上場果たしたDRAMメーカーCXMTが躍進、NANDメーカーYMTCも上場へ
2016年に中国安微省合肥市で誕生したDRAMメーカーCXMT(Chang Xin Memory Technologies、中国語の正式名称は長鑫存儲技術)は、今年7月に上海証券取引所のハイテク新興企業向け市場「科創板」に新規株式公開(IPO)して以来、初めて決算結果を8月末に発表した。それによると2026年上半期(1〜6月期)売上高は前年同期比9.7倍の1503.1億元(約3.兆6000億円)、最終損益が776.05億元(約1兆8000億円)の黒字となった。

図1 CXMT 本社工場(中国安微省合肥市) 出典:CXMT
前年同期は赤字だったが、AIの急速な普及とメモリ供給不足から販売価格が大幅に上昇によるメモリ需要が収益を押し上げた。赤字からの驚異的回復を遂げ、世界DRAM業界で最も急成長を遂げた。同社の直近の4〜6月期の営業利益率は82%に達し、韓国大手2社の利益率(70%台)よりも高かった。
CXMT (図1) の株式時価総額は8月末時点で3兆9800億元となり、ネット大手のテンセントを上回り中国企業でトップを維持している。
CXMTのDRAM市場シェアは9.5%で世界4位
台湾の半導体市場調査会社であるTrendForceが発表した2026年第2四半期(4〜6月期)の世界DRAMメーカー売上高ランキングで、CXMTは大手3社(Samsung 、SK hynix 、Micron)に次いで4位に初めてランクインした。市場シェアは9.5%で第1四半期の7.6%(TrendForce推定値)、前年同期の4%(Counterpoint推定値)から大幅に増加した。
TrendForceは、売上高を公式に発表している上場会社のみランキングを発表しており、非上場メーカーの売上高は推定して「その他」に入れてきたので、非上場だったCXMTは2026年第1四半期まではランキングに含まれていなかった(参考資料1、2)(図2参照)。

図2 2026年第1四半期(上)および第2四半期(下)の世界DRAMメーカー売上高ランキング CXTMの売上高は、2026年第1四半期までは「Others(その他)」に含まれており、ランキングでは除外されていた 出典:TrendForce
中国最大のDRAM研究開発・設計・製造・設計一体型企業である同社は、決算報告で自社の技術戦略を「世代飛躍型研究開発」と表現している。第1世代から第4世代までのプロセス技術プラットフォームの量産を完了し、製品ラインはDDR4(Double Data Rate 4)、LP (Low Power) DDR4XからDDR5、LPDDR5/5X、LPDDR6に至るまで、成熟プロセスから先端プロセスまでカバーしていると強調する。
CXMTがLPDDR6を量産開始、シャオミの折り畳みスマホに搭載
CXMTは8月29日、自社開発の次世代低消費電力メモリ「LPDDR6」の量産を開始したと中国最大のソーシャルメディアプラットホーム微博(Weibo)の自社サイトで発表した。同製品は9月発売予定の小米(シャオミ)の折りたたみスマートフォン「Xiaomi 18 Fold」に搭載されるという。CXMTによると、LPDDR6の商用化は世界初で、中国の半導体企業が高機能メモリ規格で世界に先駆けて量産を実現したのは初めてだという。韓国半導体業界の関係者は、「CXMTが前世代製品の量産後、1年余りで次世代製品を実際の完成品に搭載させたスピードは無視できない」としつつも、「歩留まりと大量供給能力が検証されていない中で、目標出荷量がわずか数十万台に留まっており、今回の発表は自社を韓国の競合と同列に認識させるためのイメージ戦略だ」と負け惜しみを述べている。

