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半導体不足から、半導体エンジニア求人増、ウェーハ増産、値上がり製品も

この1週間も半導体不足とクルマのニュースが相次いだ。半導体不足は半導体エンジニア不足につながり、2021年1〜8月の求人数が前年同期の7割増となっている。SiウェーハメーカーのSUMCOが増産を決めた。NORのフラッシュメモリも値上がり傾向が出ている。また、クルマの電動化技術は着実に進んでいる。

10月1日の日本経済新聞によると、人材大手のリクルートが半導体エンジニアへの求人数の推移をまとめた結果、半導体エンジニアの関連求人は2015年以降増加しており、21年に入ると1〜8月の実績は2016年比2.6倍となっている。ソニーグループは、全体の中途採用を前年度比2割増やす計画で半導体事業が採用数を押し上げているという。キオクシアも中途採用を2019年度の113人から2020年度に275人に引き上げた。21年度も前年度並みの採用を計画しているという。ルネサスは21年4月から国内でも固定昇給を廃止、考課内容をベースにして昇給額を決めるとしている。

SUMCOは総額2287億円を投じて300mmウェーハを増産する、と発表した。新工場を建設するほか、子会社の設備を増強する。22年から建屋の建設と、ユーティリティ設備の設置を進める。23年から製造設備を導入し順次生産していく計画だ。設備投資完了は2024年内。投資のための資金は新株発行で賄う。今回公募するのは国内の一般募集1500万株と海外募集4500万株の合計6000万株で、手取り総額約1280億円を見込み、内786億円を新工場(建屋とユーティリティ)に投資する。残りは製造装置関係で2024年内に完了する予定だ。

NANDフラッシュメモリの単価は、第3四半期は5%値上がりしたが2021年第4四半期には0〜5%値下がりが見込まれると市場調査会社のTrendForceが予想する(参考資料1)。ただ、NORフラッシュは値上げが続いている。NORフラッシュは、大容量化ではNANDに適わないが、ゲーム機や家電向けには程よい容量で高速、高信頼性などの特長を生かして使われている。SPI(Serial Peripheral Interface)出力の256Mビット品の21年7~9月の大口取引単価は、前四半期比3割高の2.2ドルとなり、3四半期連続で上昇したという。NORフラッシュメーカーが台湾メーカー(Macronix、Winbond、GigaDevice)とInfineon(旧Cypress、源流はSpansion)などに限られ、急な増産は難しい。シリアルアクセスのNANDフラッシュと違いNORは高速ランダムアクセスが可能で車載用にも使われ始めている(図1)。


図1 信頼性と機能安全を組み込んだ車載向けNORフラッシュメモリの例 出典:Infineon Technologies(旧Cypress Semiconductor)

図1 信頼性と機能安全を組み込んだ車載向けNORフラッシュメモリの例 出典:Infineon Technologies(旧Cypress Semiconductor)


ルネサスエレクトロニクスは車載向けのMCU(マイコン)を2023年までに供給能力を5割超増やす、と9月30日の日経が報じた。自社生産とファウンドリへの依頼の2本立てだが、ファウンドリの供給枠も確保する。自社生産では、ここ数年、200億円程度で推移してきた設備投資額を21年に800億円超、22年には600億円に上げていく。

日立製作所の子会社の日立パワーデバイスは、パワー半導体の供給量を2024年度までに7割増やすと9月30日の日経産業新聞が報じた。現在、生産するウェーハの5割を自社工場で生産し、残りの5割をファウンドリに依頼しているが、ファウンドリへの依頼分を7割に引き上げ、供給量を増やすとしている。日立パワーデバイスは鉄道やEV(電気自動車)向けのIGBTやダイオードなどを生産、21年3月期の売上額は400億円程度。24年以降はEVが大きく伸びるとしてパワー半導体に力を入れる。

国内主要自動車メーカー8社がまとめた8月の世界生産は、前年同月比17%減の153万4000台だった、と9月30日の日経が報じた。これで2カ月連続1年前を下回った。新型コロナの変異ウイルスによる感染拡大で部品供給が滞り、半導体不足も加わり、減産している。8社の国内生産は16%減、海外生産は17%減と国内と海外との差は少ないことから、世界的な出来事が減産の原因となっている。

バッテリとして安全性の高い全固体電池で5V出力の硫化物系コイン型電池をマクセルが11月からサンプル出荷すると日経産業が報じた。セルを積層し、直列接続することで電圧を2倍に上げた。まずは産業機械向けに出荷し、将来はEV向けを目指す。

参考資料
1. "NAND Flash Market Will See Falling Quotes and 0-5% QoQ Declines in Contract Prices for 4Q21, Says TrendForce", TrendForce (2021/09/23)

(2021/10/04)
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