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世界を駆け巡ったNXPとFreescaleの合併劇、ルネサスに大きな脅威

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米国時間3月2日、世界の半導体業界は、オランダのNXP Semiconductorsが米国のFreescale Semiconductorを吸収・合併すると発表したことに驚いた。日本では新聞よりも早く、EE Times Japanが同日そのニュースを翻訳・掲載した。新聞では日本経済新聞が3日夕刊に短く「オランダ半導体NXP、米同業を2兆円で買収」と掲載したのが最も早かった。

日経はその後、ことの重要性に気が付いたと見え、4日にその影響について報じた。実際、2日のNXPとFreescaleのホームページを見てもニュースリリースの掲載が間に合わなかった。今回のニュースに関しては不自然に思えるほど、EE Timesの報道は異常に早かった。その後、同メディアはスペインのバルセロナにいたNXPのCEOであるRick Clemmer氏にインタビューしており、対応の早さはやはり異常ともいえるものだった。

この買収劇は、自動車用半導体に強いFreescaleをセキュリティに強いNXPが買収提案したもの。両社の製品ポートフォリオの重なりは小さく、相乗効果を発揮するだろう。買収金額は118億ドル。Freescaleの株主に対して、Freescaleの1株当たりNXPの株を0.3521株+現金で6.25ドルで取引する。この総額が118億ドルになる。Freescaleの負債も含めると167億ドルになる。両社の時価総額は400億ドルになるとNXPは見ている。両社の売り上げを単純合計すると100億ドルを超える見込み。IHSが発表している半導体ランキングによると(参考資料1)、東芝を抜き第7位になる。

両社の合併によって、最も大きな影響を受けるのは、ルネサスエレクトロニクスだろう。自動車エレクトロニクスに限ると、これまではルネサスが断然トップだったが、ほぼ拮抗する。ルネサスの自動車エレクトロニクスにおける強みは、制御系とインフォテインメントのIT系の両方を持っていることだ(参考資料2)。自動車用半導体第2位のInfineon Technologiesは制御系に強い。NXPはSDR(ソフトウエア無線)方式のカーラジオを持ち、セキュリティやインフォテインメントに強い。Freescaleは制御系マイコンに強いが、IT系のSoC用のプロセッサもある。欧州のカーエレクトロニクスに力を入れてきているNXPのノウハウやFreescaleのIT系プロセッサを自動車用に強化すれば、ルネサスにとって脅威となる。

自動車用半導体以外の分野でも、NXPはIoT(Internet of Things)に力を入れており、NXPの持つセキュリティや無線通信分野と、Freescaleの持つPowerアーキテクチャのQorIQプロセッサやPower QUICCプロセッサ、ARM Cortex-A9ベースのi.MXプロセッサなどIT系プロセッサを採り入れることで、ルネサス以上の製品ポートフォリオを揃えることができる。

もう一つ脅威な点がある。NXPはPhilipsから、FreescaleはMotorolaからそれぞれ独立した半導体専業メーカーである。ルネサスも、日立製作所、三菱電機、NECからDRAM以外の半導体部門を切り出して独立した半導体専業メーカーである。NXP/Freescaleとルネサスとの最大の違いは、NXP/Freescaleには親会社の資本がどちらも1株も入っていない点だ。いずれの企業も退路を断ち、親会社に戻れない経営陣が運営している。ここに彼らの強さがある。これに対して、ルネサスは未だに親会社の株式を持ち、最大の株主が産業革新機構という政府系ファンドである。親会社・政府への依存心をいかに断ち切るかが、ルネサスにとっての最大の課題であろう。

ルネサスと同様に、Freescaleはかつて親会社Motorolaへの依存心が強かったために、携帯用のアプリケーションプロセッサでMotorolaと共に沈んだという苦い経験がある。ノキア携帯への依存度が高かったためだ。Freescaleはこの苦い経験から自立する方向へここ数年、舵を切り直してきていた。株主はプライベートエクイティファンドに変わった。最近になってようやく売上高減少から増加、すなわち成長できるように変わってきた。ここにNXPとの合併は、Freescaleにとって成長できるチャンスになる。両社の買収が完了するのは2015年の後半だとNXPは見ている。

国内では、富士通とパナソニックのシステムLSI部門を統合した株式会社ソシオネクストが事業を開始した。株主比率は、政府出資の日本政策投資銀行が40%、富士通が40%、パナソニックが20%で、資本金は302億円。従業員は2600名で、本社を新横浜に置く。ルネサスと同じように、政府系銀行と両親会社が運営するこの会社が、世界の流れに乗った成長のシナリオを描き、成功してくれることを願うばかりだ。

参考資料
1. IHSも、2014年世界半導体ランキングの速報値を発表 (2014/12/22)
2. ルネサス、ITと制御の両方でクルマを賢くする (2015/01/13)

(2015/03/09)

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