予測が全く当たらず上方修正繰り返す2026年世界半導体売上高の史上空前の急成長
米国半導体工業会(SIA)が先週末に発表した2026年7月の世界半導体月間売上高(3ヵ月移動平均)は、前年同期比2.35倍の1,468億ドルだった(参考資料1)。2026年1〜7月の世界半導体累積売上高は、8486億ドルであり、わずか7ヵ月で過去最高の年間世界売上高(2025年の7956億ドル)を超えてしまった。図1から明らかなように、史上空前の売上高の急成長となっている。巨大テック会社のAIデータセンター投資が継続しており、AI向けメモリの需要急増による価格の高騰やAIチップの継続的な需要増によるところが大きい。日本のほとんどの半導体企業の方々にとっては、実感のわかない全く別世界の話に感じられよう(注1)。
図1 2026年7月までの過去20年間の世界半導体月間売上高(3ヵ月移動平均値)(青線;単位:10億ドル)および対前年増減率(赤線;%)の推移 出典:WSTS集計データをもとにSIA作成
2025年末/2026年年初の予測は前年比わずか9.5%〜30%増
昨年末あるいは今年年初には、2026年の世界半導体市場成長率がこれほどまでに高くなるとは誰も予想していなかった。半導体市場調査機関の予測は、9.5〜30%にとどまっていた(図2)(参考資料2)。今年に入り、AI向けメモリ価格が思いのほか急騰したうえに、AIチップ需要も継続して伸長したため、4/5月になると、予測は53〜80%に上方修正された(図3)(参考資料3)。
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図2:昨年末あるいは今年年初時点における半導体市場調査機関の2026年世界半導体売上高の対前年比増加率予測(注1) 出典:Semiconductor Intelligence , 2026年2月
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図3 今年4/5月時点における半導体市場調査機関の2026年世界半導体売上高の対前年比増加率予測 出典:Semiconductor Intelligence , 2026年5月
2026年6〜8月時点の予測は100%増前後
6月初旬に、世界半導体市場統計(WSTS)が、2026年世界半導体売上高を、昨年末の26%増から90%増に大幅上方修正したのをきっかけに、WSTSの予測を基準にしているほかの調査会社の予測も92〜112%増に修正された(図4)(参考資料4)。WSTSは、大幅上方修正の根拠として、引き続き大手IT企業による積極的なデータセンター投資が見込まれ、AIサーバ向けのメモリの需要急増にともなう価格高騰、GPUを含むロジックの高成長が予測されるためとしている。
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図4 今年6〜8月時点における半導体市場調査機関の2026年および2027年世界半導体売上高の対前年比増加率予測 出典:Semiconductor Intelligence , 2026年8月
2026年の世界半導体市場規模は1.6兆ドル超
半導体関係者は、今年のはじめまでは、2030年に半導体市場規模は1兆ドルを超えると予測しており、業界のコンセンサスになっていた。ところが、WSTSは、6月初旬の時点で今年の売上高が1.5兆ドルを超えると上方修正した。英国に本拠を置く市場調査会社OMDIAは、4月時点で「1.3兆ドル超」と予測していたが、7月末に「1.6兆ドル超」へと上方修正した。
AI需要の高まりでDRAMとNANDフラッシュメモリが予想外の高成長を示し、高需要が見込まれるからだ。同社は、メモリが総売上高の5割を占めると見ている。
AIチップはどうだろうか。世界最大の半導体企業にのし上がったNVIDIAが8月26日に発表した2026年 5〜7月期の決算によると、四半期売上高は前年同期比106%増の962億ドルに達し、米国のCSP(クラウドサービスプロバイダ)を中心とするAIデータセンター需要が衰えていないことを示した。AI半導体に実装するメモリの供給不足が事業拡大のペースを制約するリスクがあるという。
巨大テック企業向けカスタムAIアクセラレータの雄である米Broadcom の2026年5〜7月期のAIチップの売上額は、前年同期比3.2倍の167億ドルで、8〜10月期には前年比3.4倍の217億ドルを予想している(参考資料5)。同社のタンCEOは、来年のAI半導体売上高を現在の2倍にあたる1,100億ドルまで引き上げられる受注残をすでに確保していると決算説明会で明らかにした。さらに再来年には前年比で再び倍増が可能だと付け加えた。
金融市場の一部には、巨大テック企業による巨額のAI投資に対する過熱感や、設備投資のピーク懸念、景気・金利動向への警戒から先行き不安があるが、タンCEOは、すでに確保できている受注残が巨額であることを示すことで、今後もAI半導体需要がさらに伸長することを強調した。
2026年の世界半導体市場売上高の予測は、年末までにさらに上方修正を迫られるかもしれない。
注1) AIというメガトレンドに遅ればせながら乗り、業績を大きく伸ばしている日本企業はキオクシアだけである。今年に入り、NANDフラッシュメモリ価格の急騰という他力本願によるため、業績の急好転はキオクシア自身も予測しえなかった。メガトレンドに乗れない半導体企業(例えば民生向け半導体企業)の成長率は1桁かマイナスとなる可能性が高い。
注2) Semiconductor Intelligenceの予測は、それぞれの時期の各調査機関の予測を踏まえたいわば「後だし」の予測である。図3、図4に示された予測も同様。
参考資料
1. “Global Semiconductor Sales Increase 6.4% Month-to-Month in July”, SIA(米国半導体工業会)プレスリリース、(2026/09/04)
2. “AI Drives Semiconductor Market in 2025-2026”, Semiconductor Intelligence, (2026/02/26)
3. “Semiconductors Historic Start to 2026”, Semiconductor Intelligence, (2026/05/21)
4. “Explosive semiconductor growth”, Semiconductor Intelligence, (2026/08/26)
5. Broadcom決算説明会資料および電話会議情報、(2026/09/02)


