セミコンポータル
半導体・FPD・液晶・製造装置・材料・設計のポータルサイト

華為特需後も半導体景気は続く可能性あり、勢力図は変化

|

米中貿易戦争で狙い撃ちされた華為科技は輸出制限が強化される9月15日まで、ICや電子部品を調達し続けた。いわゆる作りだめによる華為特需が9月まで続いたが、その後はどうなるか。AppleがiPhone 12を発表、10月下旬から発売する。ArmはNvidiaに買収されることが決まり、無料のCPUコア「RISC-V」の大手の採用が明らかになってきた。

9月までの華為特需では、TSMCやUMCのようなファウンドリだけではなく、華為向けのICや電子部品のメーカーも潤っていた。台湾TSMCが10月15日に発表した2020年第3四半期(7〜9月期)決算では前年同期比22%増の3564億台湾元(約1兆3000億円)、純利益率38.5%の1373億台湾元と絶好調を示した。5G対応のスマートフォンを中心に旺盛な受注が続き、2020年通期の売上額は前年比30%増になる見込みだという。第4四半期の売上額見通しは、前年同期比19〜22%増の124〜127億ドルと予測する。TSMCは華為特需後も、Appleだけではなく、AMDやQualcommなどからの受注が殺到しているという。

UMCが発表した9月の売上額は、前年同月比34%増の145億3381万台湾元(1元=3.66円)だった。日本円で約532億円となった。1〜9月累計でも前年同期比23.7%増の1315.2億台湾元(約4814億円)となっている。また、16日の日経は、MediaTekに対する駆け込み需要を極めて的確に表現しており、今年の5月の売上額が前年同月比で14%増、同6月が21%増、7月29%増、8月42%増、9月61%増と急速に増加している様子を伝えた。

9月時点ではAppleのiPhone 12の発表が遅れ、前年同月比で減収に見舞われた企業も多かった。鴻海精密工業は9月の売上額が同21%減となった。ただし、10月13日にAppleは新型のiPhone 12を発表、10月下旬から発売するため、10月以降は鴻海はじめ台湾のEMS企業は回復する見込みだ。

AppleのiPhone 12が遅れたのは、おそらく5nmという超最先端プロセスを使ったアプリケーションプロセッサA14 Bionicを量産するためであろう。最先端の微細化技術は、量産開始時点では歩留まりが悪いことが通例だからである。

Appleが発表したiPhone 12は4機種で、全て5G対応である。A14 Bionicプロセッサは、118億トランジスタを集積し、CPUとGPUを最大50%高速にした。さらにニューラルネットワークを実行するAIエンジンは16コアを集積して80%高速になり、機械学習アクセラレータは70%速くなったとしている。A14 Bionicプロセッサとは別にLiDARスキャナー機能も搭載した。深さ方向も考慮した3次元地図をナノ秒で得ることができ、顔認識はもちろん、AR(拡張現実)などに向く。カメラ機能は開口率f1.6のレンズの採用で27%明るい映像を撮り込める。加えてLiDAR利用で自動焦点を従来品より6倍高速になった。さらに夜間撮影光学モードや5倍の光学ズームなどのカメラ機能が充実している。プロ並みの映像を撮れるというDolby Visionを動作させるISP(画像処理プロセッサ)もA14 Bionicプロセッサに集積している。

華為特需後も実はTSMCに代表されるように、Appleや小米などのスマホメーカーは生産量を増やすことを表明している、と16日の日経が報じた。Appleが20年のiPhone生産を当初予定の1割増の2億2000万台とし、小米やOppoなども21年には20年計画比5割増しの約2億台の生産目標を掲げているとする。MediaTekのようなICメーカーもパイが華為からAppleや小米、Oppoなどのライバルメーカーにシフトすると、大きく沈まないかもしれない。

ArmがNvidiaに買収された後の心配事に一つであった、ライバルCPUコアであるRISC-Vの動きが活発になった。ルネサスエレクトロニクスが、RISC-Vコアを集積したSoC(System on chip:システムLSI)を開発することを早速表明した。そのために、CPUのカーネルだけではなく、低消費電力化と高速化を取り入れた32/64ビットのコアとその開発環境を提供する台湾のAndes Technology社と提携した(参考資料1)。このAndesCore IP32ビットコアを集積したSoCは21年下期にはサンプル出荷する予定である。

ルネサスはこの発表の後、Armのマイコン「RAファミリ」も充実させていくことを続けて発表した。Armのマイコン専用コアであるArm Cortex-Mシリーズの最上位コアCortex-M33を使い、RAファミリを42機種に拡大した(参考資料2)。IoTに向け、Arm TrustZoneア暗号化技術を取り入れ、セキュリティを強化した。ルネサスは当面、ArmコアとRISC-Vコアを使い分けていくようだ。

Infineon TechnologiesもIndustry 4.0の中核技術にRISC-Vを使うことを表明しており(参考資料3)、そのIndustry 4.0を推進するためのコンソーシアムScale4Edgeを形成した。このメンバーには、自動車ティア1メーカーのRobert Boschやミュンヘン工科大学などの大学、IT研究所のOFFISなども参加している。


参考資料
1. ルネサス初のRISC-V搭載ASSPの開発に向けて、アンデス社のRISC-V 32ビットCPUコアを採用 (2020/10/01)
2. IoT機器に向け、高性能かつ高度なセキュリティ機能を備えたArm Cortex-M33コア搭載RA6M4マイコングループを発売 (2020/10/06)
3. ドイツIndustry 4.0のプラットフォームSoCはArmではなくRISC-Vで (2020/10/08)

(2020/10/19)

月別アーカイブ

セミコンポータルはこんなサービスを提供します