図3 CXMTのLPDDR6チップ 出典:CXMT
HBMも生産し中国先進顧客2社が採用テスト中か
CXMTの成長は単なる低価格攻勢にとどまらない。TrendForceによると、今年第2四半期にCXMTのサーバー向けDRAM売上高が初めてモバイル向けDRAM売上高を上回った。昨年まではモバイル製品が全体売上高の約60%を占めていたが、製品ポートフォリオが高付加価値領域であるサーバー市場へと急速にシフトしている。
CXMTが先進的な高帯域幅メモリーチップHBM3Eの少量生産を開始し、中国内の大手テクノロジー企業2社がすでに採用のためのテストを開始していると一部のメディアは報じている。これは、米国の制裁を回避し、自立的な半導体エコシステムを構築しようとする中国にとって重要な前進を意味する。しかし、同社が公表していないのは、米国政府を刺
激することを避けるためとの見方もある。
中国製HBMをテストしているのは、アリババのT-Headユニットとカンブリコン・テクノロジーズだという。ただしHBMの歩留まりは、まだ低いようである。
中国軍支援企業リストからの除外求めて米連邦地裁に提訴
CXMTは8月末に、中国軍を支援する企業として米国防総省のリストに掲載されたことを不服として、同省を首都ワシントンの連邦地裁に提訴した。訴状で「当社は中国人民解放軍とは関係はなく、DRAMチップは民生・商用向けに設計、製造、販売している」と主張し、指定の取り消しと、政府調達の制限や評判悪化を招く同リストからの除外を求めている。同社はバイデン前政権下で「中国軍事企業」に指定され、トランプ政権も6月の更新で指定を維持した。
CXMTは、トランプ政権による規制をはねのけ、米国市場への拡販を狙っている。そんな中、アップル(Apple)はAI需要等によるメモリ不足や価格高騰のため、CXMT製DRAMの採用テストを進めてきたが、価格交渉や米国政府からの圧力により難航している、と報じられている。
CXMTに続きYMTCも上場してキオクシアを抜く勢い
CXMTに続き、2016年設立の中国最大の新興NANDフラッシュメモリメーカーであるYMTC(中国語の正式名称は長江存儲科技)の親会社も上海証券取引所の新興ハイテク企業向け市場「科創板」への上場申請を行い受理されている。今回の新規上場により、330億元(約7800億円)の資金調達が見込まれており、全額YMTCの生産体制強化のために充てられるという。

図4 長江(揚子江)沿いに建つYMTC(長江存儲科技)本社工場(湖北省武漢市) 出典:YMTC
TrendForceのNANDフラッシュメモリメーカー売上高ランキングにも、早ければ第3四半期から正式エントリする見込みである。Counterpoint Researchが発表した2026年第2四半期の世界NANDフラッシュメモリメーカー出荷数量ランキングでは、YMTCとキオクシアの市場シェアはともに14%だが、正確にはYMTCの出荷数量は僅差でキオクシアを抜いて世界3位となった(注)(参考資料3)。キオクシアはうかうかしてはいられないだろう。まさに、「中国恐るべし!」の状況である。

図5 2026年第2四半期の世界NANDフラッシュメモリメーカーの出荷数量に基づく市場シェア。1位から順に韓Samsung、韓SK hynixグループ、中YMTC、キオクシア、米Micron 、米SanDisk 出典:Counterpoint Research
(注)Counterpoint によると、YMTCのNANDフラッシュメモリは、スマートフォンやPC など単価の安い民生向けが多く、単価の高いAI向けがまだ少ないため、出荷金額ベースではYMTCは、Samsung、SK hynix、Miron,キオクシアに次いで5位としている。
参考資料
1. “DRAM Industry Revenue Rises 59.5% QoQ in 2Q26 as Supply Expansion Continues to Lag Demand Growth, Says TrendForce”, Trend Force press release, (2026/09/07)
2. “Rapid Contract Price Surge Drives 1Q26 DRAM Industry Up 81% QoQ, Says TrendForce”, Trend Force press release, (2026/06/01)
3. 「サーバー向けeSSDがNAND出荷量の48%を占める。YMTCが(キオクシアを抜いて)世界トップ3入り」、Counterpoint Research, (2026/08/12)
ご意見・ご感想


