44億ドルもの巨額の半導体投資のニュースがほとんど報道されなかった

このニュースは、ニューヨーク州のニュースリリース(参考資料2)にもなっており、EE Times/EDN(参考資料3）やSemiconductor Manufacturing & Design (参考資料4)、などいろいろなメディアで紹介されており、当ブロガーの一人である長見晃氏もトップニュースで伝えた。にもかかわらず、日本経済新聞や日刊工業新聞が1行も伝えないとは一体なぜだろうか。彼らはニューヨークにも支局や総支局を持ち、米国は幅広くカバーしてきた。私自身見逃したのかもしれないが、それにしても新聞が伝えなかったことは不思議だ。

おそらく日本のメディアは誰も記者会見に参加しなかったのかもしれないが、日本の新聞社が購入しているAP通信もニュースを配信している(参考資料5）。ということは、みなAP通信からのニュースを買っているのに、誰も報じなかったということになる。何か意図があるのかどうか、今の私にはわからない。

かつて、IBMのVPの方とお話ししていたら、シャープが1社で堺に総額1兆円を投じて巨大な液晶工場を作ると報じられた時、IBMでは考えられない、と言われた。海外では巨額の投資はもはや1社では行わず、数社のコラボで行うことが一般的になってきた。企業の存亡を問われる危険があるからだ。今回の巨額の投資はまさにコラボによる新しい投資モデルに沿ったやり方である。日本の半導体あるいは関連企業の参考になると思い、セミコンポータルは報道した。

もう一つ、気になる動きがある。9月28日の日経産業新聞が報じた、NECがFPGAを開発するというニュースだ。「株データ処理50倍高速化」という言葉で始まるタイトルだが、NECがファブレス半導体部門を作る可能性がある。別ルートで日立製作所もファブレス半導体ビジネスを始めるという話を聞いた。また、富士通やパナソニックもファブレス半導体を始めるニュースを1〜2週間前に聞いた（資料の存在を失念）。

これらの話は、総合電機、通信電機メーカーがファブレス半導体にのりだすということなる。だとすると、最近ファブライト戦略でファブから脱皮しようとしている日本のIDMは一体どのような戦略をとろうとしているのか、ますますわからなくなってきた。個人的には、国内IDMはデザインハウスとファウンドリビジネスに分かれるべきだと思う。というのはシステムとは何か、各社が定義せずにSoCビジネスを開始し、結局その戦略を見直さざるを得なくなった訳だから。

今のリソースでIDMがこのまま続けるのであれば、アナログやMEMSなどのIDMに変身するという手がある。ファブレスビジネスはシステムを100%理解できる組織が手掛けるべきであり、システムが理解できない半導体メーカーはファウンドリに徹するか、デザインサービスも含めたファウンドリへの道はある。ファウンドリ事業では、設計ツールに習熟したエンジニアがファウンドリ営業職には必要である。

IDMはデザインハウスとファウンドリに分かれる方が効率的に顧客を獲得できるのではないだろうか。ファブレス半導体企業はシステムのわかる親会社が手掛け、彼らができない(あるいはやらない）、VHDLやVerilogなどのデザインツールを使ったデザインサービスを、デザインハウスがシステム企業から請け負うというビジネスモデルになる。デザインハウスを分離させないのなら、IDMはこれまでと全く変わらない。よほどしっかりしたビジネスモデルを再構築する必要があるだろう。

デザインハウスとファウンドリを分離するとすれば、デザインハウスはインドの、ファウンドリは台湾の企業とそれぞれ競合する。彼らとの違いを明確にする新しいビジネスモデルを構築することが必要だろう。

参考資料
1. 米NY州に半導体メジャー5社が44億ドルの大型投資で合意、450mm推進 (2011/09/29)
2. Intel/IBM Announcement (2011/09/27)
3. Intel, IBM to lead $4.4B chip R&D hub in NY (2011/09/28)
4. Sematech 450 Program Roll into New Consortium (2011/09/28)
5. $4.4B Tech Project Will Create 6,900 NY Jobs (2011/09/27)