置メーカーは苦労しながら中国市場に突破口を見出している。

東京エレクトロンの24年4〜6月期の売上額は、前年同期比41.7%増の5550億円となり、営業利益は1657億円と利益率29.9%となった。シリコンプロセス装置の新規装置の売上額4315億円の内訳を見ると、DRAMが26%、NANDフラッシュなどの不揮発性メモリが2%、非メモリは72%となっている。中古装置販売のフィールドソリューション部門が1181億円である。

地域別では中国向けが49.9%と圧倒的に多く、その次が台湾の14.4%、韓国12.2%、北米10.6%、日本7%などとなっている。海外売上比率は実に93%に達している。中国向けが異常に多いが、中国で特に強い半導体製品の需要があるわけではない。しかもTELだけではなくApplied Materialsも中国比率が極端に高い。
これらから、需要というより政治的な思惑であろう。米中貿易戦争の行方次第では中国向けの製造装置を全面禁輸にする可能性もあるため、日米とも今のうちに売ってしまおう、中国の半導体メーカーは買えるうちに買っておこう、という姿勢で両者の利害は一致している。

(2024/08/13)
ご意見・ご感想