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Arm、AIに対する企業調査を実施、82%がすでにAIアプリを利用するが…

AI(人工知能)は今後10年以上に渡って成長する分野だが、AIに対する意識をどの程度企業が持っているのかを、Armが調査した。それによると、AIはもはや日常業務に欠かせないテクノロジーになっていることを世界も日本も認識していることがわかった。だからといって、日本が世界レベルに並んでいるわけでは決してない。なにが違うのか。

まずこの調査は、米国と英国、ドイツ、フランス、ハンガリー、日本、中国、台湾の各地域のビジネスリーダー655名を対象に実施した。日本はこのうち16%にあたる102名が対象となった。このビジネスリーダーの業種は、金融18%、製造業19%、テクノロジー17%、小売り9%など広範囲の業種に渡っている。


現在すでにAIアプリケーションを使用している世界のビジネスリーダー / Arm

図1 AIアプリケーションを利用している企業は82%に及ぶが。 出典:Arm


グローバル企業の82%がすでに日常業務でAIアプリケーションを導入していると答えており(図1)、日本も同程度だという。AIを最も活用している業務領域は、1)カスタマーサービス63%、2)文書処理54%、3)ITオペレーション51%、4)セキュリティ関連51%、となっている。日本の回答者は、1)と2)は同じでそれぞれ61%、60%だが、3)は研修・トレーニング56%に上っている。またAI専用の予算を設定している企業はアジア太平洋地域が最多の86%に上る。

世界と日本が最も顕著な違いを見せたのは最適化だ。AI需要の増加に自動的に対応できるシステムやストレージのリソースを保有している企業は、世界でも29%しかないが(図1)、日本はゼロだった。さらに必要なエネルギー要件の増大に対応できる専用の電源インフラを保有している企業は23%しかなく(図1)、日本はさらに低い11%に留まった。

上記の事実は、AIのリソースを現在確保しても、将来拡張していく場合の用意がないことを示している。エネルギー効率の最適化に関しては、意識がまだ低い。ワークロードの自動スケジューリングや、リアルタイムの電力モニタリングなどを備えた包括的な最適化が出来ている企業は35%に留まり(図2)、日本はさらに低い21%だった。最も多かったのは、手動でスケジューリングを組んだり、時々モニターしたりするといったマニュアルによる最適化が47%と最も多い。


AI効率性の最適化レベル / Arm

図2 AIの効率化を最適化しているか 出典:Arm


人材不足に関しても世界と日本との差は著しい。AIの専門知識に関して自社が「著しく人材不足」または「人材不足」と答えたビジネスリーダーは34%に上るが、日本は56%と極めて多い。さらにAI導入を成功へ導く上での最大の障壁は高スキル人材の不足と答えた人は49%にもいるが、日本は60%と極めて多い。社員のAIスキルを育むための専用プログラムが未整備だと答えた企業は39%あったが、日本は48%もあった。

この調査はArmがMethod Research社に委託し、RepData社とiTrack社のプラットフォームから配信したオンラインアンケートの結果である。回答者は全員、従業員1,000人以上の企業に所属し組織内の購買意思決定に影響力を持つ人々で、調査期間は2025年1月16日から2月5日まで行った。

(2025/05/27)
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